ウェスタンガール さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
デッド エンド
ヤクザに手足を切り落とされ、瀕死の主人公“櫟士”(いちせ)が呻き彷徨う世界は暗く陰鬱だ。ドクと名乗る女医に拾われ、この世界でのステイタスであるテクノライズという義肢を得た後も、彼に生きる目的など見出せる訳も無く、本能のままもがき続けてゆく。
そんな彼を観察し、時には導こうとするが如く振る舞う少女“蘭”、彼女は未来視という能力を持つがゆえ、街から少し距離を置く“ガベ”の民から崇拝される存在だ。
少しずつ明らかにされるこの世界の成り立ちは脆く儚いものだ。
種としての人類が終わりを迎え、テクノライズを仲立ちとした精神の不死を目指す特権階級の野望に、“流9洲”という街を支配するヤクザ組織“オルガノ”と、それを良しとしない労働者の秘密結社“救民連合”との抗争を巻き込んで、それがドミノ倒しの如く崩れてゆく様が淡々と描かれてゆく。
ここで、抗争の引き金を引くのが、上層からやって来た謎の男“吉井”である。名バイプレーヤーであった(惜しくも2017年、56歳で他界)井之上隆志さんの異様な台詞回しが光る。話の導入部に圧倒的な存在感を与える怪演だ。
彼の行動は、オルガノの幹部である大西京呉に主人公が関わる動機を与え、ここに至って、メインストーリーが動き出すことになる。
狂気に取り憑かれてゆく様は、J・G・バラードの「ハイライズ」、ゴールディングの「蠅の王」を想わせる。
テクノライズが産んだ環境が人々に働きかけ、そこに狂気が産まれる。
(追記:再び櫟士が地下に戻ろうとする中で述べられるアフォーダンスという概念がカギとなっているようだ。ウィキに基づいて、自分なりに解釈するに、この放浪譚は、環境に実在する動物〔特別なテクノライズを施された主人公〕が、自らが生かされている世界〔流9洲〕を探索することによって真理に辿り着く物語と言えそうだ。どちらにしても、アフォーダンスはゲシュタルト心理学の流れをくむ考え方だそうで、私には難しすぎるのであるが…)
“櫟士”と“蘭”が見るであろうその先に救いはあるか?
全てが終わりを迎え、静謐の中でラフィアが輝く。
うーん、自分で何を言いたいのか解らなくなってきたと言うのが正直な所だ。
取り敢えず、諸兄には、苦痛に満ちた3話をくぐり抜け、物語の核心に迫ってほしい。
他の作品とは異質の怪作であることは請け負う。