cross さんの感想・評価

3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態：観終わった

日常系とミステリーの融合、全ての面において好印象を受けた作品。【総合評価：80点】

2012年春から夏、22話とTV未放送回を含め全23話で放送された作品。

『涼宮ハルヒ』『けいおん』『CLANNAD 』『らき☆すた 』
軒並み有名作品を出している京アニの最新作であるこの『氷菓』
京アニの新作と言うだけでも、放送開始前からかなり期待を持ていましたね。
この『氷菓』は、角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞受賞作だそうです。
その賞の凄さってのはイマイチ分からないのですが、まぁ賞を取るぐらいなので作品としては中々の完成度が期待
Anotherの視聴でミステリー&ホラーと言うジャンルにはかなり興味を持っていましたので、視聴前から個人的にはかなり期待する要素が山積みな作品でした。


物語は、 ミステリーから連想される緊張感や重苦しい空気、そんな従来のミステリーとは全く違いましたね。
高校生であるキャラクターの何気ない日常を描き、そこから何気なく出てくる疑問、謎を追求し推理していきます。
普通なら気にもしない様な疑問や謎を徹底して追及、気にも留めずに見過ごしてしまう様な情報を元に理論立て推理し、疑問や謎の経緯を解き明かしていく新感覚のミステリーでした。
ミステリーと言えば、中々体験出来ない様な事柄を焦点に描くものが多いので、日常からの事柄を焦点に置いてくるのはとても斬新だと思いましたね。


作画に関しては綺麗な絵でキャラクターのデザインも好み、更に風景などの作画も流石の京アニといった感じ
ＯＰ、ＥＤも作品の雰囲気にマッチしていましたし、それぞれの映像面に関しても楽曲の雰囲気とても綺麗な絵で見事に引き立てていました。

メインとなる古典部のメンバー４人はそれぞれに役割もあり、しっかりとキャラ立ちしていて声優も豪華でそれぞれのキャラクターの味を非常にうまく演出できています。

まず主人公の折木奉太郎
「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモットーとする省エネ主義
この脱力しているキャラが個人的には気に入っています。
そして、この作品の核でもある、疑問や謎を解き明かす推理を主に担当しています。
千反田えるから投げかけられる疑問や謎を特にあたり、基本的にはやる気を見せないものの、その気になると、少ない情報から理論立てて推理していきます。

そして、ヒロインに当たる千反田える
彼女はこの作品の核である普通は気にもしないような疑問や謎を見過ごせず、その真実をどうしても知りたいと言う好奇心が旺盛すぎる少女
奉太郎の推理力に対して心底信頼を寄せており、自分の好奇心に引っかかった疑問や謎を解き明かすように奉太郎に協力を願い出る。
その際の奉太郎とえるのやり取りは、幼い子供のやり取りっぽくて見ていて和みました。
それから、頼み込まれた際の奉太郎のイメージ映像のえるが毎度可愛くて可愛くてｗｗ

終盤につれ、主人公とヒロインが互いに意識していく様は見ていて微笑ましかったですｗｗ


主人公である奉太郎の友、福部里志
陽気で周囲の空気をうまく明るい方へと持っていく様なキャラ
そして、基本的にやる気を見せない奉太郎を絶妙にコントロールしている曲者ですね。
「データベース」を自称し、どうでもいいようなことまで網羅した様々な情報を有し、その情報が奉太郎の推理の重要な助けになっている事も多い。
奉太郎を探偵とするならば、里志は非常に有能な助手といった感じ。
で前述の通り、陽気な性格ですが、省エネ主義の奉太郎が抱える独自のジレンマを理解している人物で、奉太郎と二人だけの時の会話では理解者としての振舞いを見せます。
そんな普段の雰囲気とは違う一面を見せてくれるのも良い味を出していました。

そして、里志に想いを寄せる伊原摩耶花
疑問や謎に対する推理面に関しては、まぁそこまでの重要な立ち居地にはないです。
それよりも会話では、奉太郎に対して毒を吐いたり、手厳しい指摘やツッコミを入れ、会話のキレを生み出している地味に必要なポジションです。
そして、里志に対して想いを寄せていて、この作品のメインにある『推理』とは別に、高校生ならではの青春の一大要素、『恋愛』の面に関しても働いています。
推理面ではそこまで重要でないですが、物語の会話を引き締めるとても重要なキャラでしたね。


最終的な総評としては、開始前に過度な期待を寄せていたので、その期待を超える事はなかったと言うのが本音ではあります。
ですが、自分の過度な期待があっただけであり、斬新なストーリー、作品の雰囲気に調和したＯＰとＥＤ、京アニが送るとても綺麗な作画と演出と言った映像美
それぞれが確りとした役割を担うキャラクター、そしてそのキャラクターを演じる豪華声優陣の見事な仕事っぷり
物語、作画、音楽、キャラ、声優、どの点に置いても軒並み高い評価が出来るとても優秀な作品だったように思えます。

従来のミステリーとは違うが故にこの作品の評価は結構大きくずれるかもしれません。
日常系の側面が強いので、ミステリーとして刺激が足りないと言う方も多いでしょうから万人にオススメは出来ないですね……
しかし、私個人の意見としては全体的にレベルは高水準、未視聴の方は一度この斬新なミステリーの雰囲気を一度味わって頂きたいです。