takato さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
社会という荒野を仲間と生きろ!。狂った世界のマトモな狂人。
文豪バルザックは、現実と並び立つようなもう一つの世界を「人間喜劇」として膨大な巻数で構築するという唯一無二の夢に向かって邁進した狂気の人であった。しかし、彼の喜劇とは皮肉な意味で、彼の世界の根底にはペシミスティックな前提が存在していた。彼がリアリズムを志向した段階でその沼へとはまりこんでいたともいえる。彼の夭折はその点で必然だったともいえる。
私は本作こそラノベ版人間喜劇だと言いたい。バルザックがパリを中心に膨大で強烈なキャクターたちの世界を構築しようとしたように、本作では池袋を中心に狂気のキャラクターたちが跳梁跋扈している。
しかし、本作とバルザックの違いは根底に健康的なオプティミズムが存在している点にある。本作は数え切れない程の暴力と、悲劇や犯罪行為が描かれている。普通なら暗くて深刻で救いがない話になりそうだが、本作の基底音は「バッカーノ!」と同じく陽気さと溢れ出るようなエネルギーである。
本作に登場する人たちは狂った連中ばかりだし、法を逸脱もしている悪党ばかりである。しかし、彼等はクズじゃない。法を犯してなくたって上手いこと立ち回ってるだけのクズより彼等は遥かに倫理的であり、真っ当な精神の健康さを有している(一部例外はあるが)。
アウトサイダーとしてのヒーローという少年漫画にも通底していたテーマを彼等は有しているし、なにより膨大なキャラクターの誰もが輝いてること!。大量のキャラたちがそれぞれの光をちゃんと放っている。これは当たり前のようで並の筆力ではとてもできることではない。ラノベだと出落ち的な薄っぺらさが目立つことが多いが、本作のキャラたちは噛めば噛むほどに味でが出る。
作品としては、豪華声優で一番話題になったのは1期にあたる本作だけど、内容的には2期以降も負けてはいない。1期から時間を開け過ぎちゃった感じでそれ以降は話題性には欠けたが、そっちも面白いで是非見て頂きたい。
あと、個人的には成田先生の次回作にご期待ください!で、「針山さん」シリーズや「越佐大橋」シリーズ、「バッカーノ」の続きでもいいからアニメ化よろです。「なろう系」とかもういいから、もっと有望な原作をアニメ化してよ。