ウェスタンガール さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
鏡の国の千秋
ちょっとシュールでドタバタ感あふれる前作から、空気感が変わったような、何とも言えない居心地の悪さを感じてしまった。
声優、BGMも含めた音楽スタッフは同じではあるが、制作会社、監督が変わったことで、原作の改変が進んだのであろうか、演出や絵作りに違和感を覚え他ことも事実だ。
しかしながらである。
もしそれが意図したものであり確信犯的な企てであるのなら、エッシャーのだまし絵に迷い込んだようなオープニング、モブキャラのシルエット化、さらに、隣に引っ越してきた冬木くんの登場も含め全てが、観る者を不安に陥れる道具立てと言うわけだ。
表向きは、いわゆる“人情噺”として見せつつも、千秋が迷い込んだ“鏡の国”でのダークファンタジー、冬木君を前にして、彼女は自身の心と向き合うこととなる。
イライラする相手は自分を映す鏡だそうだ。自身で気付くことのできない問題を、相手の中に無意識に投影する鏡。
因みに、これを心理学ではミラーリングと言うそうだ。
人に対する気遣いのあまり、本心を伝えることが苦手な冬木くん。
その姿にいら立ちを覚えつつも、口に出せない千秋。
彼女は、鏡である冬木くんの姿に自分を映し、どうすべきかを知るのである。
{netabare}自分の本心を伝えることができず、大好きな“春香姉さま”に叱られ、それでも気を使い続けていた彼女が、最終回にやっと口に出すことができた言葉。
「大好きな春香、留学に行っちゃ嫌だ」は成長の証しである。
同じことは、手紙を出した冬木くんにも言えるだろう。{/netabare}
まあ、穿った見方はこのあたりにして。
冬木くんは前作の“山田”へのオマージュとして描かれており、心温まるお話ではないか。
三姉妹の友人たちも、キャラ付けが定まり、良い役回りを演じている。
もう一つの南家は“冬馬”のみの出演で、若干寂しかったが、孤高の勘違い男である“保坂”の健在ぶりは嬉しかった。
何はともあれ、キャラにブレがなかったことが一番かな。