雀犬 さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:----
努力と才能
原作既読。
珍しくオンエア中に推薦文を書いてみます。「ランウェイで笑って」は良い意味でとても現代的な作品です。
デザイナーを目指す津村育人とファッションモデルを目指す藤戸千雪のダブル主人公で、題材は少年誌ではかなり珍しいファッション。連載誌は少年マガジンですが、かなり中性的なマンガといえるでしょう。
育人は幼いころから家族のために服を作っていた経験があるうえ、デザイナーの才能もある。千雪はモデル事務所「ミルネージュ」の社長令嬢で、ルックスもスタイルも抜群。軟弱にみえる育人だけども、実はかなりハートは強くファッションに関することでは引き下がらない。千雪はさらにポジティブな性格で、なかなか頼もしい2人であります。
でもそんな2人にも障壁がある。育人は貧しい家庭環境にあって専門学校に行くお金がない。千雪は158cmとファッションモデルとしてはかなり身長が低く、なかなかモデルの仕事が取れない。本人の力の及ばないところで苦境に立たされている。
しかしどうだろう?この2人を比べたとき、パリ・コレクション出演を目指す千雪の方がずっと高いハードルが設定されているんじゃないだろうか。お金の話はなんとかなりそうな気がするけど、低身長はいかんともしがたい。「モデルは高身長でなければいけない」という業界の常識を覆す必要がある。
それは彼女1人で頑張っても難しいだろう。服を作るデザイナーの協力があってこそ、既存の価値観を変えるような偉業を成し遂げる可能性が見えてくる。本作は、「一人では叶えられない少女の夢を二人で叶える物語」といえるでしょう。
伝統的な少年マンガでは、女の子はきまって男の子の夢のサポート役でした。でも「ランウェイで笑って」は違うんだよね。ヒロインが献身的に尽くすのではなく、戦友に近い男女のパートナーシップに新しさを感じるのです。
最近の世の中の傾向として、努力して身に着けた能力よりも生まれ持った才能をより重視する時代といわれています。その象徴が「もってる」「もってない」という言葉でしょう。昔はこんな言葉を使わなかったよ。
「もってない」人間は今更何をやっても駄目だ、という諦めの境地が、あの忌まわしき「異世界転生してチート能力でイキリ倒す!」というタイプの話を生み出すわけです。なろう異世界転生は、勝ち組と負け組の断絶が顕著になってしまったがゆえに作られ続けている、いわば時代の徒花なんですわ。あれを面白いと思うようになったら人としてオワオワオワリ。
育人と千雪は「もっている」側の人間かもしれない。しかし才能や美貌が与えられたとしても、決して楽な人生を送れるわけではない。「もってない、もってない」と嘆いているばかりのブータレ小僧は、もっとこういうアニメを観て、努力をすることの大切さを学ぶべきなのだよ!
というわけで「ランウェイで笑って」原作含めお勧めです。