かがみ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
マルチチュードの想像力
本作の舞台となる学園都市はICTやAI、再生エネルギーを駆使する未来都市というユートピア的側面と、厳重な監視社会、苛烈な格差社会というディストピア的側面を併せ持っている。
これはグローバル資本主義や環境管理型権力といったシステムが支配する現代社会の構図とパラレルに捉えることもできるであろう。
このように捉えた場合、木山春生や布束砥信は己の正義からシステムに叛逆する点でテロリストの立ち位置に近く、テレスティーナ=木原や有冨春樹らスタディは己の欲望からシステムを利用する点でカルフォルニアン・イデオロギーの立ち位置に近い。
では、こうした中で御坂の立ち位置はどこにあるのか。本作前半「妹編」での御坂は事態を一人で抱えこんでしまい学園都市の闇の中で孤軍奮闘するが、後半「革命未明編」での御坂は前回の反省から皆に事態の真相を打ち明けて助力を乞う。
このような前後半のコントラストが表すように、本作が強調するのは異なる他者間における連帯の可能性である。そうであれば、本作における御坂達の立ち位置は、アントニオ・ネグリ/マイケル・ハートが「〈帝国〉」において提唱した「マルチチュード」に相当すると思われる。
祝祭感に満ちた最終話が象徴するように本作が打ち出すメッセージは世界の限りない肯定である。こうした想像力はゼロ年代以降緩やかに前景化してきたコンサマトリー的あるいはクラスター的な幸福感とも共鳴しているように思える。