レオン博士 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
失うことの圧倒的な恐怖と嘆きを丁寧に描く、心に響く名作
社会現象にまでなっていますから、あえてどんなアニメか説明する必要もないですね。
禰豆子を守るため、圧倒的に強い力を持った敵と必死になって戦う炭次郎の姿に心を打たれるファンは多いと思います。
シナリオとしては、少年マンガらしい王道なシナリオで、好き嫌いがあまり分かれない大衆受けする作品だと思う。
あまり奇抜な展開、独特な世界観はないけれども、誰もが怒り、悲しみ、歓喜する。
そんな王道路線のシナリオをひたすら丹念に、鋭利に、丁寧に書き上げたのが、この鬼滅の刃だ。
作画、キャラクター、シナリオ、すべてが丁寧で繊細で、美しい芸術作品のようだ。
特に、登場人物の心理描写が秀逸で、心を揺さぶられる。
私は原作もアニメ化前から読んでいて、正直ここまでブームになるとは全く思っていなかったが、大好きな作品がここまで世間から支持を受けたことは心の底から嬉しく思います。
私はこのひたすらまっすぐで、わかりやすい物語を熱烈に支持します。
{netabare}
とりあえず禰豆子はひたすら可愛い。
セリフがほとんどうめき声なのにこんなに可愛いなんて!
でもやっぱりちゃんとした言葉で炭次郎に伝える禰豆子も見たい!
「お兄ちゃん、守ってくれてありがとう」って、陳腐でいい、ありきたりでいいから言葉にして感謝を伝えるところが見たい。
その陳腐な言葉を聞きたくて、ずっと炭次郎の戦いを見守っていた視聴者も多いのではないだろうか?
それは、必死に命を懸けて戦ってきた炭次郎の苦しみが、葛藤が、すべて報われる瞬間だから。
さて、禰豆子の可愛さに異論は一切認めないとして、
鬼滅の刃の魅力は王道な少年マンガの展開に加えて、敵である鬼にもちゃんとした掘り下げ、背景があるという点だと私は思います。
物語において敵の役割はとても重要だ。
敵である以上、ただひたすらに憎たらしくて、絶対に倒さなければならない卑劣極まりない極悪非道な巨悪でもまったく構わないと私は思う。
ところがこの鬼滅の刃の敵は、そんな憎たらしいだけの敵ばかりではない。
炭次郎は優しいので、倒さなければならない敵だと思いながらも、敵の歴史を知り、素性を知り、闘う理由を知り、敵の怒り、悲しみ、嘆き、苦しみを理解し、闘うことに迷い、ただでさえ強い敵に同情してしまう。それでも譲れない想いで格上の敵を倒し、敵の想いまで背負ってさらに精神的に強くなる姿に、師匠や仲間から甘いと言われてもなお、許せないはずの敵にさえ優しさを捨てられない炭次郎に、震えるほどのカッコ良さを感じる。
炭次郎だってただ甘いだけじゃない、何よりも大切な、家族のために、仲間のために。
「失っても、失っても、生きていくしかないんです。どんなに打ちのめされようと!」
そして、倒された敵にすら魅力を感じる。
敵だって必死に生きてるんだよ。ただ悪さをするために生きているわけじゃない。どれだけ凶悪な敵であっても、必死に生きている。最後の瞬間まで、ちゃんと生きているのだ。
だからこそ、死ぬ間際には、感情をあらわにする。
そういった敵の死に際の想いが描写されているからこそ、仲間が大切なものを奪われ、失った時の悲しみが、嘆きが、より一層際立つ。
善人も悪人も、強者も弱者もみんな、生きているんだよ。
一生懸命生きて来たからこそ、大切なものを失った時の痛みは、苦しみは計り知れない。
失うことで再認識する、そのかけがえのない大切さ。
失った後に気づいても、もうどうにもならない。
大事なものを失うことの圧倒的な恐怖と悲哀!
それは敵も味方も一緒だ。
そんな当たり前のことをこの作品は、あり得ないくらい丁寧に描写している。
それが鬼滅の刃のすばらしさであり、これだけ多くの人から支持を集める理由なのではないだろうか?
純粋な想いは、人の心をつかむ。
陳腐だなんて言わず、純粋に、感じるままに炭次郎の生き様を見てほしい。
私は、多くの人にこの作品のすばらしさを伝えたい。
{/netabare}