kurosuke40 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
現実の中で夢を
何か大団円を迎えて、カタルシスを感じるわけではない。
それよりかは淡々とした日常の中でどのように夢に向かって歩んでいこうか、というようなことを優しく語られたようでした。
シンデレラの靴は投げ捨てようと。
舞台はアニメから4年後。
武蔵野アニメーションはオリジナルアニメーションをメーカーと契約を締結せずに(内定で)制作に着手してたが、
結局おじゃんになっちゃった事件があり、(資金繰り関連から?)元請けで作品を作れないまでの状態に陥っていた。
そんな中とあるメーカーから、題名と公開月(短工期)だけが決められたオリジナル映画作品の元請け案件があり、
以前のおじゃんになったアニメを元に、かつての武蔵野オールスターの人員を集めて作品を作り上げていくというお話。
主人公たちは作業者からマネジメント層へ少しばかり上がっており、悩み事もその層に沿うものに変わってきている。
とはいえただ一言でまとめると、アニメ放映から一貫して「好きなことを仕事にできても、好きな作業だけができるわけではない」になると思う。
そういう実際的な現場で、どのように足掻いていけばいいのかということ。
アニメを含めて、この作品でとても魅力的なのは一つの道を行動で示してくれる先達たちで、
くすぶるあおいに対して、企画を出していく高梨や平岡、助言をくれる社長
作画監督ばかりになっている絵麻に相反して、原画しか受けないとスタンスを示す小笠原、
声優業よりも芸能業の仕事が多くなっているしずかに対して、事務所は物分かりの悪い夫のようなものと諭して行動を進める声優の先輩(まりさんだったかな?)
私は子供たちに(初心を)教えてもらっていると吐露する杉江など、
そんな彼らを受けて、あおいたちも先輩になっていく。
映画は短い。
一人ひとりの話は淡々と次々と進んでいく。
だが、その代わりに1つの作品に対して、各分業がそれぞれ本気をぶつけて作り上げていく様をより感じられた気がする。
「脚本」「作画」「音響」……。
そして、「進行」「プロデューサ」などもアニメ作品の一要素だということを感じた。
クオリティのためには、必要なところに必要な時間と工数を当てれるようにコントロールしないといけない。
そのためには予算と工期を引っ張ってこないといけないわ、(話の都合上悪役の)メーカーと話をつけないといけないわ、etc。
ビジネスとして成り立たせないと大きなものは作ることはできない。
観客には目に見えない要素であるが、確実に作品の良し悪しにインパクトのある要素で、
そんな現実的な障害を乗り越えて、あおいたちは良い作品を作り上げていく。
ただもう1つ、現実的な示唆も感じた。
SIVAのラスト。
よくある作品の終わり方かもしれない。ただSIVAのラストはShirobakoのラストに繋がっている。
SIVAは大団円にしなかった。
私にはSIVAの主人公たちはあおいたちが重ねられている気がする。
私たちは満足することはない。それは人という生き物の構造から。
つまるところ、夢にたどり着くことはない。
あるのは夢に向かい続けることだけ。
Shirobakoの最後は朝礼で終わる。
それはいつもの日常。夢の先ではない。
それも含めて、どのように夢に向かって歩んでいこうかということ。
改めて私は何をしたいのか。何をするのか。
もしそれでも、と思えるならば、それは歩むべき道なのだろう。
蛇足
あおいが絵麻に作監依頼後に、あおいが友達モードに戻ろうとしているところで絵馬がお仕事モードで確認を畳みかけ、
あおいが「頑張ります」と友達モードっぽく解答を逃げてるところが印象に残っている。
進行は進捗が不味いときは無理を言って頭下げるのがお仕事だから、ね。(苦笑
杉江の話は最初は意図がわからなかったが、あおいの一言で胸に来た。
絵麻と小笠原の対比は直接の関わり合いはカットされたんだろうなという気がする。