takato さんの感想・評価
4.3
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
夭折の今監督唯一のTVアニメ。Qベエより前に存在した可愛怖いマスコットな「マロミ」。
サルトル曰く「地獄とは他人のことなり」。本作を見て付け加えると「地獄とは、他人と自分自身の現実なり」。夢や妄想という人間の意識下の世界のオーソリティーだった今監督。そんな彼らが能登さん、三石さん、内海さんといった豪華キャストと、「私は平沢進だ、平沢唯じゃない」でお馴染みな異端の作曲家である平沢さんが組んだんだから最高に決まってる!。
最初の3、4話くらいまでは間違いなく期待通りの傑作としかいいようがない狂いっぷりと完成度の高さにゾクゾクしてくる。謎と風呂敷が広がる面白さは、浦沢先生作品を思わせる。ただ、そっから少年バットにまつわるオムニバス的な内容になっていき、風呂敷を畳めるかかなり不安になってくる。ここで離れちゃった方も多いだろう。しかし、タイトル「最終回」な最終回の神っぷりに、私としては全て許せました!。
本作のテーマである少年バットが象徴するのは現実逃避であるそれら「マロミ」のような緩いキャラが称する癒やしでもあり、未だにまかり通っている美化された昭和30年代でもある。
0年代以降、日本社会はもはやバブルの夢から完全に覚めざるをえなくなったが、そこで困難な現実に向き合えばまだ良かったけど、この国はお得意の現実逃避、先送りの計に出た。そのことに対する今監督の怒りが本作には底に響いている。
本作のキャラたちは、みんな自分が嫌いな孤独な人達である。他人の目を気にして怯えている、横目キョロ目の孤独な1億3千万の魂の姿がそこにはある。彼らは自分が置かれている現実、環境が大嫌いだ。しかし、鳥もちに捕らわれているようにそこから抜け出す手段、救いを見いだすことができない。故に都合の良い現実逃避の象徴として少年バットが現れ、偽りの救いを与えてくれる。
本作の中で自分という現実の地獄から抜け出せたのは、ただ一人内海さん演じる刑事さんだけである。何故なら彼だけが本当の意味で孤独ではなく、現実という苦しみすらを乗り越えていける物、月並みにに思えるが他者との間に強い愛を築けていたからである。
「地獄とは他人のことなり」、同時に「救いは他者との間にしかあらず」。夢や魔法のような解決なんてこの世にはない、「ここではないどこか」なんてない。その現実を認め、それでも他者との間に橋をかけることができた者こそが愛という救済を得られる。その輝きは「純愛」等と称される、それこそコンビニで安売りされているようなまがい物とは違って遥かに心を打つ。
現実から目を逸らすのでもなく、現実に流されるでもなく、現実という苦難を乗り越えていけ!。そんな熱い監督の魂が爆発している最終回であった。とりあえず、最初の3,4話と最終回あたりだけでも見て頂きたい。啓治さんも出てるでよ。