九条 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
人類と自然の共生の在り方を露骨に説く問題作。
主人公(樹奈)が羅亜邪と呼ばれる未知の生命体との闘諍に巻き込まれ、人類と自然の共生の在り方を
問い直していく作品であり、自然環境を破壊し続けてきた現代社会を痛烈に非難する内容となっている。
利便かつ裕福な生活を支える近代科学に潜む公害や、エネルギー問題を取り上げ、容赦のない制裁を
現代人に下すアニメらしからぬ問題作であり、生態系に対し人類が負うべき義務とは何かと露骨に説く。
取り分け我々人類は外部から酸素・水分・栄養などを絶えず摂取せねば生きられない存在であることを
視聴者に訴えかけ再認識させるという、何とも説教臭い作品であり、一切の妥協なく徹底的に言及する。
その上、対人関係におけるアンビヴァレンスな感情や反原発・有機農業化・消費者運動なども敷衍する。
故に娯楽らしきものは皆無であるが、これは地球的規模の諸問題に対し、真摯に臨んでいる証左であり
中途半端なアプローチは微塵もしておらず、その意味においては大衆性を没却し辛辣に貫かれている。
無論、本作の如く環境倫理を啓発する作品は、数知れずあるが、それらを克する筋道が明示されており
ここまで突き詰められているからこそ、最終話における時夫(樹奈の恋人)の名台詞が心に響くのだろう。
日本TVアニメ初のHD制作や菅野よう子の起用といった、話題性に依存せず内容で堂々と勝負しており
樹奈が紆余曲折を経て苦学力行する成長譚は、一見の価値があったと感じられるのではないだろうか。
繰り返し視聴することによって深みが増す作品ではないが、それは本作の「衝撃」を裏付けるものであり
苦言を呈するものではなく、いわゆる、スルメアニメ的な風情とは異なる、シニカルなカタルシスがある。
尚、本作は、人類が物質的豊かさを身勝手に欲したことを非難するだけではなく、未来志向もされており
人類と自然の共生関係を促す、エコロジーを共有していかなければならないと切に願っているのである。