ウェスタンガール さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
食卓が映す多幸感
俗にいう人間の三大欲求の一つである食欲、生存を担保するだけなら“エサ”で事足りる訳だが、人間の脳内ホルモンはそれを許さない。
すべての欲求に対するあくなき探求が文化であると言って良い。
このアニメが描くのはただの食事ではない。親しい者が囲む食卓、家庭料理である。そこに満ちるであろう多幸感を描こうとしている。
ここには、すべての構成、脚本を担当した岡田磨里のこだわり、人間観が大きく関わっているようにも思える。
“あの花”を観ていないので、偉そうなことは言えないが、“とらドラ!”、“花咲くいろは”、“スケッチブック”の脚本だけでも、孤独に対する不安と、それに対峙しようとする気持ち、そのことへの共感といった感覚が伝わる。
リョウ、きりん、椎名、三人のキャラ設定にも、それぞれが食卓に込める想いが読み取れ、ストーリーに厚みとコメディが生まれるのだ。
さて作画である。さすがと言おうか、変態的と言おうか。
新房シャフトの面目躍如と言って良い出来だ。
料理はまるで生き物のようにヌルヌルと動き、恍惚の表情を浮かべる主人公たちに飲み込まれてゆく。
そう、爬虫類が獲物を飲み込むように、体をくねらせ、髪を振り乱しながらの食卓風景に唖然とする。
その感覚は、物語シリーズに通じるものがある。
しかし、これはホラーではない。初見は際物然として引くかもしれないが、
お腹と心を温める、愛すべき“グラフィティ”である。
三月うさぎのリョウが案内するミュージカル調のオープニング曲、『幸せについて私が知っている5つの方法』がまた良い。坂本真綾の歌声がピッタリだ。
(魅力的なサブキャラたち)
椎名家のお手伝いさん、家事の達人で師匠の露子さん。
{netabare}椎名さんの性格、その大部分は、彼女から後天的に受け継いだものだろう。{/netabare}
10品目にして初のメニュー入り、宅配ピザの達人、内木ユキさん。
{netabare}コミュニケーションが苦手、気持ちを伝えようとしても、頭の中でシュミレーションを繰り返すだけで疲れ果ててしまう。
それでも、心根の優しい、愛すべき性格の持ち主である。{/netabare}
そして最後に、椎名さんのお母さん。{netabare}“ひだまりスケッチ”の吉野屋先生の人、松来未祐さんの元気な声を聞くことができた。{/netabare}
ありがとうございました。