「キラキラ☆プリキュアアラモード(TVアニメ動画)」

総合得点
66.4
感想・評価
41
棚に入れた
169
ランキング
2892
★★★★☆ 3.6 (41)
物語
3.5
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.7
キャラ
3.8

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ネタバレ

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

『一番素敵なことは、救ったと思った相手に救われることだよね』

本作について語ることは、私がアニメを見る理由について語ることになるので同時に語ってしまいたいと思います。


まず第一にアニメに求める物とは?、それは間違いなくキャラでしょう。魅力的な立っているキャラが活躍する、これこそアニメだけじゃなく漫画や映画を見る理由でしょう。


では、魅力的なキャラとは?。本作の場合はプリキュアですから当然可愛くなくてはならない。


本作はプリキュアの中でもデザインが本当に素晴らしく、見事にキャラごとの特徴を描き分けられている。


アニマル×スイーツ、というモチーフが二つもあって縛りが多いことが、かえってそれぞれの特徴をハッキリさせることに繋がっている。


しかし、見た目が可愛いだけじゃ小動物の類いと変わらない。美少女動物園では1年も愛情をもって見続けられない。


ではキャラを立てるにはどうするか?、感情移入できるようにするにはどうしたらいいか?。


それは現実にも存在して、共感しうる悩みや問題をキャラが抱えて、それを上手に展開し、納得できる形で解決していく成長を描けばいいのである。


これが出来ないと絵空事のキャラと話になってしまい、他人事なレベルで終わってしまう。


コミュ症気味でボッチなオタクの、ひまりん


お嬢様だけどロックスターを目指し、夢を追って戦い続ける、あおちゃん


最初から何でも持っているが故に、何にも本気になれないで退屈しきっている、ゆかり


本作ではこの三人のエピソードは本当に良くできている。特に、ゆかりは悪堕ちしかねない危うさがあって他にない魅力があった。


彼等の成長を見守ることが最大の喜びになる。これこそ、一年続く子供向けアニメを見る醍醐味ではなかろうか。


そして第二にはテーマの深さが重要だろう。そこがあんまりなくてもエンタメとして最高なら大きな不満はないが、本当に傑作かどうか?となるとそこは外せない。


テーマが言ってみましたレベルの浅薄で、こちらの範疇を全然出ないと作品が薄っぺらくなってしまう。ちゃんと現実に繋がっていて、より深い価値や認識を示してくれると素晴らしい。


本作のテーマは「大好き」である。本作でプリキュアたちが守る物は、みんなの、そして自分たちの「大好き」なのだ。


本作における「大好き」とは、色んな物を象徴している。それは、夢や希望だったり、特別な意味や価値だったりする。即ち、それらは日常的な生活のレベルを超えた、より重要な何物かを示している。


これらは、無くてもただ生活していくぶんには不足はない。故に本作ではスイーツをモチーフに選んだのだろう。作中でも触れられているが、スイーツも生活に不可欠ではない。


そして、テーマをよりハッキリ打ち出すには正反対な価値観のキャラをぶつけるのが有効だ。故に、本作のラスボスは「大好き」のない世界、心が存在しない、争いが無く全ての人が淡々と社会の歯車としてのみ存在する世界を造ろうとする。


ポイントは、ラスボスの言い分もちゃんと一理ある点である。大好きがみんな異なるから争いは絶えない、というラスボスの主張は現実にちゃんと繋がっている。


そして、47話「キュアペコリン、出来上がり!」(タイトルでネタバレしとる!)な回で物語の盛り上がりと、テーマがこれ以上ないくらい示される。



敗北したプリキュアたち。世界はエリシオが理想とする争いの源たる「大好き」が無い灰色の世界となる。


淡々とただ灰色な顔で生活と仕事があるだけの世界。特別な価値や意味なんて無い世界。況してや、夢や大きな目的なんて存在しない世界。


それは明らかに夢や理想を捨ててしまって、ただ生活や仕事に追われるだけの灰色の繰り返しを生きる現実の象徴。


そのことを強調するように「大好き」の象徴である変身アイテムをプリキュアたちは捨ててしまう。


そんな世界を覆すのがプリキュアたちではなく、プリキュアたちを見守ってきた女児の代表のような存在である無力な妖精ペコリンなのが見事すぎる!。


プリキュアたちに「大好き」の大切さを教えられてきたペコリンが、プリキュアたちに「大好き」の大切さをを思い出せる。これは制作者と受け手の女児たちの関係のメタファーじゃないか!。


守っていたつもりが、いつの間にか守られていた。教えていたつもりが、いつの間にか教えられていた。


喪いかけていた想いが再び蘇る。子供たちのために、なにより自分自身のために、夢や理想を守るために戦ったのは無駄なんかじゃなかった。


「ごめんね!、捨てたりして。わたしの大好き…」


人は、ただ社会の歯車として生きているだけで良いなら、確かに「大好き」なんて不要かもしれない。


しかし、人は社会の歯車じゃない。人がより前に進んでいくためには、真に人間の生へと飛躍していくには目的や価値、即ち「大好き」が絶対に必要なのだ。

 
そして、それはいつの日にか最も隔たった者たちですら結び付ける日が来る、という願いで本作は終わる。


灰色の日常に埋没して日々を過ごしていると、ドンドン世界や人間の価値や意味を見失いがちである。そんな時に、雷のように日常を超えた価値の輝きを見せてくれる作品。そんな稀有な体験を求めて、今日も私はアニメを見続ける。

投稿 : 2024/08/19
閲覧 : 478
サンキュー:

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