「星合の空(TVアニメ動画)」

総合得点
67.6
感想・評価
251
棚に入れた
699
ランキング
2391
★★★★☆ 3.3 (251)
物語
3.1
作画
3.5
声優
3.4
音楽
3.4
キャラ
3.2

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ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

星合の空 レビュー

作品が未完ならレビューも未完ということで・・・

Introdution(公式サイトより)
監督・関根和樹が送る、待望のオリジナル新作アニメーションが始動!
キャラクター原案には、新進気鋭の人気イラストレーター・いつかを起用し、
関根和樹が紡ぐ物語を、繊細に描いていく。
舞台は廃部寸前の男子ソフトテニス部。
キャプテンの新城柊真は、転校してきたばかりの
桂木眞己をソフトテニス部に誘うが・・・。
様々な思いや悩みを持つ少年たちをソフトテニス部を舞台に描く、
オリジナルテレビアニメーション。

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さて、書こう書こうと思ってさぼりにサボり、気が付けば年末、大晦日です。
1話見るごと当作品の感想を考えるくらいには、楽しんでいました。

この作品の第一印象は、親という物が非常にフォーカスされている事と、それと同時に中学生の部活の青春の物語が同時に進行していることでした。

この作品の親、について。OPやEDのアーティストが曲名を「水槽」「籠の中の僕らは」という、作品中の親というのを子供を縛る枷のように受け取っていることが伺えます。
眞己の家庭環境を例に挙げれば、シングルペアレンツであり、元父親が暴力を振るう一方で、母親の事を眞己はかなり大事に思っています。
また柊真も、兄が、柊真を大事に思っていることが伺えます。
そこから考えるに、この作品のテーマは、親は枷でありいらないという所にテーマがないように感じていました。

視聴者はOPやEDで受ける、親不要論的な歌を、全肯定で受け入れる人もいれば、私のようにそうでないと感じながら本編を視聴する人もいるのでしょう。
それこそ家庭環境の違いにより、親に対する意見の違いが現れるポイントでしょうね。

では、この作品の真に伝えたい親に対してのテーマはどこだったのか。私はそれを探しながら視聴しました。
しかし、視聴すれば視聴するほど、親子の問題が増えていきます。
テニス部のほぼ全員の親が何かしら問題を持っています。
それは大なり小なり、彼らを縛り付ける、「枷」のようなものである事は間違いありません。

しかし、その枷が、親が駄目なのがいけない、そういう結論には、ないように思えます。
何故か。御杖夏南子という、テニス部を応援する女生徒がいます。つまらない絵ではなく、彼女が描きたい絵の勉強をしたいという事を、親や大人、誰かにつまらない、くだらない、無理だという事を言われても、それでも描こうと決心したこと。
彼女が絵を描くことを決心し、その道を進んでいる事の価値は、
彼女自身が選んだからという所にあると思います。
そこに他者の決定が存在しない、だからこそ、彼女が変わったという事象に価値を視聴者が見いだせるのだと思います。

つまり、構造的には、周り(家族を含む)によって決定される行動は、物語り的には負の面を持ち、
物語の主人公が自身の意思をもって決定し行動することに正の面を見い出す。
この正の面がこの作品のテーマに近いところだと思います。
つまり、周りの環境をはねのけて、自分で自分の人生を決定することを描くことが、この作品の、親という一つの環境に対してのテーマではないでしょうか。

さて、それでも、親、という物は、子供にたいして、一方的な力関係を持っています。肉体的にも、精神的な支配の意味でもそこから抜け出すのは難しい、と思う人もいるかもしれません。

本作品は、主人公たちが、自我によって自身を決定する力の強さを信じている部分と、その強さを親の強権と対峙させていると感じました。
未完であるため、その対峙の結末がどうなったか、というのは書けませんが、私個人は、彼らが自分自身で自分の人生を決定することが出来るようになる意志の強さを描いた結末を望んでいましたね。

その意志の強さ、というのは、周りを納得させて黙らせる強さ、というのも含んではいますが、周りを気にしない強さが含まれていると思います。そういったものも描かれていると思いますね。

さて、親、についてはこれくらいにして、同時進行するテニス部の青春物語について。
親の話題が非常に不穏でありながら、部活の描写に関しては非常に爽やか。
しかし、その部活動での青春という聖域を侵害しようとしてくる親というのが、非常に不穏です。正確には各家庭の問題によって、部活から一生徒が引き離されることが、美しいものを破壊するような構図と似ている、という印象でしょうか。

また、この作品は眞己という天才によって、意識の変わっていく部員たちを描いています。御杖しかり、向上心がなかったのが、上へ向いていきます。そういった部員たちの変化、熱の高まりも見どころだと思います。

さて、いかがでしょうか。星合の空。最後に皆さんすると思うけど、タイトルの語源を辿ってみましょう。

建礼門院右京大夫集 現代語訳より

 なに事もかはりはてぬる世の中に契たがはぬ星あひのそら
  何事も変わり果ててしまった世の中で、彦星織姫の逢瀬は約束を違えず行われている。

七夕の夜の彦星と織姫の逢瀬、まずはロマンチックなイメージを想起させますよね。
そして、変わり果ててしまった世の中というのは此の世の人の関係性、約束を違えて変わってしまった誰かとの関係の悲しさにうちひしがれつつも、織姫彦星の逢瀬に思いをはせて、変らない人の関係の美しさを夢見ている。そのような印象を受けました。
この作品が、そのような約束を信じる思いを込めた作品であってほしいですね。
それでは、良いお年を!

投稿 : 2019/12/31
閲覧 : 284
サンキュー:

36

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