「ID:INVADED イド:インヴェイデッド(TVアニメ動画)」

総合得点
76.5
感想・評価
429
棚に入れた
1534
ランキング
706
★★★★☆ 3.6 (429)
物語
3.7
作画
3.4
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

TaXSe33187 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 5.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

メタ思考の具象化

現実の殺人事件解決のため、犯人の無意識世界に潜り謎の解明を目指す物語

無意識世界のルールや謎を追う「名探偵」の視点と、そこで拾われた情報を分析して現実の犯人の動向を推理する視点、実際に現場で犯人を追う視点
この3つの視点が互いに影響し合うことで、いつ状況が変化するともつかない緊張感を生み出している

2話までを続けて視聴したけど、今の所非常に面白い展開
世界ごとの謎解き、犯人を追うサスペンス、殺人犯を生み出す謎の人物、そして「名探偵」そのものにも謎が隠されている
SF的な要素は多分に含まれているものの、主題が謎解きの一点に置かれていることで話を追いかけやすく、設定がシナリオの邪魔になることもない

視聴継続は決定しているけど、気になるのは2点
1点は単純に期待値を上げすぎてしまい、後半尻すぼみになるのではないかという懸念
見るべきテーマが一通り提示されているので大丈夫だろうけど、最初の事件のインパクトを超えるものが出てきてくれると嬉しい

もう1点はOP曲
EDも正直好みではないんだけどあちらはまだ聴き応えがある
ただ、OPはカラオケ感が強くて、好き嫌いの範疇にないとこで拒否感がある
挿入歌は意外と気にはならなかったし、その他BGMも違和感なく聴ける
だからこそOPの落差がより際立ってしまっている印象

全体的な音楽は割と好きなんだけど、今後視聴を続けることを思うと…という感じ
視聴意欲を挫く曲を毎回初っ端に聴かねばならないのは個人的に辛いので少し評価を落とした

5話視聴
{netabare}やはり面白い
3話でオーソドックスな捜査を扱い、シンプルなサスペンス物としての構成を再提示している
その上で主要人物の心情や過去を断片的ながらわかりやすく描いて以降の展開に上手く繋げている

4話からの事件は再び難解かつ特殊なものとなり、ここまでの内容でも触れられていた「殺意」という部分にもスポットが当たる内容となった
また、4話の救われないオチと、主人公の不安定な人間性と危うい殺意など全体的に苦みの強い後味だった

5話は1話からの続き物としての色を強く打ち出しており、大きな流れが出来上がる予感と、事件自体の不気味さが上手く両立している
4話5話と「引き」も上手く、先の展開が気になって視聴意欲が途切れない作りになっている

何がここまで面白く見せてるのかというと、シナリオもさることながらキャラの性格の抑制という面も大きいと思う
イドの中、井戸端、現場とそれぞれに主要キャラが配置されているため、各話における登場人物はかなり多い
その上大半が情報分析ないし事件捜査と役回りが近く、下手な脚本だと没個性的になりかねない

そこでキャラに「堅物」「軽薄」「無口」「未熟」のような記号を付けて差別化をしていく
ただ、この記号にこだわるあまりキャラの立場に合わない言動をさせてしまう作品も多い
例えば軽薄キャラだと、「仕事はサボりがちで服装は乱れていて、でも何故か仕事は出来る人扱いされる」のような感じ
これで成立する作品もなくはないけど、警察や政府など堅めの組織を扱う場合ただの違和感となってしまいシナリオへの没入が阻害される
キャラメインの作品に多く、たとえば前期の「スタマイ」なんかその傾向が強かった

このアニメの場合簡単な記号付けはされるものの、それは服装の小物・色使いに散りばめられる程度に抑えられている
あとは同僚との会話や独り言での口調に滲ませているだけで、報告など業務に関わる部分ではあまりキャラ付けの要素を見せないようにしている
これにより特殊な現場で働く精鋭という集団としてのキャラ付けと、その中で動く個人としてのキャラ付けが綺麗に両立している

リアリティを描くための抑制が利いた人物描写と、イドの中というアニメ的表現の演出が揃っていることで一層のメリハリが生まれるんだと思う
土台のSF要素の突飛さをリアリティに結びつける「つなぎ」として、人物表現の堅実さがしっかりと活きているのかな、と

同じような抑制の上手さという点で言うと挿入歌の扱い方も同じことが言える
「名探偵」のアクションシーンに重ねる形で挿入歌を用いているわけだけど、シンプルかつ見栄えの良いシーンに歌を被せている
「パズルを解く」「救出に奔走する」という簡単な場面なのでやっていることも分かりやすく、井戸端での台詞も最小限

歌自体の好みは賛否あるだろうけど、あのシーンは誰のどういう見せ場かハッキリしている分歌が入る場面としての違和感は少ない
「fairy gone」なんかだと、挿入歌の最中に伏線が張られたり挿入歌を入れる意図が明瞭でない場面だったりと全体的に散らかっていた
「ありふれ」の場合は数日~数週間単位の出来事を丸々ダイジェストにするために挿入歌を使っており、手抜きと説明不足が透けて見えた

各場面における諸要素の配置に無駄がないため、演出を見ていて過剰に感じたり退屈さを覚えることが無いのがこの作品の一番良い点かも
後味悪い展開が続く予感はすごいけど、この調子で最後まで進むと本当に面白い作品になりそう
{/netabare}

最終話視聴
{netabare}全体通して本当に面白かった
物語は1クールできれいに纏まった内容になっていて、省略や中弛みはない
その上で考察すべき内容が非常に多く、各話を見終えてからの時間も楽しめた

大筋のシナリオについてはJWの正体も大方の予想通りで、やはりミステリというよりサスペンスという感じ
とはいえ退屈な要素はなく、正体の判明方法から事件の解決手段まで驚きをもって見入ってしまった
そして解決をイドだけに任せるのではなく、現実世界の働きかけが最後まで重要な役割を持っていたこともこの作品らしい面白さになっていた

墓掘りの顛末やイドの中のイドなどベタながら泣いてしまう演出もよくできていた
そのようなドラマ的な見せ方で感動をさせつつ、直後に劇的な展開を見せることでこちらの感情をガンガン揺さぶる脚本は本当に面白い

伏線の張り方も明示的でありながら不自然さはなく、見返して深く納得できる物になっている
富久田の数章や本堂町の目に映る世界についても序盤から情報を拾っていくと無理なく説明が通る

それでも謎や未解決の問題は残っていて、そちらについては漫画での展開がなされる様子
視覚表現が限定される漫画でこの世界を表現するのは難しいと思うので、できればそれもアニメ化してほしいところ

なんにしても非常に面白かったし、見てよかったと心から思える作品だった
{/netabare}

投稿 : 2020/03/23
閲覧 : 288
サンキュー:

7

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