STONE さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
とりあえずの簡単(じゃない)な感想
高校生の部活によるアニメーション制作を描いたもので、アニメ制作というと
「SHIROBAKO」を思い出したりしたが、あちらがプロの現場を描いたものゆえに多くの人間が
関わっているのに対して、本作は部活ゆえに少数で制作に臨んでおり、中心となるのは浅草みどり、
金森さやか、水崎ツバメの3人。
少数ということもあってか、この3人のキャラがよく立っており、いずれも魅力的。それぞれの
長所を活かして、同じ目標に向かっていくという王道展開もいい。
この3人は個としても充分魅力的だが、その関係性ややり取りもまた面白い。
関係性という点では、作中でも言っていた「友達ではなく、仲間」という意識ゆえか、いいものを
作るための我欲を遠慮せずにぶつけ合いつつ、それでいてドライな感じがしないところがいい。
それぞれの趣味、こだわりなどは互いに相容れないものがあると判っており、それでいて相手の
それはを否定しない姿勢も素晴らしい。
やり取りという点に関してはそれぞれのワードチョイスとそれによる掛け合いがそれで、特に
ワードチョイスに関しては浅草氏の古い言い回しが面白い。
この3人の中の人の演技も魅力に一役買っており、金森役の田村 睦心氏はさすがといった
ところだが、田村氏と言うと普段は浅草氏のような役が多い印象のため、それが逆に面白かった。
浅草役の伊藤 沙莉氏は本業は女優さん、水崎役の松岡 美里氏は新人さんで決して正直上手いとは
言えないが、逆に話数が進むに連れ、ドンドン良くなっていくのが判る。
あと伊藤氏に関しては地声のハスキーボイスがとにかく印象強い。こういう声質は汎用性こそ
低いものの、逆にそれに合った役に出会うとドはまりするが、今回はそういう印象。
キャラに関しては他には音響部の百目鬼、生徒会のさかき・ソワンデ、ロボ研の小野などが印象に
残る。
アニメ制作ということに関しては前述の「SHIROBAKO」に較べて、より細かい技法などを
取り上げていたのが興味深い。
こういったミクロ的描写を見せつつ、マクロ的な金森氏のプロデューサー的役割をも
描いていたのが面白い。
アニメ作品で描かれた作品制作のプロデューサー的業務と言うと、「SHIROBAKO」の渡辺 隼や
「ガーリッシュナンバー」の九頭のように外部との折衝、あるいは「冴えない彼女の育てかた」の
安芸 倫也のようにコンセプトを打ち立て、それに沿った人材集めといった部分が思い出されるが、
本作におけるそれはスケジュール管理や問題点に対しての対処などプロジェクトマネージャー的
業務に焦点を当てていた点が興味深い。
また浅草、水崎がアーティスト気質なこともあって、アートをちゃんとした商品として完成させる
ためのかじ取りも結構重要な仕事だったみたい。具体的作業という点では浅草、水崎の二人だけでも
できたのだろうが、二人だけなら収拾がつかなくなっての頓挫、品質にこだわるあまりの大幅な
遅延など充分にありそう。
現実でもアイデアは面白いのにまとまりのない作品が見受けられることもあるが、ああいう作品は
原作者なり、監督なり、脚本家なりのアート性をうまく制御できる人がいなかったのかな?と改めて
思ったり。
SF心をくすぐられるのが浅草氏の妄想シーンで、これが現実世界と自然な流れで
つながっていくのが面白い。
それでいて現実と妄想では絵のタッチが変わっているために混乱しなくて済むが、そういった
演出的なものを抜きにしても妄想世界のタッチが浅草氏のスケッチがまま動き出したようで良い
味わいがあり、この妄想世界でのキャラ自身の声による擬音も面白い。
世界観や設定などのバックグラウンドも興味深く、特に芝浜という町の状態、構造などが第二の
主人公というぐらいに面白く、その作画も素晴らしい。背景美術や舞台設定に関しては放映時期が
同クールである「ドロヘドロ」と並んで素晴らしかった。
芝浜だけでなく、その中にある芝浜高校も多彩な部活などが面白く、更に今より50年後という
設定だが、移民が増えたのか、白人や黒人とおぼしきキャラが多かったり、逆に風俗などは今と
変わっていなかったりとか、昔流行った言葉が使われていたりと、その背景を想像するのも楽しい。
芝浜の構造や最終話の芝浜から地球に至る引きの映像を見るに相当大きな地理的変化が
あったようだが。
構成的には3本のアニメ作品制作を描き、それによって4話×3本といった形になっていたが、
それぞれの最終話では劇中劇のアニメ作品を割とちゃんと見せてくれることで、制作成果が
締め要素の一つとしてうまいこと機能していたみたい。
もっとも最終話の「芝浜UFO大戦」は視聴者がカタルシスを得るような出来にはなっておらず、
その辺では賛否両論ありそう。個人的には浅草氏も感じていたように改善すべき点が多い出来と
いうのはこの先を映像研、並びに浅草氏の成長の余地を残しており、これはこれでありかなという
感じでしたが。
ただ外部の高評価という形で丸め込んでしまった感のあった学校、及び生徒会との軋轢、
「芝浜UFO大戦」の町おこしとしての意義などはもうちょっとちゃんと描いてほしかったかな。
水崎氏の箸の持ち方や変な走り方などに代表されるように、何気ない部分が伏線になっていたりと
演出的に面白い部分が多く、随所に挟み込まれるパロディも楽しい。
2020/03/28
2020/03/29 誤字修正