saitama さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
TV版をしっかり復習してから観ると楽しめる…でも、それでいいのか? ※追記あり
SHIROBAKOでした。
個人的に思ったことなので、なんと説明すべきか難しいのですが、良くも悪くもSHIROBAKOでした。
■良かった点
TVシリーズを何度も観た人ほど細かい部分を楽しめる。例えば、人間関係、細かいセリフ、モブキャラの数々等々。たぶん、TVシリーズにハマった人ほど、劇場に何度も通って、より細かい部分のイースターエッグ探しをすると思う。
オープニングがわかりやすいが、TV版とあえて同じ構図にして視聴者が比較することで、4年の歳月をハッキリ示している。そうした4年の歳月を感じさせる部分が、キャラクターやセリフなども含めて随所にある。これも一種のイースターエッグか…。
劇場で配布されるグッズのクオリティが高い。コンプリートしたい人は多いと思う。
■果たしてどうなの? な点。
TV版とほぼ同じストーリー展開。水戸黄門みたいに毎回同じ展開な場合は、お約束として同じストーリーが劇場版でも許されるけれど、シリーズ通じて展開した話を2時間で繰り返したことで、結果、全部が浅い。オリジナルアニメなのだから、演出と展開まで同じにする必要は無かったのでは?
正直、TVシリーズを観たことない人は誘えない。これだけで楽しめるよ!というのは甘い。キャラクター数が多いだけに、その個々の人間関係や性格などは、事前情報なしでは会話などもまったく楽しめないままストーリーが展開し、途中インド映画ばりに無駄に歌と踊りが登場し、で、最後はなんだったの? で終わる印象。マニアだけを相手にしたから、何度も劇場に足を運ばせるためのグッズ作りで保険を掛けたのだろうか…。
制作陣が好きなのはわかるが、途中のミュージカルや、契約書を手にした丁々発止の展開部分など、これも、ここまで長尺要らないって感じ。それより、株式会社げ〜ぺ〜う〜が、2年でコンテ4枚の時点で、契約不履行なので、最初の時点で話が終わってしまう。いくらアニメ業界がブラックでも、ヌケサクな契約書ばかりだとしても、あの展開はない。だとしたら、製作委員会ごと馬鹿の集まりだ。なので、もうちょっと現実味あるストーリーにすべきだったし、100万歩譲って、最初の山場として、株式会社げ〜ぺ〜う〜との丁々発止で、元請けを奪取するストーリーじゃないと、リアリティを出す部分がヌケサク過ぎる…。
佐倉綾音は必要だった? 人気声優でファンを取り込みたかったのか、本人がやりたかったのか、制作側に佐倉綾音好きがいたのかは不明だが、あのキャラと、あの程度の役柄なら、キャラごと必要なかった。もっと基本の各キャラをしっかり紹介する尺が盛り込まれるべきだったかなと。SHIROBAKOマニアのみに向けた劇場版なら許されるのだろうけど…。佐倉綾音起用によって、新規ファンや劇場版からTV版へと引っ張る要素は、正直一切なかった。本当にもったいない。
あと、最終パートのSIVAのCG…。敵が揚陸艦に突っ込むところ…けれんみどころか、ちゃち過ぎて…。あれでもすごい金掛かるのはわかるんですよ、わかるんだけど、ちゃち過ぎて…。レゴブロックのCGアニメ? 作品内で遠藤の手書きの感じを表現したい…的なセリフがあるのに、あのしょぼいCGというのは…。ただただダサかった。金掛かるから大変なのはわかるんですけど…ね。それならあの部分、要らなくね? 予算のなさを表面化してしまった。最後に無理やり描いた止め画のタイタニックの方がマシだったレベル…。金がないのは悲しい。
結局、制作側のやりたいことが多過ぎたわりに、なにも収まっていなかった…。TVシリーズをしっかり観た人には、好みはあるだろうけど70点以上の映画。TVシリーズを知らず初めて見る人には30点以下の糞安っすいチープストーリーの駄作映画…に結果成り下がった。
公開後のファンへの後押し企画として用意された武蔵野アニメーション緊急生放送も観劇する前に観たが、あそこで色々と語れば語るほど、この映画尺に何も残ってないし、伝わってないことがハッキリしてしまい、そこは本当にショックだった。熱意が最高にあったことだけは十分伝わっただけに。制作側が声に出しても、作品にはそれが何ひとつ盛りきれなかった感。
公開時期含め、色々な意味で運が無かったかも。ほんのちょっとしたボタンの掛け違い程度のことなんだけど、それだけで90点が20点になることがよくわかった。
■総評
とまあ、残念だらけだったけど、4年の月日が流れた各キャラの成長や、変化はとても楽しめた。つまり、TVシリーズファンじゃないと、なにも楽しめない。それでいいの? 人から2時間、しかも足を映画館まで運ばせるだけの楽しみが、TVシリーズの熱心なファンにしか与えられていないのを贅沢とみるか、残念とみるか、それでこの作品の評価は二分すると思う。自分はSHIROBAKO部分は好きだけど後者だった。
※追記です。
首都圏の緊急事態宣言が宣言される前に2回目を観賞。
1回目よりも、楽しめた。この辺はTVシリーズ同様、繰り返して見るたびに新たな発見や、内容の深みを感じられて良い。各キャラ同士の会話とか、ほんのちょっとした短い会話なんだけど、その背景が更に感じられたりとか。うん、良かった。
ただ、それでも評価を上昇させるまでは至らなかった。結局、TVシリーズを何度も観た人でないと、この劇場版の深みが分からない。それじゃあ、やっぱり新規というか、初見の人を置き去りにしてしまう…。TVシリーズ後、4年が経過した設定なのだけど、本当に現実では4年以上なにも無かったわけで、TVシリーズを知らない人からしたら、なんの事前情報なしでこれを見るのは…。ファンはもちろん楽しいけど…。
異世界カルテットみたいに、間を引っ張るというか、本作やこうした劇場版へと、過去のアーカイブやこの先の作品へと、ファンの興味をつなぐような仕組みがないと、これだけ大量生産、大量消費されるTVアニメ作品が乱発するなかでは、コンテンツ自体の寿命を長くもたせることが難しいだろう。と、今回は武漢ウイルスによる影響が直撃しただけに、アニメ自体をどうファンに届け、伝えていくかという、作品内で主題となっていたテーマについて、ハッキリと浮き彫りになったし、アニメ制作をどう俯瞰して先読みすべきか、という制作陣への課題が投げかけられて、結果的にすごく考えさせられる作品になったと思う。
いろいろ残念。
■追記
dアニメとアマプラで配信されるようになったので、劇場以来久しぶりに観た。
ながら観で見直すと、中盤はいい感じなんだな…。ただ、やっぱりプロットが基本TVそのまま。
だから、配信なら結構楽しめるけど、劇場に金払って見るほどじゃないな…。
TV版SHIROBAKOから続きで見る配信コンテンツとしては悪くない。
あと、配信で見ると、途中ところどころにあるミュージカル調と討ち入りシーンはやっぱり…。
これじゃない感…が酷い…。