かがみ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
正義の在り処
ゼロ年代アニメーションの総決算的作品として知られる「魔法少女まどか☆マギカ」の外伝。本作は「円環の理」の干渉できない世界線の物語である。「まどか」の本編がディストピア的閉塞感に満ちた展開であったのに対して、本作はどちらかというと少年漫画的な熱い展開となっている。
物語が進むに連れて詳らかにされる魔法少女と魔女の真実、そして「ドッペル」という「解放」。
魔法少女結社「マギウス」が掲げるのはひとつの決断主義的な正義に他ならない。ポストモダン状況の加速は「理想」としての正義を失墜させ「決断」としての正義を前景化させた。理想主義的な正義が世界を無自覚に「正義/悪」に切り分けるのに対して、決断主義的な正義は世界を自覚的に「正義/悪」に切り分けるのである。
そういった意味で最終話の里見灯花の大演説は、グローバル化とネットワーク化が極まった世界において、環境管理型権力の統制のもとで人間がモルモットのように飼い慣らされていく現代社会の構造に対する告発状そのものでもある。
けれども本作を含めた「まどか」の世界観に内在しているのは、まさにこうした決断主義的な正義をいかに乗り越えるかという主題に他ならない。本作は全編にわたりシュールレアリズム感に満ちた絢爛豪華な映像美で視聴者を歓待する。そして長大な原作ゲームを絶妙な取捨選択でわかりやすく再構成したシナリオも見事である。続編に引き続き期待したい。