ウェスタンガール さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
闇鍋パーティー
スチームボーイを観て以降、大友克洋はご無沙汰で、映画化されていたことも、すっかり忘れていた作品。
先日“老人Z”を観て、俄然、記憶を呼び起こされた訳である。
結論から言えば、大友克洋主催の闇鍋パーティーにご招待頂いた事に、心よりの感謝を述べるものである。
まさにジャパニメーションの精華と言える映像美と間合い、しかしそこに在るのは紛れもなく、ウイットに富んだ大友ワールドである。彼の執念が詰まった“AKIRA”を極北とするなら、“SHORT PEACE”はプレアデスの如き煌めきを見せてくれる作品だ。
〈プロローグ〉
ワクワク感いっぱいのオープニングアニメ、三月ウサギのように“気が狂った”世界、不思議の国へ旅立つ準備は整った。
〈九十九〉
遠野物語の世界に迷い込んだような空間、そこへ踏み込む、無骨でありながら繊細な心根の男、彼の眼前で繰り広げられるイメージの奔流は、これから始まるであろう、紛れもなきカオス、趣向を変えた“AKIRA”的な世界へのトリビュートというべきか。
〈火要鎮〉
“八百屋お七”のお話をモチーフに、壮大な錦絵スペクタクルで描く振袖火事の顛末。
絵巻物を紐解くような、引きを多用した長回し、そして生き物のように動き回る紅蓮の炎に、制作現場が要したエネルギーと高揚感を感じる。
〈GAMBO〉
もうこれはスティーブン・キングの世界を取り込んだダークファンタジー。
期待に胸膨らまし、映画館で観た“ドリームキャッチャー”を思い出した。
あれって以外と名作だったのでは?、などと思い返すのである。
〈武器よさらば〉
最も期待していたパートである。
ロジャー・ゼラズニイの“地獄のハイウェイ”やハインラインの“宇宙の戦士”、そして、何よりもアルフォンソ・キュアロン監督の“トゥモロー・ワールド”へのリスペクトを感じる。全編、これも長回しを多用した戦闘シーンが圧巻のディストピアSFである。
本編は、何よりも無人兵器と戦う戦士たちのキャラクターが良いのだ、ベタな使命感や悲壮感を感じさせない、肩の力が抜けたプロなのである。彼らが使用する機器、ローバー、パワードスーツ、携帯武器、ドローン等々、リアリティが半端ない。ガンダムという“くびき”が外れ、生き生きとした作画である。
ラストはやはり…、らしいなぁ。