USB_DAC さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
緋牡丹咲く未来の家族に伝える彼の想い
★物語
・原作 : 細田 守
・監督 : 細田 守
・脚本 : 奥寺 佐渡子
キャッチコピーは「これは新しい戦争だ。」と「つながりこそが、ボ
クらの武器。」。「時をかける少女」に次いで製作された2009年
オリジナル長編アニメーション。監督自身が長野県上田市にある妻の
実家を訪れた際の実体験を元に作られたという作品。大家族に囲まれ
ての食事風景や戸惑う健二の心情など、ひとりっ子である監督の思い
と、家族との繋がりを大事にして欲しいという願いを感じる作品です。
健二が語ったあの有名な一言は、きっと監督が初対面の大家族に溶け
込もうと言い続けた言葉なのだろうと僕は密に思っています。w
★作画
・作画監督 : 青山 浩行、藤田 しげる、田 邦彦、尾崎 和孝
・美術監督 : 武重 洋二
・制作会社 : マッドハウス
画家を目指したという細田監督らしい独創的なライン。また特徴的な
キャラクターの影を省いた作画による表情も変わらぬ拘りを感じます。
リアルな入道雲の動きや華やかなOZの世界。神化したラブマシーン
が崩壊する描写など、ジブリ作品に引けを取らぬ細かさだと思います。
★声優
・小磯 健二 : 神木 隆之介
・篠原 夏希 : 桜庭 ななみ
・陣内 栄 : 富司 純子
まるで喜劇を聴いている様なテンポの良さを感じます。気丈な曾祖母
役の富司純子さん。『緋牡丹博徒 花札勝負』のまさかのオマージュ。
素晴らしい名演だったと思います。健二役の神木さんもお似合いです。
★音楽
・主題歌 :「僕らの夏の夢」/ 山下 達郎
イントロがとても温かく心地良い。聴いていて安心する曲です。
★キャラ
・キャラクターデザイン : 貞本 義行
・OZキャラクター : 岡崎 能士、岡崎 みな、浜田 勝
あれ程毒を吐き合っていた陣内家の面々が、最後にはとっても理想的
な大家族に。きっと次の夏も二人はこの家を訪れ、楽しい食卓を囲ん
でいるのでしょうね。みんなの笑顔が目に浮かぶ様です。
また、ほぼ全ての人物に個性的なアバターを設定する拘りも驚きです。
[簡単なあらすじ]
{netabare}
ある夏の日、高校生の小磯健二は憧れの先輩・夏希から彼女の田舎ま
で一緒に旅行をするという「バイト」に誘われる。
夏希の実家・陣内家は、戦国時代から続く名家で、曾祖母の栄婆ちゃ
んを筆頭に個性豊かな面々がそろった大家族。健二のバイトの内容は、
この家族たちの前で夏希のフィアンセ役を演じるというものだった。
その夜、健二の携帯電話に暗号らしきメールが届くと、数学が得意な
健二は徹夜で回答を導き出す。すると翌朝、現実と仮想世界OZが大
混乱に陥っていた…!
以上『サマーウォーズ4DX』公式サイトより
{/netabare}
[感想]
つい最近「デジモンアドベンチャーぼくらのウォーゲーム!」という
子供向け映画を視聴(初見です)する機会がありまして、やはりと言
うか何となく比較したくなって、共通する世界観を持つと噂されるこ
の作品を改めて見つめ直すに至りました。
意識して二つの作品を見ると、上記デジモンが名作と言われる所以が
本当に良く分かります。一見小難しい設定を子供の目線で無理なく分
かり易く纏めている。そして子供たちが作り出す表情の奥深しさ。高
速で回る観覧車に乗った幼女の屈託の無い笑顔は、驚きさえ感じます。
しかし子供向けという制約と上映時間40分という短さでは、あまり
に描き足りない世界観なのもまた事実です。その後フリーとなり製作
されたこの「サマーウォーズ」は、細田監督が描きたかった全てが凝
縮された作品だったんだと、改めて視聴して感じた次第です。
仮想世界の浸食。そもそも厳重なセキュリティの上に成り立つべき仮
想世界に、某国の国防省によってハッキングAIを投入されるという
設定は、ちょっと無理がある様な気がしました(やり兼ねなくもない
ですが)。まあそれは別として、実際にその世界の実現が迫っている
とするならば、この物語で発生する様々な出来事や現象は、絶対に発
生させてはならない危惧すべき内容なのは確かです。
特に命に係わるもの。交通インフラやコネクテッドカー、行政サービ
スや医療機器など人命が危険に晒される事は本当に恐ろしく感じます。
(過去に軍事的な実例は数件報告されているようです)
今や日々日本に対し、数億数千のサイバー攻撃があると言われている
現実。そして常に利便性を追い求める中で増え続ける見えない脅威と
の戦い。我々のような浅学者や生活弱者に対する安全と優しさは常に
確保されるのでしょうか。近い将来確実に訪れる仮想世界の実現に於
いて、この様な悲劇が実際に発生しないことをただ祈るばかりです。
人間関係が希薄と言われている昨今。我々が本当に大切にすべきはそ
れら利便性の追求ではなく、家族の温かさや繋がりなのだとこの作品
は伝えている様に思います。例え道を外しそうになったとしても、い
つか正しき方向に家族が導き、温かくその者を包み込む。そしてお婆
ちゃんが語った「家族同士手を離さぬように、家族みんなで揃って御
飯を食べること」。それがこの世で一番幸せなことなのだと思い知る。
悲劇に負けない家族の輪。それを見つめ微笑む健二と夏希。そしてお
婆ちゃんの笑顔の遺影に、この物語の終着点と願いを見た思いです。
以上、拙い感想を拝読頂きありがとうございました。
2020.01.14 誤字、段落修正
2020.01.14 誤字再修正
2020.01.14 誤字再々修正