「新世界より(TVアニメ動画)」

総合得点
87.4
感想・評価
3348
棚に入れた
15970
ランキング
156
★★★★☆ 3.9 (3348)
物語
4.2
作画
3.6
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.8

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

人類に超能力など1000年早い

原作小説は視聴後に購読。

超人的な能力を獲得したキャラ同士の熱いバトル!
燃えますし、凡人が不可能なことが出来て、夢があってスカッとしますね♪
けれど、そうした多くの作品には欠け落ちた、
というより無かったことにしている視点があります。
それは倫理観と歯止めです。

特に手に触れてない遠くの物に影響を及ぼす系のスキルについて。
能力者が街中ですれ違ったコイツ……ちょっと気に入らないな。消えてくれないかな?
彼が願った瞬間、ソイツの頭はスイカ割りみたいに弾け飛んでTHE END。
もはや物語にならないどころか、文明が成り立ちません。

いや?そんなの破壊衝動を抑えきれないサイコパス能力者を隔離しとけば良いだけでしょ?
と思われるかもしれませんが、これはそんな生易しい問題ではありません。

人間心理には意識の水面下に膨大な無意識のゾーンが広がっています。
ふとした拍子に無意識のエリアから殺意が浮上した瞬間、能力は暴発してしまうのです。
思考→即発動という能力体系は、本来、
原始人に安全装置のない核を持たせるくらい危険な設定なのです。

ところが、こんな野暮な理屈を突き詰めて世界観を構築してしまった
驚愕のSF作品がここにあるのです。


以下、ネタバレ長文
(一応、最重要の核心だけは避けてはいるつもりですが、
この作品に関しては、できるだけ予備知識なしで衝撃を受けて欲しい
という気持ちもあるので、バレても構わない方だけご覧下さい)
{netabare}
本作では“PK”と呼ばれる超能力を発現してしまった人類により世界の文明は崩壊。
その後、数百年に及んだ、思考→即抹殺する“PK”能力者の人間性なき圧政等により、
人類は衰退への下り坂を転がり落ち、日本の人口は縄文時代以下に……。

瀬戸際に立たされた人類は、“PK”能力者が人間を殺害しようと意図した瞬間に、
自身が死に至る“愧死(きし)機構”を遺伝子に組み込み、
“PK”も何時しか“呪力”と名を変え、
日本人は、千年後の未来に、辛うじて集落を維持しています。

それでも遺伝的突然変異のリスクは常にあり、
呪力で人間に危害を加えることができる“悪鬼”が生まれないか?
大人たちは教育という監視装置を通じて
子供たちの誕生と成長にビクビクしながら暮らしているのです。


刺激的な設定由来の描写の数々が心に刺さる本作ですが、
その中でも私の脳裏に焼き付いているのは、
やはり無意識も含む思考がもたらす災厄について。

例えば“八丁標(しめ)”と呼ばれる注連縄(しめなわ)により
コロニーは外界から身を守っている……。
というのはタテマエで、本当は呪力を持った人間の意識的、無意識的な思考が、
世界に影響を及ぼすのを防ぐため。

千年後の東京は廃墟となり、凶悪な“新生物”が徘徊する地獄と化していますが、
それも、呪力を持った人間が魔都・東京という噂を共有し続けた結果、
少しずつ八丁標から漏出した邪悪な思念が東京に押し寄せ、
東京の地獄化がさらに加速した結果で……。

この辺りの件が、もう本当に悶えるくらい好きです。

こうして私が狂喜している所に、ラスト判明する真実に関しては、
何だコレは!?凄すぎるだろう!と叫びたくなるくらい大好きです。{/netabare}


作画は人物描写に影を当てないベタ塗り表現法が特徴的。
この表現には表情に乗せた心情を、より強く視聴者に与える効果も期待できるのでしょうが、
反面、生半可な作画兵力だと、作画崩壊のダメージが倍加する諸刃の剣w

痛かったのは、作画の底が中盤の
{netabare}同性愛描写が極まった、一見するとカオスな回に来てしまった点。

原作を読めば、同性愛についても、少年少女の野放図な異性間交遊、妊娠による、
“悪鬼”誕生リスク軽減のための、大人たちによる監視に圧迫された思春期の性衝動が、
同性愛方面に発散されていると理解することができますが、
アニメ版だと説明不足と作画力低下が重なり、
何だかエラい魔境が出現しているなwと視聴当時、原作未読組だった私は若干引いてみたりw{/netabare}


キャストについては、当時、新人若手声優だった種田 梨沙さんの主役抜擢が印象的。
いきなり花澤 香奈さんらと主要キャストで共演し、ED主題歌まで歌唱させるとは、
また思い切った手を……と感じたものです。
ただ、それも種田さんの、その後の活躍を思えば英断でした。


“新世界”とは名ばかりの、中々、希望が見出せない、
しんどいディストピア作品ですが、興味を持たれた方には是非飛び込んで欲しい。

私にとっては2010年代のアニメ作品の中でも忘れられない屈指の衝撃作です♪

投稿 : 2020/01/01
閲覧 : 806
サンキュー:

41

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