「うみねこのなく頃に(TVアニメ動画)」

総合得点
68.2
感想・評価
995
棚に入れた
5170
ランキング
2196
★★★★☆ 3.4 (995)
物語
3.2
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.4

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ネタバレ

gawa さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

真実についての考察

【うみねこのなく頃に
  一なる真実の書に隠された更なる猫箱】

1984年10月5日に起こった
六軒島の爆発事故における
右代宮家一族の惨死事件…

生き残りである、右代宮絵羽によって
綴られた事件の真相の日記
「一なる真実の書」に記された猫箱の底。

結果として六軒島のホロコーストの首魁は
霧江であることは、
作者が認める公式の事実のようです。

しかし、一なる真実の書ですら、
絵羽の主観によって記された
ボトルメールの一つでしかありません。

縁寿に対する
無慈悲で残酷な霧江の発言の意図、
その心中は、
それこそ霧江以外の人間にとっては
永遠に猫箱の中なのです。

或いは
「チェス盤をひっくり返す」ことによって
視えてこなかった霧江の本心が
視えてくるのかもしれません。


【考察1…霧江視点 To 留弗夫】

霧江は18年もの間、
1人の男を想い続ける程の
激情を持っています。

18年…
それは彼女の人生を賭したといっても
過言では無い歳月ではないでしょうか?
その事実が
霧江が深い愛情の持ち主であるという
証明に他ならないでしょう。

惨劇の夜の最終章、
霧江は留弗夫の死を
絵羽の存命によって悟り、
その後の会話で
夫と娘に対して、
あまりに冷酷で人とは思えぬ発言をします。

それこそ絵羽に義憤を宿らせ、
縁寿の精神を崩壊させるほどに…。

でも、考えて見て下さい。
自分の命を掛けて執着した対象が
死んだ事を知ってしまったら、
残されたものはどう感じるのかを。

それこそ、
自分の人生が終わってしまったような
喪失感と虚無感が
彼女を満たしたのではないでしょうか?

留弗夫の死に対しての彼女の発言

「ありがとう。これで遺産は私の独占めね」
「これからはゆっくり余生を過ごすわ」
「新しい恋もあるかもね」

などなどが本心だったのすれば、
明日菜に留弗夫を奪われた時にも
さっさと切り替えるなり、
報復するなりできたはずなのです。

でも、彼女は結論として
18年も留弗夫にこだわり続け、
裏切られてもあの手この手を尽くして
留弗夫の側に居続けようとしました。

「目立ちたがりのくせに
 ここぞという時はダメなんだから」
「彼は私がいないと本当にダメね」

という、死んだ留弗夫に対する
霧江の発言には、
使えない男を見限る様な意味合いよりも、

「彼のことを理解しているのは私だけ。彼を
輝かせる事ができるのは私だけなんだから」

という独占欲が満たされた歪な愛情が
垣間見えるような気がします。
それこそ、縁寿の出産は
彼女にとって切り札だったのでしょう。

それを愛情と呼ぶのか、
執着と呼ぶのか、捉え方は様々ですが。

つまり、霧江はそれ程までにこだわり、
人生の全てを費やした対象を失ったのです。それは生きる意味を失ったのと同等の
出来事だったはずです。

彼女が絵羽との決闘の際には既に屍も同然、生きることを
放棄していたのではないでしょうか。
むしろ、絵羽を挑発し
自らの死を誘発しようとしているようにも
映ります。


【考察2…霧江視点 To 殺人鬼に至るまで】

霧江は合理的に物事を考え、
無駄なく冷酷にジャッジできる女です。
出生が須磨寺家という血生臭い環境で
育ってきた経緯も
大きく影響しているでしょう。

絵羽の夏妃に対する過失致死が起こった時点で、霧江はすぐさま答えを出したはずです。

海千山千の右代宮家の兄弟達の間で
一度人死が起これば、
平和的解決などは有り得ないのは
火を見るより明らか。

顛末は殺し合いか、
破滅のなすりつけ合い以外に
考えられないでしょうから。

ならば、
先手をうって皆殺しにするしかない。
霧江にとっては
ごく自然な選択だったと推察されます。

甥や姪まで皆殺しにする辺りは
まるで共感ができませんが、
霧江自身と、縁寿、留弗夫の
幸福を最優先に考えると、
あらゆる不確定要素(騒いだ甥たちが
警察に通報し、あらぬ疑いが掛かる。etc)
を刈取ると言う意味では、
合理的で霧江らしい判断と
言えるかもしれません。

彼女は10億の遺産のために、
凄惨な殺人鬼となり果てましたが、
10億の遺産の果てに彼女が夢見ていたのは
愛する夫の幸せ、そして縁寿の幸せ。
そして、そんな2人に囲まれる
自らの幸せであったはずです。


【考察3…霧江視点 To 縁寿】

絵羽は霧江の凶弾を
2度に渡って回避しています。
それこそ絵羽曰く、強運、もしくは奇跡とも
言えるかもしれません。

1度目の空発は、霧江が久々に使う銃に
手が馴染んでいなかったためのケアレスミスとして捉えてもいいかもしれません。

ただ2度目に関しては、どうでしょう?

霧江は2度目の絵羽に対する発砲までに、
4名もの人間を的確に殺めています。

その彼女が、ここぞというときに照準を外すでしょうか…?
むしろ本当に発砲したかどうかも、
不明な描写でした。

そこから推察されることは…
絵羽との一騎討ちの際、
霧江は絵羽を撃ち抜くつもりがなかった…。
むしろ自ら死を選び、
生き残った絵羽に
何かを託した様にも思えるのです。

留弗夫という人生の拠り所を失い、
その手は我が娘の実の従兄弟達を手かけた
殺人鬼の手…。
霧江は留弗夫無しには、
良心の呵責に耐える事も、
その穢れた手で縁寿を育て上げる精神力も
残っていなかったのかもしれません。

霧江は事切れる直前にニヤリと笑い、
絵羽に向かって何か言葉を投げかけました。
しかし、絵羽の放った銃弾が
霧江の喉元を穿ったために
言葉として絵羽に伝わることは叶わず、
喉元から鮮血とともに吹き出る
空気音として消え、
そしてそのまま霧江は事切れてしまいます。

さも、不気味で不敵な死に様に感じますね。
最後に投げかけた言葉は
どんな呪いの言葉や、
捨て台詞だったのやら…みたいなw

しかし同じ表情でも、
受け手の心理状況によっては
慈愛に満ちて映ったり、
邪悪に映ったりするものでしょう。

一なる真実の書は
絵羽の主観に基づいて綴られたもの。
夫や息子を葬った宿敵に対して
好意的な捉え方をするのは
難しかったでしょうね。

そこで「チェス盤をひっくり返して」
みましょう。

霧江は

「あんなクソガキ、
 可愛いと思った事など一度もない」

という言葉を言い放つ事により、
縁寿を絵羽に託した
とも捉えられないでしょうか?

愛情なき冷酷な母親に
「いらない子」扱いされた縁寿に
深い憐みを覚える絵羽。

もはや義憤や母性すら芽生えた絵羽に
霧江が投げかけようとした言葉…
それは…呪いの言葉でも捨て台詞でもなく、

「縁寿をよろしく」

と考えるのが自然である気がするのです。

絵羽は最愛の夫と息子を
霧江と留弗夫によって殺害されており、
一押しすれば、絵羽の行き場を失った母性がただ1人残った肉親である縁寿に向かう事を、霧江であれば、計算済みだったでしょう。

絵羽の譲治に対する深い愛情を
見ていた霧江は、
彼女であれば縁寿に対して、
母親の代わりとして
惜しみのない愛情を注いでくれると
信頼していたのかもしれないですね。

逆に
仮に霧江が縁寿を溺愛していたとしたら、
それを絵羽に悟られれば、
最愛の息子を奪った仇の娘である縁寿が、
絵羽に報復される可能性も
視野に入れていたとの
考察もできるかもしれません。

故にあの発言は
霧江が縁寿を守るためについた
渾身の嘘であると捉えることも
充分に可能であるとは思いませんか?

いずれにせよ
なんと狡猾で、
なんとおぞましい女性なのでしょうか…。

しかし、その
本人が聞けば精神を崩壊せしめよう
おぞましい最期の嘘には、
歪とはいえ、縁寿に対しての
深い愛情が込められていたと
思えてなりません。


【考察まとめ】
霧江を贔屓しすぎた考察でしたでしょうか?

でも、言葉は雄弁でありながら時として、
狡猾に真実を猫箱の中に閉ざすものです。

愛に飢え、盲目的に真実を貪る
1998年の幼い縁寿には、
その言葉に隠された真実を
見つける事は困難だったでしょう。

いや、無理でしょ、いたいけなJKに
母親のあんな発言聞かせたら…
グレて反社になっちゃうよねw

私はこの考察に確信的な自信をもってます。なにせ、この「うみねこの鳴く頃」にという
物語のテーマは

「愛がなければ視えない」
なのですから。

物語の真相である、一なる真実に
愛に存在しないわけがないでしょう?笑

投稿 : 2020/01/04
閲覧 : 714
サンキュー:

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