なばてあ さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
無限遠点が懺悔する
原作未読。
すごく新しいと思う。見ていて、自分が「なにを」見ているのか分からなくなるくらい。これは最上級のポジティブな評価。「写実的な戦争+超能力もの」というジャンルでいうと『{netabare}終末のイゼッタ{/netabare}』が近い。あの作品も良作だった。構造としては似ているけど、あれはちゃんと「なにを」見たのか、きちんと認識できた。なぜこれはそれが難しいのか。
よくよく考えてみて、でも結論としては至極あたりまえなものしか出てこない。たぶん、つまり、「深夜アニメ」というカテゴリのなかで、この作品に似ている作品がほかに無いからだろう。『{netabare}終末のイゼッタ{/netabare}』との違いは、主人公であるターニャへの距離感である。この作品の語りは、ターニャに対して、徹底的にクールで客観的なのだ(ああでも『{netabare}銀英{/netabare}』とか『{netabare}ファイブスター{/netabare}』の魅力もこういうところにあったのか)。
ターニャのモノローグはよく知られるとおり「リアリストかつクレバーなおっさんのぼやき」であって、そこにギャップ萌えがあるのはまちがいない。けれどもそんな美味しい主人公のセリフなのに、本作を構成する要素のなかでそれはごくごく小さなパーツでしかない。この作品の視点は、様々な国の様々な階層に次々とシフトしていく。
無数の語りで、ひとつの戦争の輪郭を縁取っていく。結果、印象としては極めてクールな神の視点のようなもので悲劇を観察しているかのようである。そう、つまるところ、視聴者は存在Xの視点を知らず知らずトレースしていることになる。ターニャの胸躍るバトルや爽快な弁舌にわくわくしつつも、そこにいずれ迎える悲劇の種を見出す瞬間に、それは顕著となる。
ここが本作の際だったストロングポイントである。もちろんそれ以外にもポジティブな点は数知れない。プロットとしては、戦争と政治の二重性、もしくは戦術と戦略の齟齬みたいなものが酷薄に描かれているのが魅力的。戦争と戦術で無敵を誇るターニャがすこしずつデッドエンドへと追い詰められていく肌感覚は、視聴者にとって愉悦以外のなにものでもない。
また、空戦シーンの作画もすばらしい。カメラとキャラクタの関係がめまぐるしく動く派手なカット割りだけれど、レイアウトが精密に練られているので、各キャラクタの動きを見失うことはほとんどない。銃や兵器の設定もきっちりと詰められているし、塹壕戦の汚さや臭さみたいなものさえ、匂ってくる画作りには脱帽する。・・・とはいえこのへんは『{netabare}終末のイゼッタ{/netabare}』でも共通する点だったりはする。
さらに、帝国軍幹部3名のCVの豪華さも外せない魅力だろう。あまりにも耳が幸せ。そこに悠木碧さんが絡んでいくのだから、平時の描写も戦争の描写に引けを取らないくらいおもしろかったりする。よくこんなキャスティングができたものだと思う。作品の重心をそうしてターニャ一極集中にしなかったことが、すべからく良い効果を生んでいることは述べたとおり。
そして、そう、さすがの演技なのだ。この難しいキャラクタをスイっと視聴者に理解させているのは、脚本の推敲もだけど、CVに寄るところが大きい。
ほんとうにすごい。
悠木碧さんに、花束を。
衝撃:★★★★
独創:★★★★☆
洗練:★★☆
機微:★★
余韻:★★★☆