yuugetu さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
TV版で解らなかったという人にもオススメ〈追記あり〉
2019年11月29日公開のアニメ映画で、既に配信にて販売も始まっています。TV版から再構成した内容となっていますが、印象が結構違いました。
1月から地元に来てくれて嬉しいです。
一度しか見ていないため、とりあえずの簡単な感想。
(そういえばお母さんと小学生くらいの男の子女の子、50代くらいのお父さんと成人前くらいの男の子の二組の親子連れが見に来てました。あとは色んな年代の男性客。)
元々作画も綺麗でしたが、メカが一部修正されたり、ストーリーの再構成をしているために書き直された箇所や追加されたシーンもあります。
音楽の使い方はシーンに合わせて細切れにされた部分もあって、TV版の方が好きだったかも。
不思議なもので、尺は短くなった筈なのですがとても解りやすく飲み込みやすい。TV版もあーでもないこーでもないと頭を捻るのは楽しかったですけど、映画で一度しか見なくてもほぼ問題ない作りになったのではないでしょうか。
アイーダ役の嶋村侑さんがイベントで「再編集だと思って欲しくない」と仰っていたようですが、私もそう思います。
TV版とは伝えたい所が違うから、描き方と切り口も違うのですね。
【全体の印象】
キャラクターの描き方が変わったことで、物語の流れが解りやすくなっています。
{netabare}
全体的にベルリとアイーダの心の動きにフォーカスしたことで物語が理解しやすくなり、世界観の説明も不自然にならない範囲で会話に入れ込んでいました。
当然カットされたシーンもあるわけですが取捨選択が非常に上手く、追加シーンや書き直されたシーンの意図も明確で、例えばアイーダの心情を表現するためにTV版とは服装を変えたりもしています。
ベルリとノレドの様子からスコード教の教義がいかにキャピタルの住人の心に深く根差しているか、アイーダの様子からカーヒルの言葉がいかに重いものだったかがよく解ります。そのため若干の極端さも見られ、教え込まれてきたことからの脱却が今後彼ら成長に繋がるだろうと想像できるのですね。
子ども達の生命力を感じるシーンはあまりカットされていませんから、若者のそれまでの常識からの脱却、あるいは世界をより広く認識して常識を再度捉え直すことに注目して欲しいのではないかと思います。
ベルリとアイーダだけでなく、周囲のキャラクターの感情や思考も明確になりました。
個人的には、子どもを心配する大人の気苦労を見せてくれた艦長と長官が凄く好き。艦長がアイーダを諭すシーンがしっかり追加されていて良かったです。
それから、ちょっと印象が変わったのがクリムですね。
一部シーンがカットされたためでもありますが、何よりもベルリとアイーダをメインに据えたことによって、クリムははっちゃけた優秀な若者という印象から若いが優秀な社会人という印象になりました。
ラライヤへの対応もカットされていないため面倒見の良さもより感じられます。
{/netabare}
【難点というわけではないけれど】
いくつかの専門用語に説明が無いのが気になったかな。
今作で台詞の中で解りにくかったのはスコード教の教義であるアグテック、被差別民クンタラぐらいでしょうか。他は会話の流れで理解できると思いますが。
それから、宗教と差別について。
{netabare}
スコード教と登場人物達の宗教観をすんなり受け入れられるかが、この作品を楽しめるかどうかの分かれ目になるかもしれません。
地球をボロボロにした西暦や宇宙世紀を経て、同じ愚を犯さないために必要以上の技術の進化をタブー視するのがスコード教です。スコード教はフラットに見ると地球の存続のためにある。もちろん人の心の支えである宗教・信仰としてもあるでしょう。それを「そういうもの」と受け入れられれば楽しめるかなと。
今時あまりいないと思うんですが、宗教に関して極端なイメージを持っている人は辛いかな。
あと、ジェンダーマイノリティをさらっと入れてます。
チアメンバーの中に実は男の子が一人いて、その子には彼氏もいる。ファンの間だと有名ですが、ジェンダーに関しても大分おおらかな社会になっていることの表現だと思われます。わかりにくいけれど、ただ表面的な描き方をしないのが良いですね。
TV版だと「チアガール」って呼ばれてましたが、映画では「チアメンバー」に。よりボーダーレスな表現になりました。
その一方でクンタラ差別は残っている。西暦にも宇宙世紀にも存在しない理由での差別なのだそうで、対照的に業が深い。そういう所も興味深いです。
{/netabare}
社会情勢を含んだ物語を読み慣れている人には、素直にお勧めできそうな映画となりました。
もし世界観がわからなくてもキャラクターに注目すれば楽しめる作品だと思います。
(2020.1.19)
【2回目感想を追記】
Ⅱが2月20日公開と決まったのだから最後に次回作の予告を入れればよかったのでは…。是非劇場で予告見たかったです。
TVアニメの時に何がわかりにくかったのか、個人的に感じたこと、改善された所など。5話分を一気に見られるのも良いのかもしれません。
世界観がわかりやすくなったのは見てもらえればわかると思うので、主にキャラクター描写について。
{netabare}
・キャラクター達に本音と建前があることをわかりやすくした
全てのキャラクターに本音と建前があることが、感覚的にわかるようになったかな?感情からの言動と、立場や責任からの言動が別だということですね。
劇場版だと、後述のアイーダとドニエル艦長のシーンで「こういう作品ですよ」と明示されたと感じます。ベルリとアイーダの独白が追加されていることもその理解を裏付けてくれます。
大げさに言うとGレコは他のアニメのように台詞を真に受けてはいけなくて(苦笑)、総合的にキャラクターの行動・考え方・性格・関係性を見なければなりません。台詞はあくまでその状況において発言した考えの断片でしかない。
私が劇場版でクリムの印象が変わった最大の理由はそこが理解しやすくなったからだと思います。
・アイーダの立場と感情
私はまず、TV版ではアイーダがカーヒルと恋仲であること自体がネット上の感想などを見るまでよくわかっていなかったです。回想シーンで一緒にいるところを見ても甘い雰囲気がそれほど無くて、クリムもその場にいるから仕事中という印象。
他のアニメでも姫様と呼ばれる人には2種類いて、作品によってどちらを登場させるかは違います。ちやほやされる立場なのか、責任を求められる立場なのかが、TV版Gレコではよくわからなかった。
富野作品では「責任を負う姫君」がほとんどらしいけど、初見でこれを何の描写も無く理解しろと言われても無理ですよ。少なくとも私は理解出来ませんでした。
映画版だとそれらを明確にしています。
5話分を一気に見られるせいもあるのですが、アイーダがカーヒルを理想化していること、アイーダの余計な行動が結果的にカーヒルを死なせたこともわかりやすくなりました。
ドニエル艦長からは「姫として義務と責任を果たせ」としっかり明言されている。TV版でも艦長から釘を刺されるのですが、劇場版では納得しないアイーダに対してもっと噛んで含めるような内容になっています。
感覚的にわかるようになったぶん、私はアイーダがあまり好きではなくなりましたw 現時点では私の嫌いなタイプですわ、この子。
・ベルリの行動
私はこちらはTVで結構理解できていたと思います。
職場に男子学生が何人かいたせいもあるのかな?私は今どきの、良くも悪くも器用で自分の感情を隠すのが上手な男の子だと思いました。
アイーダを好きになった、カーヒルを殺した罪滅ぼしをしたい、アーミィへの拒否感がある、海賊を装ったアメリア軍の情報収集をして戻ろうなどちょっとした台詞から何となくわかっていたんですが、劇場版はそのあたりもさらに明確化しています。
母親に心配されていることを理解していない感じもまだまだ子供ですね。
ノレドの台詞が多くなっているのもベルリを理解するのに一役買っています。ラライヤの面倒を見ながら、ベルリの気持ちも明確化している。二人のために後をついて行くのがノレドの人間性で、TV版だと後で段々変わっていきますね。私はノレドが一番可愛い女の子だと思ってます。
{/netabare}
(2020.2.2)