「今、そこにいる僕(TVアニメ動画)」

総合得点
69.0
感想・評価
286
棚に入れた
1458
ランキング
1932
★★★★☆ 3.6 (286)
物語
3.9
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

芝生まじりの丘 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

夕日。

偶々このアニメの鬱シーン?の切り取りを見て興味を持ったので視聴。
1999年のアニメだそうだが、どこかその年代以上の古さを感じる。

私はこの年代のアニメについては基本的に時系列に疎いので、すこしこのへんの時系列を追ってみる。
1984年:風の谷のナウシカ
1990年:不思議の海のナディア
1995年:MEMORIES
1995年:エヴァンゲリオン
1996年:魔法使いTai!
1998年:カウボーイビバップ
1998年:カードキャプターさくら
1998年:ネオランガ
1999年秋:今、そこにいる僕
1999年秋:無限のリヴァイアス
1999年冬:星界の紋章
2000年:フリクリ
....

こうやって見ると、このアニメの時代にそぐわない垢抜けていなさが浮き彫りになる。OPなんて見るとびっくりするだろう。それに、昭和の少年漫画みたいな、気恥ずかしくなるような素朴な、純朴なものがこのアニメの核にはある。

でも良いアニメだ。ジブリ的だ、というのは褒め言葉にならないかもしれないが、本当にナウシカだとかで見つめていたものを、ずっと追い続けたんだ。それに純朴なものを丁寧に料理している。
(より具体的にはナウシカと大砲の町とナディアあたりを混ぜた感じか)

ストーリーは率直なものだが、良く展開して、1クールきれいに使い切ったという印象を与える。ある種むしろ映画的にも感じるところがあるかもしれない。
幾ばくか寓話的すぎる嫌いもあるし、大好きなタイプの作品ではないが、見終えてみるとなかなか感慨深い。それは世界観に手を抜いていないせいだろう。

あとララルゥの内包する諸々が大好き。
夕日が美しい。


【まだ見ていない人のための紹介】
ディストピア的な城ヘリウッドとそれを取り囲む広大たる異世界に転移した少年シュウと、狙われる謎の少女ララルゥ、気の狂った小心者の為政者ハムド、ヘリウッドの少年兵たち、そして世界のお話。反戦的な寓意を含んでいる。主人公のキャラデザや一話の雰囲気などは児童向けアニメ、といった感じで、実際おじさんが作った児童向けアニメ、という色もあるのだと思う。
演出や、キャラクタ設定や諸々はその時代以上に純朴さがあり、人によっては現代、その純真さを直視するのに耐えられないかもしれない。が、素朴な演出に味を感じられる人はこの作品を愛することができるだろう。また、全体としては穏やかな希望に溢れた作品だが暗めのトーンも強調されるため、そういったカラーが合うかどうか、というのもポイント。
一話で見える夕日を美しいと素直に関心できるかが、案外分かれ目かもしれない。

【反戦的な色彩に関して】
{netabare}
これは絶対極左アニメだ、というレッテル張りがされるだろうな、と思ったらやっぱりされていた。より具体的には「憲法第九条改正反対キャンペーンアニメ」と言われてしまっても仕方ないかもしれない。この作品では「戦争完全反対者=正しい、善人」、「戦争肯定・妥協者=愚か、悪人」と言わんばかりなのだ。それに下手をしたら「少年兵」だとか、「戦争犯罪」だとかそういった問題と、「戦争の是非」という問題を混同させてしまう。ここで思想的に食い違いの大きい人間は見ていて腹が立つだろう。ただ「戦争が人を殺す」という描写は使い古されたものの真実だろう。
まあただ正直このアニメを作っている世代も、見ている世代も、今、これからの世代も基本的に戦争を知らないのだ。何を言っても絵空事である。これはこのアニメに限った話ではないが、一度も人を殺したことのない人間が、「この状況では殺した方が道理にかなっている」だとか言うのはちょっと気持ちの悪いことだ。まあ戦争反対者も現実をわかっていない点では変わらないのだけど。

確かに俺も思想的に根底から相反するアニメは腹立つからまあそういうことはあるだろーな、と思う。
でも単なるプロパガンダアニメ、と言っちゃうのはかわいそうだよ。
{/netabare}

【なぜ謀反が起きないか】
{netabare}
なぜヘリウッドで謀反が起きないか。一応この辺は、「兵士たちは少年からそのように教育されてきたから」だとか、ミルグラム実験的な人間の心理的弱さで説明できます。がその辺の、「謀反を起こさない人々」を十二国記のようにもう少し扱っても面白かったろうと、個人的には思う。ヘリウッドの人々はみんな矛盾の塊でそこはもっとほじくれると思う。まあそこをこっちで想像するのも楽しいか?
{/netabare}

投稿 : 2020/01/31
閲覧 : 295
サンキュー:

4

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