takato さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
小綺麗な作品より胸を打つ作品を…。素晴らしい作画とは何なのか?。
京アニ作品だけに限らないが、画面が小綺麗な作品が美しい感動的な作品ってのは違うだろうと言いたい。
アニメはあくまで物語を、もしくはキャラクターの心情を表現するのが本質であって、映像や音楽はそれを支える要素に過ぎない。
短い感動的なエピソードを連ねていくスタイルは、「ブラックジャック」や「花田少年史」など過去にも沢山ある。しかし、それらの名作に比べちゃうと単純にウェルメイドな上手さや、感動させる訴求力に少々欠ける。故に映像が綺麗でも、映像が綺麗だなぁ~の域を出ない。
最近やたら映像と音楽の力が評判になる作品が多いけど、それは一番わかりやすい刺激だからな気がする。なんとなく良い話げで、あとは映像と音楽の勢いで持ってけばいいじゃんでは無理がある。感動には論理的な構築無しにはありえない。
本作がイマイチ感動に至らないのは、哀しみの弱さと主役ヴァイオレットのキャラがイマイチ置きどころの悪さにあるように思える。
感動的な作品は、ビジュアルよりまずなりより哀しみが重要である。共感できる圧倒的な痛みがあり、それを超える愛が作品を包む時に思わず涙してしまうものだ。そのポイントを抑えれば複雑なことや高度な事は必ずしも必要ではない。
そこで同じくらい重要なのは、喪失の痛みは簡単に消えるほど楽な物ではないという点である。決してそれは戻らないのだ。しかし、それでも前に進める!、というように止まっていたキャラクターの心が動き出すのが描ければいいのだ。苦味と甘味が共存した時に切なさが産まれる。
手紙は喜びだけでなく、哀しみも伝えねばならない。戦争を経験したこの世界ならそういうケースがあって当然だろう。軍人出身のヴァイオレットなら、自分が関わった戦闘に関することだってあってもおかしくない。
そういうどうしよもできない哀しみも描いてこそ、人間は愛だけでなく哀しみも、酸いも甘いも噛み分けるようになってこそ成長といえるだろう。「この世界の片隅に」という見事な例が近年にあるではないか。
そしてヴァイオレットのキャラだが、軍人部分のエピソードが雑味になってしまっているように思えた。セ○バーじゃないんだから、なんでそんな強いの?とか、PTSDや戦場しか知らないにしてもロボのように感情を知らない設定には少々無理があるなぁ…とひっかかる部分が多い。それこそ戦争に関わってるなら、それこそ「この世界の片隅に」じゃないが、やりきれなくてどうしようもない面も描かなきゃアカンやろ。
一層、本当に機械人形のキャラが人間と触れあって感情を学ぶ、といった王道路線で良かったような。世界観に対して技術レベルがええ加減なのはアニメならよくあることだし。
少佐との愛も、少佐の立場だとヴァイオレットに対する想いはかなりいりくんだ複雑な物にならざるをえなかっただろうが、それを描けてるとはあまり思えないし、話の中心とも言いづらいのがまたひっかかる。
要するに小綺麗だが、イマイチ感動と印象には残らないというのが総評である。京アニは、「らき☆すた」以降では「声の形」を除いて強力な原作とがっぷり四つに組まなくなってしまってからこの傾向が強くなってしまったというのが私見です(元々、良い原作を丁寧にアニメ化するのが特徴の会社なんだから、原作の選定が重要だった)。
文章だけではアレなんで、良ければ私の「号泣アニメ」ランキングを参照してください。感動エピソードとされる10話だけど、「よりもい」11話のメールの使い方の見事さに比べちゃうとねぇ…。評判が良すぎてハードルが上がっちゃうと良いことあまりない。