なばてあ さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
リアルとファンタジーの鳥葬
OPとED、楽曲も映像もすばらしすぎて、一番印象に残っているのはまず、そこ。
ストーリィの構成は、まあよく言われているとおり、南極に着いてからをしっかり時間を取って描いていることが斬新。というかそれだけが斬新。そこのみが斬新。ひらたく言うと、ほかはふつうだったと思う。わるい意味でも、よい意味でも。ただ、後半の個人個人にフォーカスする話数は、セリフの解像度がすごい高かったのはまちがいない。余白の使い方も秀逸。
キャラデザも古風、あえてもったりした仕上がり、ただハイライトの置き方がちょっと新しいのかなとは思う。輪郭を逆光気味にまるっと飛ばすというのはすごい違和感があるけど、その違和感はイヤな感じはしなかった。このハイライトがなかったら、ちょっと画面がズルッと流れちゃったんじゃないかなっていうくらい、ほとんど唯一のフックになっていた。
美術のすばらしさについては、もはや言わずもがな。後半の南極を活かすための前半の群馬描写もフォトリアルなディテールを思い切って寂れた方向に振り切っていて感心した。その寂れた景色が、ちゃんとストーリィ上の機微でもって、ラストに反転するところまで含めて、作品すべての要素が、デザイン的によくよく計算されているのも如才ない。
マーケティングの勝利、だと思う。ライトユーザは完成度が高くないとダメ。ライトユーザは作画よりも美術に心が動かされる。ライトユーザはあまり萌えキャラすぎると引いてしまう。そういうヘビーユーザに対する引き算も含めた、徹底したマーケティングの果てに、『けいおん!』の「彼女たち」を再生することに成功したということ、だと思う。
あとはちょっと、ひとりごと。 {netabare}わたしはこの作品の起点となった、とある書籍の著者が友人で、よく飲む。彼女から南極の話はよく聞いていた。その彼女が南極にたどり着くために払った努力も、定量的に認識している。その経験をふまえると、この作品の主役たちは、南極に行くための努力が足りてないなと率直に思う気持ちが止められなかった。この身勝手な気持ちをなんとか括弧に入れることで、最後まで見た。
最後まで見て、でもちゃんと、11話と12話は感動した。南極という、わたしの友人にとっての大切な場所が、商業的に昇華されてしまっていることに複雑な気持ちを抱きつつ、アニメの群像劇として、割り切ってその筋で感動することができた。ことほど左様に人間は複雑に作用することができる。キャラクタたちのストレートさは、見ているこちらの複雑さを喚起したということ。 {/netabare}
それこそがファンタジーだし、それだけがリアルだと思う。
衝撃:★☆
独創:★☆
洗練:★★★★
機微:★★★★★
余韻:★★★★★