薄雪草 さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
むすんで ひらいて 手をうって むすんで♩
・・・?
ちひろ?・・・・・・はて?・・・・・・。
そんな名まえの子がここに来ていたかなぁ。
ワシらにはみんな、徒名が付けられとってな。
いや、渾名なんてそんないいもんじゃないよ。
とにかく、名前を持つもんは、ここにはだれもおらんのだ。
ときどきあんたみたいな人間の子がひょいとやってくるよ。
何かわけあってのことなんだろうが、どうにもわしゃぁほっとけなくてなぁ。
はじめは、夢見ごこちっちゅうか、やわっちゅうか、たよりなさげなもんなんだ。
だがな、どんな子だってここに来たなら、どうあっても働かなきゃあならん。
自分の弱さを知らなきゃならん。
自分の強さに気づかにゃならん。
自分の生き方を見つけないといけないんだよ。
おぉ、銭ぃ婆のところに行く子もおるんだ。
片道電車でなぁ、一人っきりで行くんだよ。
もう長いこと乗りっぱなしで迷っとるやつもおるってうわさだ。
だれを待っているのか、何で待っておるのか、理由を忘れちまってるやつもおるらしい。
どういうわけだか、いつの間にかここから出て行ったやつだっておるってリンが言うとったなぁ。
ワシはかまたきしかできん。
いろいろは知らないんだよ。
銭ぃ婆のことは、こわいとしか聞いとらんのだよ。
そうか、おまえさんも行くのか。
間違えるなよ。沼の底っちゅう六つ目の駅だ。
まっくらで、深いみなそこになっとるってこわい話を聞いとる。
なにがあっても、と中で降りちゃならねえ。
何があっても、そこで降りなきゃならねえ。
えっ? 知っている?
おまえさん、そいつをだれから聞いたんだい?
ちょっと、かまじいさん!
銭ぃ婆のとこ行くきっぷなんか、いったいだれがもってるっていうのさ!
あ~あ、どうすんだよ!?
銭ぃ婆のところに行く気まんまんだよ!!この子もさぁ!?
え?あたいってかい?
なんだい、あんた。あたいはリンっていうのさ。
いつまでたっても、こんな使いっぱしりさ!!
ええ、あの子のことは、良く覚えていますよ。
そう、たしか、ちひろって言っていたわよね。
とてもいい名前だったわね・・・。
さぁ、あなたもゆっくりしていくといいわよ。
お茶を入れるからね、あったまっていきなさい。
フラフラじゃないの? え? 歩いてきたって?
あきれた子だね・・・。
この子を知ってるってのかい?
この子はカオナシっていうんだよ。
ふふっ、がんばりやさんになっているでしょう?
あんたにもおみやげを作ってあげるからね。
たくさんの細い糸をより合わせて作るんだ。
さぁ、髪留めができたよ。たばねてごらんなさいな。
あなたをしばるものはとっくにほどけています。
あなたはもう、子どものままじゃありませんよ。
たった一字でも、大切なはたらきがあることを忘れないで。
これからあなたは、大きくて広い世界を歩いてゆくのですから。
湯婆婆のけい約だって?
あの人のあしらい方は、あなたのこころの中にあります。
言葉の力を信じなさい。
それがあなたの力を解き放つ ら針ばんになるのですよ。
そろそろ迎えが来るころじゃない?・・・
ほら、さっそく来たみたいだよ・・・。
今度はだれが来たんだろうね。
ちひろの名は聞いたことがある。
ちひろのおかげで、わたしも私を取りもどせたんだよ。
さぁ、きみもちひろと同じように新しい場所に行けるはずだよ。
私は、いつも、どんなときも、そなたといっしょだ。
ちひろだってぇ~っ??
あの子は自分のことばっかりだったじゃないか!
働かせてくださいっっ!! だなんてさ。
なんでまた、あんなにたくさんの結界を張っておいたのに、くぐり抜けて、またぎ渡って、登りつめてやってきちまったんだろうねぇ。
いったいぜんたい、どうしてあんたみたいな子ばっかり、うちにやってきちまうんだろうねぇ。
え? 千やその子を呼んだのは私じゃないかってかい?
バカ言ってんじゃないよ!
勝手に来ちまったのさ、千もこの子も!
あたしゃ、よっぽどナメクジやカエルのほうが扱いやすいっていうのにさ。
口答えはする、きまりは破る、だだはこねる。
八百万の神々さまのお世話だって、まともにできゃしない。
挙句の果てに、名のある神さまだってぜんぜん畏れちゃいない。
まったくどうかしてるね! 人間の子ってのは!
・・・とっとと何処となりでも行くといいさ・・・。
やれやれ、まったく、とんでもない約束をしちまったもんさ・・・。
何してるの~!? 早く戻って来なさ~い!
だいじょうぶかい? さぁ、おいで。
お父さん?・・・・。 お母さん?・・・・。
これって?・・・・。 もしかして?・・・・。
でも、なぜ? どうして?・・・・。
あ! 私、銭ぃ婆さんからもらった髪留めをしてたんだ!
本当にあったんだ・・・。
いちばん大切な私の命と、つぎに大事な私の勇気を、守って、みちびいてくれてたんだ・・・。
お母さん! 私ね、この町の小川に、名前を付けてみたいの。
お父さん! 私ね、この町で、お話したい人を見つけたいの。
たぶんね。きっとね。
これからのわたしは、大丈夫だって思うの。
だれにだって。
いつだって、どこへだって、だれとだって
色あせることのないステキな旅が、始められます。
そこには、あなたを待っている人がいるかもしれませんよ。
あなたに、"名前を呼ばれたい" って願っている人が、ね。