ひろぞう さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
君ただのプロレスアニメとみるなかれ
梶原一騎原作だと当然巨人の星や特にあしたのジョーに評価数が集まるだろうから
あえて大穴と言えるこちらを
梶原一騎原作の作品全てに言えるのは、全てが根底にあるのは、いつの世も変わらぬ人の営みとしての「ヒューマンドラマ」と言うことで
梶原一騎自身はドメスティックバイオレンスやっちゃうような人だから
ヒューマニズムもへったくれもない人なんだが
巨人の星の「星飛雄馬」はヒューマニズムからその名が取られているようだし
本作にもそのヒューマニズムドラマとしての、梶原イズムが生きている。
まだ日本が戦争という痛手から完全に立ち直れていない頃
主人公伊達直人は戦災孤児の貧困から抜け出すために密かに海を渡り、秘密結社としてのプロレスラー養成団体「虎の穴」に入門し、その非人間的とも言える厳しい養成を勝ち抜き、虎の穴最強のレスラーの称号
「タイガーマスク」の栄誉を勝ち取る
最初はその虎の穴の黒幕プロモーター「ミスターX」のただ操り人形として、リングに上がり続けるのだが
やがて自分のそうした姿勢に疑問を抱き、虎の穴と決別、ミスターXの差し向けてくる刺客としての強敵レスラーとの、抗争となる物語なのだが。
日本国にだってそうした苦しい時期があったし、今だって社会の根底で貧困に苦しむ人々がいる。
少なくとも伊達直人が虎の穴に入門しタイガーマスクとなったように
重要なことは最低でも「機会が平等」な社会の実現の実現に常に気を配る必要がある。
事実伊達直人も自分と同じ孤児院に莫大なファイトマネーを手にできるようになってからは、姿を偽り「成功した事業家」として、援助を惜しまなかった。
初代仮面ライダーの藤岡弘も、地方ロケの際には必ずそうした施設への訪問を忘れなかったといい。
ヒーローはたるやかくあらんと彼らが教えてくれる、V3の宮内洋も子供達のヒーローたらんと努力を惜しまなかったし
チャラいその覚悟があるとは思えない「平成ライダー」たちと、犯罪者にまで落ちてしまったクソボケ俳優達には、少しは彼らの爪の垢でも煎じて.....とこの口うるさい老骨は強く言いたいところである。
アニメーション的に見ると今のデジタルアニメ全盛の真逆に位置する、手書きの荒々しい作画だから出せる迫力
そして作画枚数を少しでも減らすための、アップ画面の多様やスローモーションシーンの多用など、作画的に「インチキ」だからこそ作り出せる、今のデジタルアニメーションの対極に位置する、画面から伝わってくるような制作陣の熱意は見所の一つだと思う
タイガーは虎は虎でも強者にしか、悪党にしかその牙を剥かない
OPの名曲と共にルール無用の悪党に.....。
今の世の中何でもよくなった、より弱い者から食い破ろうという小悪党達ばかりになってきた、今の風潮に風潮に一石を投じる
そして今の自分はどうなのであろうかと、問い直すのにこうした古典の名作を試聴するのも、たまには必要なことだとおもう。