えれ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
秀逸。
DVD-BOX VOL.2の特典ディスクで視聴。
尺は12分程度なのだが、流石西尾大介監督作品だけあっていくつかの映画的構造、一貫したスタイルを持ち合わせている。しかし後者について形容し難いため、今回は演出を掻い摘んで説明する。
開幕のロングショットからテンポ造り、テンションのコントロール、クライマックスの押さえ方などキレがもう素晴らしい。
自分自身で気付く思いや力、自身による抗うための拳とか力とか、それがどこから湧き上がって、どういう感情でアクションに繋がるのか、1カット1カットに意味付けや意識が行き届いていて感服する。例えば、主人公ふたりが拘束を破った直後前屈立ちで構えた所を引いて見せ、また別の視点から「ちっぽけ」なふたりになっていく。そして見えなかった巨大な敵が現れる。でもふたりはずっとその敵を見上げていた訳で、そこを後回しにするというハッタリのセンスが光る。「ちっぽけ」である人間達のちっぽけな命とその関係性が逞しく巨大に感じられる演出意図だ。
こういった人物の姿勢や構え方、画面の収まり方とその連続がテーマに対して必要な物となっているのがポイント。
この調子で、私は私の世界がある、という人間の正直さや可能性、泥臭さを徒手空拳を通じて表現するプリキュアの基本を僅か12分ほどで纏めている。そしてそれは決して良い子ちゃんの道徳的発想ではなく、「ふざけんな!」という人間として正直な怒りがまず大事なんだ、それがなぜ怒りになって現れるのか...納得したり悩んでいく過程がTV本編なのである。そうやって描かれた感情やそこから湧いて出た身体表現、コレオグラフィにテーマが生まれている。「ふたりはプリキュア」「ふたりはプリキュアMaxHeart」においてもより複雑且つ同質の演出意図と構造を持ち合わせているので、興味のある方はこちらから読み解くのも有効だと思う。
その他にも、映画館やイベント会場に直接足を運ばなければ得られない没入感を、立体視ムービーと一人称視点(ベクション)を用いた長回しのカットによって獲得している。そこに意図的に尺を割いているのが憎い。この辺りの間の取り方が秀逸なため物語や画に余裕が生まれ中毒性や想像力を掻き立てられるようにもなっているのだが、それも計算済みの構成である。
かなり端折っているが、「演出」「パッケージ(子供が観る上での没入感、劇場の特別感)」「作家性」の観点から非常に映画的であると言える。