takato さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
麻雀知らない人間のアカギ評。「無敵の人」としてのアカギ。
私は麻雀ができない。しかし、本作が大好きである。それはカルタも競技ダンスも知らないが「ちはやふる」や「ボールルームへようこそ」が好きなのと一緒である。
ルールを詳しく知らなくても体験したことがなくても、夢中になってしまうぐらいのキャラやストーリーの底力なくして名作とはいえないというのが私の持論である。
本作においては麻雀に詳しくなくてもその心理戦の面白さ、そこから浮かび上が各キャラの人間性の妙!、これらだけでご飯が三杯いける。本作はアカギの原作の面白いところを丁寧に映像化している良い職人の冴えが光っている。派手でも奇を衒ってもいないが、底光りするような自力がいきている。
同作者のもう一つの代表作であるカイジが、クズの中にも光る物があるというヒューマニズム的な物語の系譜なら、アカギは博打というどたい不条理な世界、同時にそれは現実の縮図でもあるのだが、そんな中で孤高に生きる「無敵の人」を描いたアウトサイダーの物語の系譜だろう。
「無敵の人」は、失う物がない自棄糞気味な人間として使われるのが本来の意味だが、アカギはそれをより深化させた人物といえる。彼は何も築かない、彼は何も期待しない。世界は不条理であり、築いたところで簡単に崩れ、抱いた希望は水疱と化す。だからといって彼は取り乱さずに平静と不条理の中で生きる。彼は一瞬一瞬を賭け、その儚い生の充足に静かな微笑みを向けるだけで生きていける。生きることを真に愛しているのは果たして常人か?、それともアカギか。
彼は何一つに寄りかからず、たった一人でも確かな生を生きているその生き様は冷たく光る月のような何か。別作品だがアカギの生き様を一番評した言葉は「無頼伝 涯」の結びの言葉に尽きると思う。
「孤立しろ!」