ちゃんもり さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ジャンプアニメの新時代
皆さんは、「週刊少年ジャンプ作品のアニメ化」と聞いて
どのような感想を持つだろうか。
本作品の視聴レビューに入る前に、私の個人的な
「ジャンプアニメ」というものの捉え方を記載しておく。
少々長くなってしまったので、読むのが面倒な方は
読み飛ばして頂いて構わない。
{netabare}
私のような中年に差し掛かった人間からすると、
上記の触れ込みを聞いただけで、もう全く期待できない・・・
そんなイメージが付きまとってしまう。
北斗の拳、聖闘士星夜、ドラゴンボール等、少年ジャンプは
数多くのアニメ化作品を輩出してきた。
しかしその多くは長期連載作品をなぞるだけの長期化番組となり、
およそアニメーション作品としてのクォリティは高いと
言えるものではなかった。
まだアニメを観る目が肥えている訳でも何でもない小学生の私でさえ、
原作に追いついてしまい毎週ひたすらBGMと風景描写だけを垂れ流す
ドラゴンボールには辟易としたものだ。
特に2000年以降、1~2クールの放送枠に抑えた
高クォリティのアニメ作品が急増する中、「ジャンプアニメ」は
一歩も二歩も遅れを取っていたと言わざるを得ない。
私もここ数年で楽しんだのは「ジョジョシリーズ」と
「銀魂」くらいで、殆どの「ジャンプアニメ」というものを避けてきた。
ところが、である。
2019年という年は、ジャンプアニメの大革命の年であったと感じる。
この年に放送された「鬼滅の刃」や「Dr.STONE」、
「約束のネバーランド」は、間違いなく覇権を取ったと言って良い。
上記3作はそもそも原作からして、これまでの少年ジャンプ作品には
あまり見られなかった作風である。
これは能力バトルやエロ要素等の「テンプレ要素」に頼り切っていた
週刊少年ジャンプが、作品としての「純粋な面白さ」で
勝負し始めたという意味で大いに評価できる。
そして上記3作品のアニメ化は一見しただけで、これまでの
ジャンプアニメのクォリティとは明らかに一線を画している。
原作を買ってもらうための広告的意味だけでなく、
「アニメ作品として純粋におもしろいものにしよう」という
並々ならぬ熱意が感じられるのである。
{/netabare}
さて、本作「鬼滅の刃」は、2016年11月から週刊少年ジャンプにて
連載開始されている。当時既に少年誌など読まないオッサンに
なってしまった私ではあったが、何気なくコンビニでパラパラと
立ち読みをする中で、本作の昨今あまり見られない濃いめのタッチと
ノスタルジックな世界観には「おやっ」と思わせられるものがあった。
それ以降、原作を追いかけることもなかったが、その当時の
引っ掛かりが強く印象に残っており、視聴の機会を得た。
まず驚くべきは、「ufotable」が製作を担当している点である。
ufotableと言えば「Fate」関連のアニメ作品を数多く担当し、その
TVシリーズとは思えないレベルの美しい作画力が印象に残っている方も
多いと思う。
本作でも、主人公炭治郎の水の呼吸の技のエフェクトに見られるような
「マンガ的」であるが故に映像化が難しそうな原作のタッチを、
見事にアニメーションとして見ごたえのある映像に昇華している。
緊張感のあるバトルシーンもさることながら、
コミカルなシーンの描き方は一転愛らしく、
緩急のバランスの良さが飽きさせない視聴感に繋がっている。
アニソンシンガーの域を超え正真正銘の歌姫となったLISAが
務めるOPテーマ「紅蓮華」は、厳しさに満ちた世界で何度も挫折から
立ち上がる炭治郎の姿を力強く歌い上げ、必見のオープニングだ。
紅白歌合戦のLISAの熱唱も記憶に新しい。
声優陣に於いては花江夏樹、松岡禎丞、下野紘がメイン3人を務める。
今や中堅に差し掛かり、最も脂ののった3人だ。
その他にも櫻井孝宏、早見沙織、関俊彦、大塚芳忠といった豪華な
メンツが脇を固める。
監督に外崎春雄、劇判に梶浦由記。
アニメ作品を商業的に成功させる上で盤石な布陣であると言って良い。
観終わってみれば、2クールしっかりと原作の良さを拾い上げ、
26話でのストーリーの切どころも見事だった。
既に現在、劇場版「鬼滅の刃-無限列車編-」の2020年公開が
告知されている。
TVシリーズが十分に成功したと言える状況なだけに、この劇場版も
実に商売上手だなと思いつつも、大いに期待に胸を膨らませてしまっている。