HmFDB75691 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
【総評】物足りない点はあるが、面白かったし、続編も期待する
ミステリーや刑事ものは、男キャラが多くてラストまで我慢できるだろうか。もう少し華やかな感じにしてほしかった……と、最初に思ったけど、最後まで楽しめた。
【解釈】……答えが出たけど解釈が必要な場合、【考察】……答えが出ておらず、考察や予想の段階、()はネタバレ話数、全話なら全話に関係する。
【解釈】カエルちゃんについて(全話)
{netabare}
○カエルちゃん=飛鳥井
第3話のキャストに飛鳥井木記の名前があるので、カエルちゃん=飛鳥井であるのは、ほぼ確実。
第7話に飛鳥井の名前が出てくるのだが、作中のキャラはカエルちゃん=飛鳥井には気づいていない。視聴者がさきに答えを知るという不自然な形になっている。制作側が意図的に仕掛けたミスリードではなく、うっかりミスではないだろうか。
〇カエルちゃんは置き換えか
秋人は無残なカエルちゃんを見ると、奥さんと娘を失った原因を思い出そうとする。そこから意識をそらすため、カエルちゃんに置き換えて原因を突きとめようとする。名探偵は、パイロットの衝動(欲求)なので、記憶がない。
{/netabare}
【考察】バラバラの世界(第1話・第2話・最終話)
{netabare}
最終話で穴あきのイドが出てきたが、どのようなイドなのか、明確な答えは出なかった。だから、考察のままにしておく。バラバラな世界は、穴あきのとってはまとまっている。この点だけを押さえておけば、ストーリーを理解するには足りると思う。
カエルちゃんは、目を抜く(人の目をごまかす)だと思う。逃げるときにやっていた。
以下は、想像で書いたもの。
穴あきは、数唱障害がありながら、イドの逆転のため命を絶つことができなかった。だから模倣犯を追い込み、家に火をつけさせた。穴あき自身も燃やされるつもりだったが、顔にやけどを負ったが助かった。銃弾が飛び交う戦場なら命を絶てると思い、戦場カメラマンの花火師と行動を共にする。穴あきは額に銃弾を受けるが助かり、悩まされた数唱障害も消えた。ドリルであけたと、小春と秋人は推理して言ったが、穴あきは肯定も否定もしていない。
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【解釈】滝の世界(第3話)
{netabare}
○事件(ビル爆破)とイドに、ほとんどつながりはない
今回の現場を挙げると、
1.ビル爆破の現場、2.イドの世界、3.犯人の過去の現場
となる。
ストーリーは、1→2→3の順であったが、事件を解決するときは、2→3→1となっている(イドから犯人の過去を探り出し、ビル爆破の犯人を逮捕した)。
考察するとき、イドと事件をつけなげようとすると、勘違いをする可能性がある、と思う。
○犯人はなぜ事件を起こすのかわかっていない
今回のイドは、犯人の無意識の欲望、本来やりたいことが具現化した世界と考えられる。だけど、無意識なのでそれに気づかない。無意識に閉じ込めたものは、形を変えてでも意識に上がろうとする。
事件は無意識の欲望(惨状を見たいという欲望)を満たすためだけど、その欲望とは違う形(ビル爆破)になる。無意識の欲望を自覚していないから(犯人が所持した写真からわかる)やめられず、連続して事件を起こす。
○犯人は事件の動機を作り出し、正当化させようとする
犯人はなぜ事件を起こすのかわからない。だから、正当な動機(写真はこの動機で撮られた)を考えて心のバランスを保とうとする。秋人は犯人のイドに潜り、無意識の欲望を知っている。だから、それを教えてやることもできた。その結果、犯人の正当化が打ち砕かれ、無意識にある醜い欲望に突き動かされていたことに絶望した。
{/netabare}
【解釈】燃えさかるビルの世界(第4話)
{netabare}
まず、動画には『穴は埋められた』と書かれている。この”穴”は目撃者の少女のこと。模倣犯は放火事件を起こしたあとも、”ダメな人”から脱却できずにいた。
そこに墓堀りの事件を知り、穴(少女)を埋めることでダメな人から完全に脱却できると考えた(埋まっていないパズルのピースが一つあり、そこを埋めると完成みたいな)。
警察に逮捕されるから目撃者を消した、という動機ではない。
イドの世界にあるものはすべて犯人のものなので、酒井戸が抱っこした少女は、犯人のおっさん。少女は、罪を認め、”ダメな人”を受け入れた、おっさんの無意識にある正常な部分(たどり着くのが困難)。
思念粒子のイドの世界で正常になれても、現実には反映されないので、”ダメな人”を受け入れられない犯人が逮捕された。
”ダメな人”の原因は自分のなかにあるのに、周りに原因があると思い込み、消そうとする(火をつけたり、穴に埋める)行為に走った。
{/netabare}
【解釈】落ちる世界(第5話・第6話)
{netabare}
○逆転のイド
酒井戸が解けたと言ったのは、解けないという意味(とっさに出た言葉で、考えながら言うと逆転はない)。花瓶に枝を挿すのでなく、枝に花瓶が挿さっている。このイドではすべてが逆転している。
凶悪な犯罪なので、無意識に閉じ込めるだけでは安心できず、正反対の愛情で不安を抑えている。
○写真
ゴミ箱に捨てられた写真は、(逆転して)大切なもの。二人が一緒に写っているのはその一枚だけ。だから井波も同じものを持っている。
○落ちる
”落ちる”は恋に落ちるかな。これも逆転させると、イドは落ちていないから、カエルちゃんの血が飛び散っていない理由になる。
○血だまり
カエルちゃんと井波の位置が逆転している。
カエルちゃんは埋まっていることを表す。血だまりを広げたのは、埋めたものを隠すために地面をならしたという意味。その上に(中学時代の)井波がいる。
○二人の入れ替わり
カエルちゃんと井波の位置は逆転しているが、実行犯は数田なので、カエルちゃんを埋めているのは数田。ボロボロになった数田が離れに入らず窓越しで見ているのは、電車の井波と同じ。数田は井波となる。つまり、二人は入れ替わっていた。
〇逆転するまえのイド
バラバラになった数田と、それを見るための鏡があり、カエルちゃんは数田に埋められていた。逆転して、バラバラでない井波(数田と入れ替わり)と鏡がなくなり、カエルちゃんは位置逆転で、埋められていない状態に変わった。
〇防衛機制
埋めたことに耐え切れず、犯罪(憎しみ)を井波のプレゼント(愛情)に逆転させて意識しないようにした。恋に落ちていない理由とも一致する。『逆転』は防衛機制のひとつ。
{/netabare}
【解釈】円環の世界(第5話・第6話)
{netabare}
○逆転のイド
井波のイドも数田と同じように逆転している。
・井波が見たくないものが電車にある
・足跡を拭ったのに残っている
・埋まっている人たちが埋まっていない(むき出しになっている)
○検知
数田は検知済みなのでスルー。小春は楽しんでいたから検知されなかった。松岡が警戒した理由だろう。松岡や同僚を撃ちかねないから、名探偵に推薦した、というより見放した。
井波はドSのままだったら検知されなかった。とっさに恋愛感情が表に出たのだろう。刺したことよりキスの嫉妬かな。
(修正)小春も思念粒子は検知済みだった。小春の近くで行動を見ていたので、松岡は危険視したと考えられる。
〇足跡
カエルちゃんの足跡を消す→クラッキングの痕跡(アクセスログ)を消す
○電車
事故のときに電車は急停車して、井波は窓から外を見ていた。そのときの光景を意識しないため、イドを逆転させ、電車を走り続けさせている。
井波の心の傷は電車に乗っていたこと。心の傷は意識上にあると苦しむので、無意識に閉じ込めた。それでも足りないから、イドを逆転させてサディストになった。(ジョンウォーカーの手も入っているが)。ドSであり続ければ、残酷なことも平気でいられる。数田のときもそうだが、すべて無意識に行っている。
〇逆転するまえのイド
電車は止まり、井波は窓の外を眺め、埋められた人たちを見ている。車内ではJWがカエルちゃんを刺し、生きた人たちが座っている。逆転したあとは、車内にいた人は外に、外にいたのが車内に変わる。井波は外にいる生きた人(残酷でない)を見ている。
そんな無意識のなかに恋愛感情がある。窓の景色を見るフリをしながらお互いを見ている(数田を好きと思うことで、窓の外の光景を忘れるためかもしれないが)。
二人の恋愛感情は高校時代で止まったまま、進んでいない。ジョンウォーカーによって、キスといった恋人同士がすることから外れ、犯罪で好意を表すことになったから。数田が告白したり、井波を支えていれば悲劇は起こらなかったのかも。
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【解釈】雷の世界(第7話)
{netabare}
小春の服装の見どころはコートの下だけど、黒ストッキングから黒ニーソに変わった点も重要。服装は、”名探偵”のイメージなんだろう。小春の場合、「名探偵と言えばホームズ」って感じ。
秋人は無意識のなかで敵意を抱いている。敵でもない相手に敵意を投げかけ、相手が敵意を抱いていると思い込んで、自分のなかにある敵意を正当化させる。
イドにいる人は、秋人に対し明らかに敵意を持っていない人(親しい人)。そんな人でも、秋人に対して敵意を持っていると思い込み、攻撃する(雷を落とす)ようになった(奥さんとむくを失ったのが原因)。『雷は同じ場所に二度と落ちない』は、続けてひどい目には遭わないという格言。
第7話を見た時点では、CPUの電気信号(命令)が人の命を奪っている、それを表しているイドと考えていた。数字が多いのも演算装置を連想させた。
{/netabare}
【注意】砂の世界(第8話・第10話・第11話)
{netabare}
大きいネタバレなので【注意】にした。第10話で答えは出たので【解釈】の段階だと思う。第8話では、開発者のイドと考察していた。
カエルちゃんの太ももは気になっていた。太ももではなく裾が短くなったと見るべきだった。視聴者のエロい気持ちを利用したうまいミスリードだと思う。
小春に(秋人が)手錠をかけたように、カエルちゃんは、スカートを破いて、カエルちゃんと酒井戸、酒井戸と穴井戸を結んだ。まず、穴井戸が目覚め、布を解いて隠す。そのあと酒井戸が目覚めた。
カエルちゃんは謎解きのヒントを表すから、手錠をかける真似をして、砂の世界が秋人のイドだと教えた。酒井戸がイドに潜った時点で砂の世界だった。欠けた爪は、流砂に埋もれた秋人を表すのか、スカートを破いたときに欠けたか。
{/netabare}
【考察】INSIDE-OUTED(第9話・第10話)
{netabare}
以下の項目は、いずれも答えが出ていないため、考察のままにしておく。
〇飛鳥井の能力
飛鳥井の能力は、衝動を送ってきた相手にふさわしい映像を返すもの(カエルちゃんは、返るちゃんかも)。
過去の虐待から得た能力。相手の暴力を未然に防ぐため衝動を察知し、飛鳥井が犠牲になる形で映像を返し、相手の欲望を満たす。これらがワクムスビとミヅハノメの機能となる。
〇イドのなかのイド
秋人の衝動である酒井戸が、井戸主が飛鳥井のコックピットに座った場合、秋人に映像を送る。イドのなかのイドは、秋人本人が映像を見ているだけ。だから、記憶もある。映像の内容は、秋人にふさわしいもの。だから、奥さんと娘が生きている。
衝動が入ると映像を返すため、少なくともパイロットには、飛鳥井のイドは見ることができない。
〇イドのなかのイドで見る夢
秋人が無意識に閉じ込めたもの。飛鳥井の(能力を使ったときの)夢だが、秋人の無意識でもある。その無意識が秋人の夢で現れる。
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【解釈】STORMED(第11話)
{netabare}
雷から砂のイドへの変遷
1.奥さんと娘を失い、誰でもいいから雷を落としたい、雷(敵意)の世界になる
2.タイマンを撃ち(追い込みも?)、敵意を満たしたから、イドから雷と人が消える
3.月日の経過で、砂が覆った砂の世界に変わる
飛鳥井は中央部で眠っていて、パイロットは飛鳥井と同じ夢を見て、その夢をスタッフが見ていた。名探偵の衝動と思念粒子を受け取り、飛鳥井が犠牲になる形(カエルちゃん)の夢を作り、映像を返す。ミヅハノメが映像を表示するディスプレイの役割がある。
{/netabare}
【解釈】CHANNELED(第12話・最終話)
{netabare}
飛鳥井が見せているのは、秋人がイドのなかのイドで見たようなもの。だから、記憶もある。前回は秋人がパイロットだったから、秋人に都合のいい世界になった。
小春は額に穴があいたから穴が見えなくなったのだろう。この点については、『小春のイドについて』に記す。小春が見た写真は、リアル世界の写真ではなく、イドの写真である点に注意。
名探偵がイドのなかのイドに潜ると、最初に事件を起こした日に戻る。
秋人はタイマンを撃った日、局長は秋人を撃った日。開発者を始末したのは、局長ではない。
(暴走した飛鳥井に近づくのに)若い百貴ですら体に負担がかかったから、老齢な開発者には耐え切れなかった。
秘密裏の実験で表沙汰にできないため、局長がこっそり百貴宅に埋めた。飛鳥井を保護したのは三年前だから、百貴は、そのころから飛鳥井の周辺を嗅ぎまわっていた。そんな百貴がじゃまだったので、そのうちハメてやろうと考えて、百貴宅を選んだ。
岩石が転がる世界は、局長のイドのような気がする。静かにすれば攻撃しない。百貴も余計な詮索をせずに静かにしていれば、局長にハメられなかった。
{/netabare}
【解釈】ドリルの世界(仮)小春のイドについて(第2話・第12話)
{netabare}
小春のイドにある細いドリルは、巨大なドリルがバラバラになったもの。
穴あきと同じで、酒井戸や井戸端には、バラバラに見えるけど、本来は一つの巨大なドリル。第2話で、巨大ドリルが迫っているのに、酒井戸が避けなかったのは、見えていなかったから。
バラバラがタナトス(バラバラになろうとする衝動と解釈する人もいる)を表す。イドのなかで、バラバラになっているものが犯罪の動機とつながっている気がする。
数田は(井波の)写真と井波。花火師は被害者たち(惨状)。模倣犯は、おそらく通路で、酒井戸にはバラバラに見えるから、移動するのが困難だった。二棟のビルは本物と模倣で、その二つをつなぐものに気づかれないという動機。井波は電車かな。秋人は追い込みで、数字盤がバラバラになった。数字盤は円周率を表し、むくへとつながる。
小春、穴あき、数田は、犯罪の動機を持たなかったが、穴があいたことでタナトスが生じた。
{/netabare}
【解釈】『君の名は。』のネタが使われている
{netabare}
別サイトだが第5話で書いた予想。
『穴あきの犯罪は、蔵に潜入するための手段であって、目的は蔵を停電させること。』
ネタにしていると考察したので、第5話の時点で蔵の停電も予想できた。
以下は、使われたネタ。
名前を聞く少女、滝の世界、落ちる世界(隕石っぽい)、男女の入れ替わり、電車、酒、トンビ、ヒロインの名前の由来はミヅハノメ、”三年前”の奥さんと娘に会う、停電、最終話で秋人とカエルちゃんが出会うシーンは、黄昏時だろう。
別サイトで、隕石と男女の入れ替わりがあるからネタにしていると書いたら複数の人から全否定された。あんなすばらしい作品をネタにするアニメが存在するはずない、という気持ちなんだろう。気づいているけど、それを認めると都合が悪いから無意識に閉じ込めた。だから、どんなにネタにしてもファンからのバッシングを受けない。そこまで考えて作られていたらすごいと思う。
{/netabare}
【解釈】『海辺のカフカ』の新しい解釈
{netabare}
別サイトだけど、第3話のとき『海辺のカフカ』を参考にして書いた予想。
『ジョンウォーカーも犯罪者のイドを集めるのが目的とか。』
犯罪者のイドの集まりはあった。序盤で予想できるので、終盤のオチとは言えない。
大島さんが考え事をするときに額に手をやる仕草や、ナカタさんが集団昏睡させて、欲望を夢で見させた点など、『海辺のカフカ』のネタもいくつか見られる。
『海辺のカフカ』の登場人物に当てはめてみる。
秋人がカフカ。飛鳥井がナカタさん。カエルちゃんがカラスと呼ばれる少年。小春がさくらで、井波が佐伯さん。局長がジョニーウォーカーで、カーネルサンダーズ。百貴が星野青年で、東郷が入れ入れ……。
『海辺のカフカ』を読むと、『佐伯さんとさくらは、カフカの母と姉なのか?』と考えたくなる。
秋人がカエルちゃんをむくと思ったのは、”置き換え”と考察した(『カエルちゃんについて』に記述)。カフカも、母と姉が突然いなくなったので、自分なりのストーリーを考えて、佐伯さんとさくらを母と姉に置き換えた気がする。
このアニメを見て、『海辺のカフカ』の(ネットで調べた限りでは)新しい考察も浮かんだ。
{/netabare}
【総評】物足りない点はあるが、面白かったし、続編も期待する
{netabare}
面白かったし、自分なりの評価も高い。物語の評価は星5にしたかったが、ラストが物足りなかった。
元ネタがわかれば、蔵の停電も犯罪者のイドを集めたことも、前半で予想できる。さらに、誰もがあやしいと思っていた人物を黒幕にしたため、盛り上がるところで盛り上がらなかった(視聴者の感想を読めばその反応がわかると思う)。
イドのなかのイドまでは、ミステリー好きも納得する面白い展開。それだけにラストがもったいない。
オリジナルアニメはストーリーの考察ができて楽しめるのだが、この作品はストーリー以外のイドについても、パズルのように解く楽しみがあった。もっともよかったのは、砂のイドが雷のイドだったトリック。カエルちゃんの太ももをアップにして視聴者をミスリードに導くところもよかった。
キャラクターでは名探偵としての小春がよかった。続編があるなら、小春を主役にしてほしい。
{/netabare}