ウェスタンガール さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
時空の間(あわい)
実はこれ、1話切りで放っておいた作品であった。
主人公と、特に彼女の祖母、それぞれの立ち位置に居心地の悪さを感じたことで、観続ける勇気を失ってしまっていたのだ。
幸いにも、今一度チャレンジを果たし、この違和感こそが、物語を動かす動機であり、表題そのものであることに気付くのである。
主人公の月白瞳美(ひとみ)は魔法使いの孫で、魔法を嫌い、心を閉ざしたうえに、一切の色を失い立ちすくんでいる。
祖母の月白琥珀(こはく)は、そんな彼女を、自分が高校生活を送った時代に、魔法で送り出すのである。
彼女はそこで、写真美術部の仲間達と出会い、友情と恋が生まれ…、などと聞けば、ベタで陳腐なファンタジーを想像してしまいそうであるが…。
【主観的な考察】
空間、人間、時間という三つの間(あわい)
“ひとみ”がこの世界で初めて出会う、もう一人の主人公“葵唯翔(ゆいと)”。
彼がペンタブで描く絵の中に、彼女が失ったはずの“色”を見る時、ストーリーが動き出す。
光と闇、雨や風の巧みな表現が映し出す高低差と奥行き。
それらが広がる空の間(あわい)である“坂の街”を舞台に、二人の間(あわい)が深まる過程が情感豊かに描かれる。
そこには、“路面電車”、“傘”、“紙飛行機”、“砂時計”などが、重要なアイテムとして登場する。
どれも心憎いばかりの演出である。
そして、時の間(あわい)。
これは、大魔法使い“月白琥珀”の贖罪の旅。
彼女が得た大きな魔法の力、その代償として失った娘と孫の心を取り戻そうとする物語でもある。
“ひとみ”が取り戻した“色ずく世界”、その先につながる明日こそ、“こはく”が本当に取り戻したかったもの、それは家族という存在。