なばてあ さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
叙階する応力ひずみ
原作未読。
感想は『レールガン1期』に準じる。ちまたでは『1期』のほうが評価が高くなっていて、それに頷けるところも多いのだけれどわたしは『2期』を上に取る。完成度ではまちがいなく『1期』だけれど、『2期』は収録話数に「シスターズ」編が含まれている。このエピソードのすさまじい魅力にかけたい。
とはいえ、わたしはこれまで、さんざん上条当麻のつまらなさについて文章を費やしてきたのに、「シスターズ」編を言祝ぐのはやや論理的に矛盾しているのではないかという指摘もあるかもしれない。ただ#14-15にかけて登場する上条は、あくまで美琴目線のバイプレイヤーとして登場するに過ぎない。
それゆえ、上条の言葉は美琴の言葉の重たさを増す補助線としてスマートに機能する。なんだったら、彼のイマジンブレーカもアクセラレータの万能感を増す補助線としてニッチに作用する。そう、上条当麻は脇役としてこそ、その存在意義がまっとうされるスキルセットになっているのだ。本作の彼は、例外的に、バッチリである。
2020年現在、『とある』は構造的な古さが眼につきやすくなっていると、『インデックス』シリーズの感想で書いた。その古さは『レールガン』も逃れられているわけではない。『{netabare}リゼロ{/netabare}』や『{netabare}メイアビ{/netabare}』、もしくは『{netabare}幼女戦記{/netabare}』のように、SFファンタジーものでも、写実的な残虐描写や心理的な強迫観念が視聴者への刺激としてどんどん投与される時代である。
その現代の他作品の傾向にかんがみるなら、『とある』は全般的にぬるいのはたしか。べつに「古さ」がただちに「無価値」に繋がるわけではないにせよ、「古さ」が視聴者の受容を、ある種客観的かつ冷静に変質させるトリガーにはなるだろう。ただただ冷めて見てしまったときに、この種のエンタメ作品になにが残るのかはお察し。
とはいえ「シスターズ」編に限るなら、状況は変わる。このエピソードに振る舞われた残虐描写と強迫観念は、2020年現在でもじゅうぶんに機能するほどのエグさと深さがある。10,000人の犠牲という、その天文学的な数字が持つ量的価値を質的価値に変換するのが、美琴役の佐藤利奈さんの演技。とりわけ息だけの演技が説得力に満ち満ちて。
長井龍雪さんのディレクションも相変わらずの安定感。冴えっぷりでいうと『1期』だろうけれど「シスターズ」編クライマックスの画面のテンションは完全に劇場版レベルだったと思う。「サイレントパーティー」編は、それに比べるとどうしても緩むところもあるけれど、でもエンタメ作品としてお祭りっぽい花火にはなってるし、良いと思う。
衝撃:★★
独創:★★★
洗練:★★★★
機微:★★★★
余韻:★★☆