球磨川 さんの感想・評価
2.0
物語 : 1.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 2.0
キャラ : 1.0
状態:観終わった
何がしたいのかを教えてほしいw
次に沖倉駆(おきくら かける)。通称ダビデ。「謎多き転校生」という、風の又三郎以来の古典的な設定が、まだ現代においても絶滅していなかったことに驚かされます。
もっとも「不思議な少年」というよりは、単に深刻なコミュニケーション障害を患っているがゆえに世間に適応できないボッチといった印象です。
もちろんそんなだから人と会話がまったく噛み合いません。7話でも「今度、海行こう?」と誘う透子に対し、 「俺、波の音がくすぐったい」と突然電波なポエムで答える始末。さすがの透子もしばしば困惑させられるほどの重篤なコミュ障を患っています。
駆本人には悪気があるわけではないのですが、なにしろ会話のキャッチボールがまったく成立しないため、アホの子である透子以外のほぼすべての登場人物たちをイラつかせます。嫌われ者です。
駆本人も自らに人として致命的な欠損、欠落があることまでは自覚しているようで、「駆(かける)」という自らの名前は欠けるという欠損の意味合いも含んでいるのではないか、と自嘲めいた告白を透子にしています。
もちろん、透子と同じように幻視や幻覚、幻聴も日常茶飯事で、それに「未来の欠片」とかいう中二臭い名前をつけています。未来の破片って、アジカンかよ!というツッコミはともかく、その欠片こそが不完全な自分の欠損を補ってくれるピースなのではないか?という幻想にすがって生きてきたのかと思うとただただ哀れですらあります。
父は建築家、母はピアニストという設定もいかにもすぎて笑えます。悪い人たちではないのでしょうが、息子(駆)に女の子(透子)から電話がかかってくると、なぜか視聴者に向けて(?)ウインクをしたりするウザくて気持ち悪い父親と、そんなうざキモい父親から「変な奴になってしまった」とまったくその通りの話をふられて、「あら?チャーミングな男の子だと思うけど?」と答える完全に駆の母親であるという認識のなさそうな世間離れした芸術家の母親。
父親に「とても母親の言葉とは思えないな」とこれまたまったくその通りのツッコミをされていましたが、このあたりに駆の人間としての不全感、欠損感の根っこがあることはもはや疑いようもありません。
ある意味で透子はこの母親の代わりなのかもしれません。グラスアートとピアノ、2人とも芸術家肌な代わりにどこか世間ずれしています。駆自身透子に「マザコンかな?」と言っていますが、実際マザコン以外の何物でもない上にそれを母に似た透子で補おうとしているのかもしれません。
ちなみにいかにもお金持ちといったハイソな感じの立派な自宅がありますが、自身は庭にテントを張ってそこで生活しています。本当にいろいろな意味で可哀想な男の子です。
7話ではついに多重影分身の術を駆使するにいたり、駆の自我の分裂と統合の失調感が文字通り可視化されていました。もはや笑っていいのかどうかすらわからず、本当に制作スタッフがどういうつもりでこのアニメを作っているのか問いただして確認したくなります。大丈夫なんでしょうか?