「翠星のガルガンティア(TVアニメ動画)」

総合得点
88.0
感想・評価
2869
棚に入れた
14400
ランキング
134
★★★★☆ 3.9 (2869)
物語
4.0
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

世の中に絶えて陸地のなかりせば

のどけからまし!とはいかない全13話+OVA2話。
レビュアーさんからのおススメもありで、再放送きっかけでの視聴です。

戦闘に明け暮れるとある宇宙の果て。そこから遥か遠くに飛ばされてしまったロボット乗りの少年レド(CV石川界人)&搭乗機のAI?チェインバー(CV杉田智和)が飛ばされ先の星で出会った人たちと交流したりアレしたりの物語。

飛ばされ先は酸素があって生物が生存可能な星。レドの母星はそうではないらしい。
飛ばされ先ははるか昔には高度な文明が存在してたと口伝されてる。今は陸地全て水で覆われ船団都市(イメージはハウルの動く城水上版?)が人間の活動拠点となっているローテクの世界。ユニヴァーサルスタジオのショーでお馴染みの『ウォーターワールド』の世界にほど近いです。対してレドといえば連れのロボットのOSそのものがそれこそ会話もなんなく可能なレベルにある超高度AIだったりに代表されるように21世紀の地球なんて目じゃないくらいの科学力を誇っているであろうハイテク世界の住人。

 異文化交流

ベースとなるものが言葉も含めて違う両者。一致点を探しながらコミュニケーションを重ねていきます。ここで生じるズレがコメディとして昇華されていて面白いし小気味よいテンポを作ってました。チェインバー役の杉田氏のロボらしい芝居が光ってます。
それに女の子がかわいい。二次元のヴィジュアルに惹かれることがめったにない小生のツボに珍しくはまったヒロインエイミー(CV金元寿子)です。
{netabare}※EDアニメでウィンドサーフィンするエイミーの“引き→ズーム→引き”で抜けていく一連のカットがめちゃくちゃ良かったです。明るい未来への期待に一点の曇りもない表情。しかもこのカットのところだけスタッフクレジットが消えている。しっかり踊りましたよ、私は!{/netabare}

海で覆われた星を指して“翠(みどり)の星”と書き“すいせい”と読む。このへんのセンスも詩的かつ美的で好きです。また本編を観ればその意味も分かる仕掛け。確かにみどりの星であります。


サムネ/キービジュアルから想像されるロボットものという宿痾。
1話アバンの手の込んだ宇宙戦争シーンから想像する戦争ものというこれまた宿痾。

全然違いましたね。上記を期待してしまうとなんかずれを感じそうだし、ロボもの/戦争もので食指が動かない方も事前に出ていそう。それでも観てしまったら深みとコクにうっとりしてしまうような。
シリーズ構成に虚淵玄氏のクレジットを見つけたのは視聴し始めてからでした。
ロボットもバトルも物語の主軸とは言い難い。先に挙げた“異文化交流”。のちに明らかになっていく世界の種明かしと合わさって、文明の衝突と融合といった大きなテーマを1クールの短い尺なりにしっかり提示した良作。OVA2話とセットにして考えたほうが良いでしょう。となると全15話ですね。

ロボット+戦闘はそれでもスパイスとして機能してます。バトルは『グラディウス』っぽいなぁ、いやむしろ『沙羅曼蛇※1』っぽいぞと思った直観はあながち遠からずのちにしっかり回収されることとなります。ん!?よくわからん?すまぬm(__)m
 ※1{netabare}バイオな敵キャラ満載なグラディウス系列のシューティングゲーム{/netabare}



■めずらしく主題歌について

結論。どっちも好き。
OP「この世界は僕らを待っていた」。 アゲ系の茅原実里さんの曲は私には初かもしれない。作中が不穏な世界な分、OPがポジティブなのは救いだし、物語でもきちんと意味のある仕掛けになっている曲。
ED「空とキミのメッセージ」 。エイミーかわいい!だけでなく曲も歌い手さんの声もよい。ChouChoさん知らんなぁと思ったら『氷菓』「優しさの理由」の人だったんですね。どうりで心地よいわけだ。

この何かが始まりそうな元気でアガるOP。夕暮れしっとりED。という組み合わせ。それなりに王道だと思うんですけど、聴き流してしまうアニメ作品は数多いです。それが両方の曲ともひっかかる。
このパターンの究極であり原風景は自分には『ふしぎの海のナディア』ですね。良い意味で本作はそれを彷彿させてくれました。ありがとう!


■声優小西克幸のお仕事

途中離脱のリーゼント兄ちゃんピニオン役を熱演されてました。
アツいというか勢い任せのこのキャラクター「ちょっと苦手だなぁ」と思ってたら、そういえばの大人気カミナ兄貴の既視感でした。

 {netabare}「お前の信じる俺でもねぇ、俺の信じるお前でもねぇ。 お前の信じる、お前を信じろ」{/netabare}

言いだしても不思議じゃないと思ったのは私だけでしょうか。巷では大人気なんですけどあまり自分得意じゃないんですよね~。

{netabare}・レド回復前にクーゲルが主導してる船団を呼び寄せちゃうし
・交渉もしてるようでしてないし
・そもそも直感はずれて窮地に陥ってるし{/netabare}

尺の都合考えたり、それを補って余りある長所を考えれば不問にするところなんでしょうけど、苦手意識が先行しちゃうと粗探しに興じてしまうちょっと勿体ない感じでしたね。



桜(ハイテク文明)がなければ、維持/構築のための複雑な仕組みも努力もいらず世の中は長閑だろう。まあ極論です。

…と思うのも構築する過程だったり維持するための努力を払い続けてるうちは良いものの、長く時間が経過していくと形骸化して本来手段だったものが目的化しちゃう。思考停止になっちゃう。「なぜそうしているのか?」の観点が抜けてしまうことはよくあるからです。
そんなレドくんが立ち止まって自分で考えてみる物語が屋台骨なんでしょうね。だからこそ心に響くのかもしれません。

本作の価値。大きなテーマをしっかり1クールの中で魅せる。尺不足を言い訳にしてないか?を立ち止まって考える機会を与えてくれたこともあるでしょう。

※ネタバレ
{netabare}「俺もここから降りなければ良かったのかもしれない」(第11話レド)。{/netabare}

{netabare}このセリフが指すところは示唆に富んでます。果たしてクーゲルのような立ち位置でよかったか?未知のものに触れず自身の自我を保ったほうが本来ラクだったはず。

 “知らなければ幸せだったかもしれない”

これも真なり。逆もまた然り。

物語では揺さぶられた自我の葛藤を克服して、というパターン多いですが、しっかり描くことは難しい。そのへんはさすがの虚淵玄ともいえるのかもしれません。{/netabare}



※自分用備忘
{netabare}レド(CV石川界人)
エイミー(CV金元寿子)
チェインバー(CV杉田智和)
クーゲル(CV小野友樹)
ストライカー(CV藤村歩)
サーヤ(CV茅野愛衣)
メルティ(CV阿澄佳奈)
ベローズ(CV伊藤静)
ピニオン(CV小西克幸)
リジット(CV大原さやか){/netabare}



視聴時期:2020年1月~3月 地上波再放送

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2020.03.07 初稿
2020.09.26 修正

投稿 : 2020/09/26
閲覧 : 831
サンキュー:

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