なばてあ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
テルモピュライの残響に差す紅
原作プレイ中。通算ログイン日数は約1,200日。ただし評価は、原作の記憶を括弧に入れた、独立したアニメ作品に対するもの。
中盤以降の時間が足りていなかった気がする。各話ごとに山場をひとつずつ配置して細かな起承転結を重ねるというセオリーがまったく機能しておらず、山場が断続的に各話をまたいで連続する。つまり個別の話数の最初に山場が来てしまって、そのあとのシーンがどうしても弛緩しているように感じられることが一度や二度ではなかったということ。
さらに延々と続く説明台詞が整理しきれておらず、第19話ラストのマーリンのそれのように、初見の視聴者が呆気にとられつつ鼻白まざるを得ないような脚本でもある。あと2話ほど話数があれば、この山場問題と説明台詞問題を解決できたと思う。じつにもったいない。序盤から中盤にかけてはうまく構成できていたと思うのだけれど。
もちろん、いまの型月コンテンツに限って、予算不足はありえない。あえて、この全体の話数で決着させることを選んだのだろう。たぶんそれは、言葉を換えると、スピード感やテンポ感を重視したということなのだろうけれど、全話一気見するのではなく毎週30分ずつ見ていくにあたって、このふたつの問題は完全に致命的な瑕疵となっている。
・・・とはいえ、努めて平等に観察したとしても、本作の傷はそのくらいだろう。ほかの要素はすべてすばらしいクオリティを達成していて、奢侈禁止条例に引っかかるくらい、贅沢な仕上がりになっている。誰もが指摘する作画は言うに及ばない。美術も撮影も演技も、すべて劇場アニメさえも超えるレベルでまとめられている。
ufotable流のズシッと重みのある画作りから脱却した、より軽やかで華やかなキャラデザやエフェクトはきっと賛否両論あると思う。古参の月厨ほどヒステリックにアンチとなったのではないかしらん。でもわたしは完全に支持に回る。高瀬智章さんの仕事はすばらしすぎる。序盤から中盤のバトルシーンにおけるマシュのカットは『{netabare}冴えカノ{/netabare}』で爆発したフェティシズムを感じさせて胸熱。
{netabare}どうしてこのフェティシズムは終盤で抑えられたのだろう。きのこあたりからクレームが入ったのだろうか?{/netabare}
OPもEDもそれぞれ守りにはいっていない、攻めに攻めたチャレンジングな仕上がりでそれも格好いい。田中将賀さんが型月作品で仕事をする日が来るなんてびっくり。あのEDの斜めから俯瞰した滋味あふれるギルの作画は作画ヲタへのご褒美以外のなにものでもなかった。重心の揺らぎとシンプルな運動がうまく噛み合ってすばらしすぎる。
総じて、型月のありあふれる資金力のほとんどすべてをアニメのクオリティに結びつけられた、贅沢な作品。ただ総話数の設定だけが難ありで、そのせいで、ストーリィに大きな瑕疵を抱えることになってしまったのはまちがいない。結果、ファンサービスというカテゴリに括られてしまう結果になったのは、もったいないなあとただただ思う。
それにしてもギル役の関智一さんの演技はすごすぎる。よく、この大風呂敷な世界観の中心を担いきったと思う。惜しみない、拍手を。
衝撃:★★★☆
独創:★★☆
洗練:★★★★★
機微:★★★☆
余韻:★★