「うみねこのなく頃に(TVアニメ動画)」

総合得点
68.2
感想・評価
995
棚に入れた
5170
ランキング
2196
★★★★☆ 3.4 (995)
物語
3.2
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.4

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ネタバレ

ちゃんもり さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.3
物語 : 1.0 作画 : 1.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

一体何を見せられているのか・・・

「ひぐらしのなく頃に」。
2002年から2006年にかけてコミケで大きな話題を呼び、
アニメ化によってさらなる知名度を得た怪作である。

その原作者である竜騎士07が満を侍して発表した次回作が
本作である。当然、ひぐらしで付いたファン層からの期待値は高く、
今度はどんなトリックで我々を驚かせてくれるのかと期待に
胸を膨らませていたことだろう。
また、ひぐらしのメディアミックス展開が一定の成果を残したことで、
本作は原作発表当初からアニメ化も視野に入っていたはずである。
しかし、本作の世間からの評価は賛否両論、それも賛3:否7(あくまで
私が感じた印象でしかないが)くらいのものだった。

私は原作をプレイしたことはないが、断片的な情報を繋ぎ合わせると
原作者は読了したユーザーから作品の矛盾点を突かれ、
「この作品が理解できないのはお前たちの経験値が低いからだ」的なことを
登場人物に台詞として言わせるという暴挙に出たらしい。
まるでバカにされて顔を真っ赤にして怒る中学生レベルの浅はかさである。

そもそも文章とは全て「お手紙」である。
書き手は誰かに何かを伝えたくて文章を書くのだから。
そういう意味では絵画にしろ映像にしろ、創作物は全て
「お手紙」的な側面を持っているといって良い。
なので、書き手は物語を創作するとき、常に読み手への配慮を
怠るべきではない。読み手の半数以上に「意味が分からない」と
否定されたら、それはもう「お手紙」という機能が果たせていないので
明らかに書き手の力量不足である。
読み手の経験値など全く無関係の問題である。

私は文章というものに対してこのような私見を持っているので、
原作の世間的な評価を垣間見た上でアニメ化にも期待していなかった。
なのに何故途中で切らなかったかというと、一応ミステリーであるからには
謎が解けていくにつれ何らかのカタルシスは味わえるだろうと
思ったからである。観終わった時にはリアルに「はぁ?」と漏らしてしまった。
先に結論を述べてしまうと、このアニメを最後まで観ても
何も得られない。完全に時間の無駄なのでやめた方が良い。

というのは、この作品はひぐらし同様、2クールで出題編を描いている・・・らしい。
ひぐらし後の「ひぐらし解」同様、後の解答編を観なければ
事の全容が分からない仕組みなのである。
そしておそらくこの作品は解答編が製作されることはないだろう。
そういう意味でも試聴する価値はないに等しい。

何故こうなってしまったのか。ひぐらしと何が違ったのか。
少し考察してみようと思う。

舞台は六軒島。富豪・右代宮財閥が所有する絶海の孤島である。
そこへ、親族会議に列席するため右代宮家の面々がやって来る。
ひぐらし同様、相変わらずギャグパートがサムい。
親族会議の目的は、右代宮家の莫大な資産と次期当主の座を誰が引き継ぐか。
簡単に言うと跡目争いである。
そこへ、謎の人物「黄金の魔女ベアトリーチェ」から一通の手紙が齎される。

内容は、
・自分は今の当主である金造と契約した錬金術師である
・契約内容として、契約時に自分が貸し与えた黄金を元手に金造が得た財の
 全てを契約解消時に取り立てるものとする
・此の度、金造より契約解消の旨を賜ったので取り立てを実効する
・但し、右代宮家に貸し与えた黄金を誰かが探し当てた場合、
 取り立ての権限を放棄する

黄金の在り処のヒントとなる碑文として
・第一の晩になんやかんやで何人か犠牲になる
・第二の〜
・第三の〜
・最終的に魔女が復活し黄金郷への〜 的な。

そして金田一よろしく不可解な連続殺人事件が始まり、主人公・戦人が
探偵役となり謎に立ち向かう。
しかし碑文の内容通りに殺人事件は進み、主人公たちの生死や
犯人も分からぬまま第一のエピソードが終わってしまう。
(おそらく、この物語がエンターテイメントとして成立するか否かの
分岐点はここである)

ここから突如、主要キャラたちがオーディオコメンタリーよろしく
物語の感想を述べ合う謎時空に突入。
「普通の人間には不可能な犯罪だった。本当に魔女の仕業かもしれない」と
言い始める周囲に「オレは魔女なんか信じねえ!」とイキる戦人。
とそこへ、突如「魔女ベアトリーチェ」を名乗る人物が
「私がやったんやで。違うと言うなら論破してみろ」と乱入。

幕間として設けられた件なのだろう。
つまり本編よりもひとつ外側の視点から物語をみているのだ。

ここから第二幕では戦人とベアトリーチェの知恵比べの様相を呈し、
先の事件を時には2人で議論を交わしつつ俯瞰していく。
ところが、先のエピソード1とは事件も生存者も異なる。
エピソード1が解決しないばかりか新たな登場人物が増えたり
突然ファンタジックな魔法バトルが始まったりと、視聴者を只管混乱に
陥れるエピソードがもう3度ほど繰り返され、このアニメは終わる。

何を言っているか分からないと思う。私も分からない。

なるほど、出題編なのだから訳が分からない部分があるのは仕方ない。
しかしどうだろう。ひぐらしを2クール観た時と決定的に違うのは、
「知りたい」という欲望が全く湧かない点である。

あまりにも原作者の目的が不明確に思われたので少し調べてみたところ、
この作品はどこからが妄想でどこからが現実なのかを敢えて曖昧にすることで、
読み手に「現実に起こった事実」をミスリードさせることを目的としている。

まあ解答編はこないと思うのでさっくりネタバレしてしまうと、
・真犯人?は紗音
・紗音は自らの不幸な生い立ちに自我を病み、人格が分裂。
 紗音、嘉音、ベアトリーチェの人格が生まれる
・それぞれの人格が別人と恋に落ち、より精神を病む
・極限に病んで最終的に島に集まった親族爆殺を計画
・計画実行前に親族の殺し合いが始まる
・紗音、戦人と絵羽だけは脱出。
・紗音は脱出したけどなんかもう疲れて自らドボン
・戦人、紗音を助けようとドボン。後遺症で記憶なくなる
・戦人、断片的に記憶を取り戻して事件を手記に書き起こす
・視聴者が観ていた事件はその手記の内容です

とのことである。

うーん・・・である。

これ、別に全部後付けでイケるというか、視聴者が知りたかった
事実ではないのでこんなことをドヤ顔で言われてもふーん・・・である。

そもそも現実か妄想かを曖昧にしている時点でいつでも
原作者はちゃぶ台を返せる状態なので、明かされる真実に魅力が全くない。

ひぐらしには明確なたったひとつの真実が存在し、古手リカがそこに
辿り着くことで運命が開けるのだが、そこに至るまでのスリリングな
展開力とプロットの巧妙さが魅力だった。

ところが本作では、提示されている謎と明かされる答えに因果関係がない。
「1たす1は3である」と言われて「え?え?なんで?」と驚き、
3になるロジックを期待していたのに最終的に「1かける1は1です」と
答えられるようなものである。いやだから・・・と言いたくもなる。

結局、中盤くどくどと見せられた繰り返される殺人や
ファンタジーバトルはオチとは何の関係もなく、不要な描写である。
これでは「マジかーやられた!」という清々しい敗北感は味わえない。

ミステリーの王者、体は子供・頭脳は大人なアイツも言っている。

真実はいつもひとつ。

投稿 : 2020/02/09
閲覧 : 1203
サンキュー:

2

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