「さくら荘のペットな彼女(TVアニメ動画)」

総合得点
88.5
感想・評価
5369
棚に入れた
26133
ランキング
109
★★★★☆ 4.0 (5369)
物語
4.0
作画
4.0
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.1

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

凡人には眩しすぎる才能ある変人たちの巣窟

異才を受け入れている芸術大学付属高の中でも問題児ばかりが集うと恐れられている
学生寮「さくら荘」で繰り広げられる喜怒哀楽が描かれた、
同名ライトノベル(未読)のアニメ化作品(2012秋アニメ)

【物語 5.0点】
一部脚本にも参加した原作・鴨志田 一氏が紡ぐ、
ウイットに富んだセリフ回しで構築された青春劇を、
構成・岡田 麿里氏ら、毒にも薬にもなる危険物の取り扱いに長けた
脚本・スタッフ陣が料理する。
となれば、含みがあり過ぎて、もはや悶絶する他あるまい。

バカをやる時は昇天する勢いでバカをやり笑い転げ、
壁にブチ当たる時は爆散する勢いで砕け散り、
ヘコむ時は地獄に落ちる勢いで泣き叫ぶ。
ラブコメもシリアスも振り切っているからこそ心に響く。


やり過ぎて闇鍋化するのでは?と一瞬不安にもなりますが
終わってみれば笑いと恋と夢が詰まった至高の青春寄せ鍋パーティーが完成♪

シナリオは通年対応ですが、やはり春を感じながら視聴するのが最適かと。


【作画 4.0点】
「さくら荘」に集う才能が、しばしば自主制作アニメ等の可能性を披露する本作。
となれば、それら作品内作品とその制作も含めて表現する
アニメスタッフが奮起しないわけにはいかないでしょう。


桜並木などの四季、
浮き沈みの激しい心模様を反映する天候などの背景美術と光源処理。

コミカルになるほど意外な高速移動と跳躍力と伸縮力を発揮する人体とか車体とか。

随所にプロの意地を発揮して、夢を目指すストーリーを好アシスト。


【キャラ 5.0点】
要介護レベルに過保護必須な彼女……
だが、{netabare} 超天才画家でマンガ家志望、課題は普通の気持ちの理解。{/netabare}

空気を読まない全力の絡みで襲撃して来る先輩女子……
だが、{netabare}ろくに絵コンテも切らずに超絶完成度の自主制作アニメを構築し世に放つ"宇宙人"。{/netabare}

序盤は目視すら困難な引きこもり男子……
だが、{netabare}業界屈指の超天才プログラマーで、コミュ代行のメイドちゃんAIは原理不明に凄い。{/netabare}

など天才的な才能を併せ持つ変人に、
何も起こらない退屈な日々すらも自分以外のせいにしてきた主人公少年ら、
凡人たちが振り回されながら、恋し恋されながら、食らい付いていくキャラクター相関図。

正確には凡人たちも普通は追わない夢を追ってしまっている時点で凡人ではないのだが、
天才たちの陰で、半端な才能を持って夢に挑んでしまった。努力を積み重ねても天才には叶わない。
と自縄自縛と挫折を繰り返す。

この葛藤が頻繁なギャグとシリアスの往復でも破綻しない青春劇の背骨となっている。

{netabare}「才能ってやつはさ無自覚に周囲にいる人間を巻き込んでボロボロにしていくんだよ」by三鷹 仁{/netabare}

……刺さります。


【声優 4.5点】
主人公・空太役の松岡 禎丞さん。
あり得ないラブコメ展開にツッコミ、時に女々しく惨めな自分を曝け出し、
泣くわ叫ぶわ、起伏の激しい展開への対応力を披露。

なるほど、道理で、後々、どんなハーレム修羅場に巻き込まれてもCVが揺るがない訳ですw


ヒロイン役の茅野 愛衣さんは感情希薄の中に気持ちの芽生えを好表現し、
仁先輩役の櫻井 孝宏さんはプレイボーイなイケメンボイスの中から、
同じく劣等感を抱えた主人公としばしば本音を共有し合う。
など声優陣は後の変わらぬ活躍も頷ける好演。

よくよくEDクレジットを見ると、脇役や○○A、Bとかのチョイ役に、
島﨑 信長さんや、逢坂 良太さんや、花江 夏樹さんらの名前もあったりして層が厚いです。

さらに驚かされるのは{netabare}堀江 由衣さんの“一人二役”{/netabare}


青山さん……声優業界は「さくら荘」よりヤバイ所みたいですよw

青山七海役の中津 真莉子さんによる
感情振り切れたシーン限定で飛び出す関西弁も印象的でした。


【音楽 4.5点】
劇伴はピアノ曲「なまえを呼んで」など癒やし系が軸で、比較的静かに黒子に徹する。
勿論、ラブコメでは弾け気味にハプニングを盛り上げます。

OPは前期がヒロインズ“ペットな彼女たち”による「君が夢を連れてきた」
後期が鈴木このみの「夢の続き」

EDは前期が鈴木このみさんの「DAYS of DASH」
後期が大倉 明日香さん(後のASCA)の「Prime number~君と出会える日~」

毎回幕引きからEDイントロへの入りが秀逸。
特に挫折→再起の決意からの「DAYS of DASH」は悶える程エモいです。

で、毎回、見事な締めからの、あのカオスな次回予告……仕組んだのは誰だよ(笑)


【感想】
『Just Because!』『青ブタ』と鴨志田ワールドの重力に魂を引かれた私が、
これは絶対視聴しなければと義務感を持って、この春こそは!と飛び込んだ、
本年度の二次元お花見選択作品。

ペットがどうとかタイトルが怪しいですがw
喰らってみれば心が撃ち抜かれる力強い青春アニメでした。

バウムクーヘンを頬張りながら鑑賞する満開の桜と金髪美少女……絶景でした。


天才的な才能を教育がどう潰さずに伸ばしていけば良いのか?
について考えさせられた作品でもありました。

そもそも「さくら荘」も
{netabare}元々は「社会の枠組みにこだわらず芸術科コースの生徒の才能を伸ばすために用意された」学生寮。
それがルールや体面ばかり重んじる社会の中で、
問題児の巣窟へと見方が奇異な方向に変容していった……。

その沿革に想いを馳せた時、重たい課題を突き付けられた気持ちにさせられました。{/netabare}

投稿 : 2020/04/13
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サンキュー:

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