「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-(TVアニメ動画)」

総合得点
75.9
感想・評価
409
棚に入れた
1716
ランキング
757
★★★★☆ 3.7 (409)
物語
3.5
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.7

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ネタバレ

なばてあ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ファンサとアンチ本格の拘束封印

自分はいちおう月厨のはしくれ。FGOもリリース直後からプレイしている、・・・2部5章はすばらしす(略)。一方で、ミステリは新本格ブームに乗っかって、そちらの趣向に染められてもいる。そんな作画ヲタ見習いが本作を観た感想は、というと、案の定というか、ちょっと厳しい印象が大きくなってしまった。もったいない。じつにじつにもったいないと思う。こんなに上質な作画なのに。

まず型月というコンテクストからいうと、どう贔屓目に見たとしても、ファンサの範疇からはみ出る部分がほとんど無いとしか言いようが。もちろん、若干はこの作品を入り口として型月世界へと漕ぎ出す視聴者もいただろうけれど、それは絶対に多くない。魔術、魔術回路、聖杯戦争、サーヴァント、・・・その解説はあまりにも解説じみすぎていて、うーん。

とはいえ『Fate/Zero』さえ見ていれば、うまくこのファンサに乗っかっていける。型月云々は抜きにしても『Zero』だけは万人が見るべき作品だとも思うので、その意味で、ファンサだからというだけで、この作品を貶すのもすこし気が引ける。ひとえに『Zero』の出来の良さにかけての躊躇なのだけれど。

さて、ミステリのコンテクストに照らすと、評価はいっそうきつい。「フーダニットもハウダニットも問題ではない。魔術師はそのようなもの、いかようにも操作できるし、考えるだけ無駄。残るハウダニットが考えるべき問題なのだ」という劇中のセリフを引くだけで、そのきつさは明らか。視聴者がなにか能動的にその推理に参画する可能性はあらかじめ徹底的に排除されている。究極の「アンチ本格」な作品に仕上がっているということ。

そんなわけで、ストーリィはかなり見る人を選ぶトーンになっている。でも、問答無用でクオリティを見せているのが作画と音楽。美術、撮影、作画、そのすべてが高い品質を保っている。「最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)」が抜錨される場面は何度見ても胸が躍る。エフェクトが確たる空間のなかで躍動する痕跡が網膜に焼き付く。音楽もそう。Kalafinaと袂を分かったばかりの梶浦氏の気合いみなぎる劇伴は静かな曲調でも迫力満点。

もろもろ勘案して、突出した目を見張る要素が複数あるにもかかわらず、引いてみたときの完成度はあまり高くない。そんなちぐはぐな作品になっている。・・・とはいえ、作画アニメは、そんなちぐはぐ感のある作品のことこそを指すという伝統的な習わしもある。完成度が高すぎると作画を見るのが難しくなる。いろいろ気が散ってしまうからこそ、作画の良さみを眼の端に引っかけることが可能になる。その意味で、玄人向けの作品だと思う。

衝撃:★★★★
独創:★★★
洗練:★★☆
機微:★☆
余韻:★☆

投稿 : 2019/12/28
閲覧 : 197
サンキュー:

4

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