takato さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
細田さん、この頃を思い出して…。私の細田守論。
夏の日、そんなに期待せずに本作をトボトボ歩いて見に行った日が、まさか特別一日なろうとは夢にも思わなかった。見終わってからの帰り道、同じ道がまるで違って感じるほどの感動の余韻を味わいながら、トンデモない才能に出会って
しまったという予感に期待に震えたのを今日も忘れられない。その後、細田さんのテレビ時代の作品やデジモンを見て、益々その才能に惚れ込むようになったのである。
何故か「サマーウォーズ」以降の作品で語られがちな細田さんであるが、正直大作を任されすぎて、本作以前の繊細さが持ち味だった作風から外れてしまっているように感じられる。本作ラストにおけるいなくなり演出の切れ味のような、絶妙な詩情とセンスを感じられるシーンが最近見れないのは、残念でならない。
生き生きとした影なし作画、美術の妙、切なくも愛おしいストーリー、まさに一夏の思い出として見事に調和し、ちゃんと季節を感じさせてくれる。こういった季節感も最近の作品では見られないのが残念である。
正直これより良い作品は沢山存在するかもしれない。しかし、個人的な本作との出会いの感激と、細田さんに対する複雑の気持ちもあって、俺が推さなきゃ誰が推すな気持ちがあるので、超高評価です。
「おおかみこども」は割と好きなほうだったのだが、「バケモノの子」や「未来のミライ」は最悪と言わざるをえない出来栄えだった。細田さん原点を見失っているように思えてならない。凄いポテンシャルを持っているのだから、自分自身を取り戻してほしい。
そもそも、自分のスタジオを持って大作映画で国民的な作家に…というのはなんだかんだいってパヤオ以外には無理な偉業だと思う。パヤオというロールモデルが有るから他の人もポスト宮崎の名の元にその路線に進みがちだが、自分の脂質との兼ね合いを考えないといけない。
そもそも細田さんの資質って実は押井さんに近くて、エンタメ王道なオリジネーターじゃなくて、王道な作品に玄人好みな味わいを加えるのが上手いアレンジャーだと思う。
細田さんが東映時代に演出として素晴らしい仕事をしてきたのは、「おジャ魔女」、「デジモン」、「ワンピース」といった王道も王道な作品であった(ウテナやスラダンもやってるが)。押井さんもキャラ立ちした作品、「うる星」や「パトレイバー」や「攻殻」といった力のある原作と組んだ時こそ力を発揮してきた。
誰もかれもが自由裁量を任されてエンタメ王道作品を作れるわけじゃないし、実はそれが一番難しいことだって年を経てだんだんわかってきた。細田さんは脚本は実力のある他人に任せる。或いはスタジオは解散して一演出家に戻り、普通にテレビの演出や監督で辣腕を振るい、時が満ちたら既存のスタジオで映画を任されるってオーソドックスな道に戻った方が良いような。やはり川村元気は害悪!、よくわかんだね。