takato さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
その姿、まさに奇々怪々なり。しかして、その真と理は如何?。
オムニバスの妖怪を扱った作品「妖ayakasi」の一編「化猫」で一際輝く活躍を見せた薬売りさんの物語がまさかの1作品としてアニメ化!。
「化猫」は、その強烈なビジュアル、ミステリー要素を上手く取り入れた薬売りの設定とキャラの妙、そして胸をかきむしるような悲劇とカタルシス、といった要素が揃った傑作だったので喜び勇んで見てみたが…。
結論から言ってしまうと、短編ではあんなに良かったのに、長編にしたらなんかなぁ~です。
薬売りの独特な設定も何回も繰り返し描かれると正直最初の新鮮さが薄れてしまったし、なにより薬売りのキャラが変わってしまったのが痛い。
最初の薬売りは、謎の人物だが実はヒューマンなところがある、付き合ってみたくなるような丸さが人柄にあった(少し蟲師のギンコに近い)。
しかし、本作では完全に彼岸にいるキャラになっちゃって、人間臭さのような甘味がなくなってしまった。
そして、本作の一番の弱点は、最初の「化猫」みたいなドラマの強烈な熱が失われてしまったという点である。
まぁ、あんなキツイ話を何回もやられたら辛いというのもあるだろうが、おんなじパターンで事件解決な時代劇スタイルに落ち着いてしまった感は否めない。
そこで、本作は強烈だったビジュアルをより強化する方向に進んでしまったように思える。
確かにビジュアルの過剰さ、意表をついたスタイル、グロテスクなほどの絢爛さは他に類を見ないだろう。
しかし、どこか虚しい…。
結局、アニメの映像表現においてそれ自体が目的化することに対する違和感が私にあるからだろう。
確かに鮮やかな職人の技がある。しかし、アニメの映像はそれ自体が独立したものではない。
アニメにおける真と理。それは、ストーリーやテーマであり、キャラの想いではなかろうか?。それらが上手く伝えることが目的であり、映像はあくまで媒介者である。
故に、伝えたいことの内容如何が一番大事であり、そこに不備があればいかに綺麗な映像を重ねたところでその瑕は拭えない。
アニメはイラストの連続ではなく、物語やキャラが第一である。だから、やたら誉め言葉が映像ばっかの作品は眉に唾しなくてはならない。
本作もそういったビジュアルの職人芸を見る作品としては素晴らしいが、正直コクや深味には少々欠ける作品になってしまった、といったところが私の総評です。勿体無いオバケが出るぞ!な感じです。
ちなみに最初の「化猫」は本当に傑作なので、短編映画を見るくらいのつもりで是非ご覧ください。私としては☆4.6くらいの価値は優にあるかと思います。