takato さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
エンタメの宮崎、日常系の高畑。小川は優しく緩やかに流れる。
世界名作劇場の、そして高畑さんの代表作の一本。映画では宮崎の名声の方が赫々たるものがあるが、元々テレビでやっていた頃は高畑さんの方が声望が高かった。映画という短い時間の中での波乱万丈なら宮崎さんだが、長いスパンの中で緩やかに流れる昔のアニメでは高畑さんの方が向いているかも。
本作は有名な作品だが、実際に見てみると本当に話がない!。一年もあるのに大きな出来事なんで何にもなし!。途中で大人に成長したりするが、本当に大きな出来事はなく、「神は天にいまし、全て世は事もなし」である。
それなのに何故この物語に皆が魅せられるのか?。それはまずアンのキャラクラーにつきるだろう。とにかく想像力過剰すぎ、すぐに感情が激して大仰な台詞を喋りちらかし、見た目も声も典型的な美少女じゃなくて個性が溢れている!(元々はナウシカでお馴染み島本須美さんの予定だったらしい)。
とにかくエキセントリックで、名作と言われる作品のイメージである教科書的な匂いがしない子だが、見ていく内にその身に宿している哀しみと優しさがじんわりと心を暖めてくれる。
アンが貰われていく先のマシューとマリラが老夫婦じゃなくて、老兄妹というのも家族が一番!より、家族になっていく話の方が好きな私好みである。昔ながらの背景美術と淡い水彩のような味わいも素晴らしい。
大きな筋はなくても、本作は変わらいように見えるだけで小さな変化が積み重なって、その波紋が広がって合わさる内に大きな波となるという「aria」と同じテーマ性と精神が活きている。世界に対する大いなる愛が作品を満たしているのが感じられる数少ない作品であると言いたい。だからこそ、終盤の展開には大きく胸を打たれる…。悲しみも優しさも含めて世界は出来ている。
現代の早過ぎて焦り過ぎな気味のある作品ばかり見ていて疲れたら、本作のような穏やかで滋味豊かな小川のような流れに身を委ねるのもまた良いもの。古くても良い物は良い、新しくても駄目なもんは駄目。「そうさのう…」。