テロメア さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
【簡単解説】広域重要081号事件に関するレポート
本作は基本1話完結でバラバラのストーリーが展開されて行きますがその中で一見関係のない点と点が徐々に線で結ばれていき、大きな闇が見えてくきます。よく作り込まれたストーリーで人気の要因の一つになっています。
見所は激しい戦闘、サイバーパンク、ミリタリー調、そして推理、頭脳、電脳戦。そのどれもが面白く、飽きませんでした。どこか哲学的で教訓や人生観などを含む話も多く興味深いです。
それではレポートです。
各々の目的などに着目しつつまとめてみました。
以下、事の顛末に関わる重大なネタバレを含みますのでご注意ください。
○最初に各組織、登場人物とその目的について
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公安9課
笑い男事件の真相究明
警視庁上層部
笑い男事件真相の隠蔽
セラノゲノミクス社 社長セラノ氏
村井ワクチンに関わる闇を知るものの沈黙を守っている。
警察に参考人として軟禁状態。
ナナオA
警察の仕立て上げた笑い男
笑い男
村井ワクチン隠蔽工作の摘発、公的機関による詐欺行為に義憤を覚える。
薬島薫 幹事長
企業テロの黒幕、政界の裏の顔。警察や厚生省、軍部に太いパイプを持つ。
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各組織の説明などの詳細はこちら、長いので飛ばして構いません。
→{netabare}
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公安9課
主人公 草薙素子がまとめている公安の少数精鋭部隊。笑い男事件の真相究明を目的としている。公安ではあるものの軍上がりが多く、戦闘、電脳戦に特化している機動力のある部隊。課長荒巻が極めて優秀であり、少佐たちの行動をサポートしている。
警視庁特捜部
インターセプターの被害者。笑い男事件の捜査をしているが、その真相に触れないよう上層部に監視されている。トグサの亡くなった友人山口や顔に痣のある深見も在籍している。
警視庁上層部
笑い男事件の真実の隠匿のためインターセプターによる捜査員の監視。また本筋には関わってこないが警視総監である大堂はセラノゲノミクスと癒着している。笑い男事件の隠蔽。薬島の駒の一つ。
セラノゲノミクス社
マイクロマシンによる電脳硬化症の治療を進めている企業の一つ。同病に効果のある村井ワクチンを排斥を知りながらも沈黙を守っていた。また笑い男事件で搾取された企業の一つ。社長のセラノ氏もまた笑い男事件の真相を知る人物で、警察により軟禁されていた。
笑い男
公的機関の詐欺行為や村井ワクチン隠蔽工作の摘発を目的としている。別名アオイ。彼は自身のことを電脳化の権化と言っていたが、電脳硬化症、電脳閉殻症であるかどうかは不明。(しかし授産施設とは何らかの関係はある模様)プラグが普通よりも多いのも気になります。少佐を攻撃した攻性防壁はおそらく授産施設からの介入。
(作中、僕の電脳は硬化しかかっていると言いましたが、あれは頭が固いというのを硬化とかけただけ?)
彼の行動については後述します。
薬島幹事長
作中では終盤に登場する人物、今来栖の電話相手が与党本部のものであったため、イシカワはそこから見当をつけた(?)。笑い男事件の真の犯人。企業テロ等の詐欺行為で身代金と公的資金、株の空売りなどで膨大な金銭を得た。豊富な人脈、力を持つ。軍部の出であり、海自に顔が利く。
警視庁特捜部 深見
作中もう一つの黒幕、彼が何者であるのか、その描写はない。最後のセラノ氏暗殺はおそらく彼によるものであるが・・・。
背後には一体何がいるのか。闇は深い。
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登場人物の目的を理解できると概ねストーリーも、また行動理由もわかりやすくなるのではないでしょうか。
○次に、重要なキーワードについて
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笑い男事件
戦後最大の企業テロとされる。謎の特A級ハッカーによる犯行で数多くの企業がその脅迫により株価を上下され、多大な損害を被った。最後には公的資金が投入され、事件は忘れ去られた。
電脳硬化症
その名の通り電脳が効果していく病。作中でもこの症状により亡くなった者も多数存在している。社会的病の一つ。
村井ワクチン
電脳硬化症の特効薬。メカニズムこそ不明なものの確かな効果がある。日本薬事審議会により不認可とされ現在では認可されているものの、社会的には抹殺された薬。
マイクロマシン療法
電脳硬化症に対する治療の一つ。効果は薄いものの現在知られている中で最も有効とされる治療法の一つ。
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○最後に、各々は何故あの様な行動をとったのか
※重大なネタバレを含みますのでご注意ください。
それではこちらから→{netabare}
笑い男は何故消えたのか?
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初めの事件で村井ワクチンの効果について公表するようにセラノ氏を説得、誘拐するも その事件が引き金でニセ笑い男による企業テロが次々におこった。
真の笑い男はこれを受け、目と耳を塞ぎ表舞台から姿を消すことにした。企業テロを起こすために行動したわけではないからである。
だが、セラノと警視庁の癒着を知り、憤慨、また立ち上がることになる。
or should i ?{/netabare}
少佐は何故笑い男に...?
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実質軟禁されているに等しいセラノ氏を助け出し情報を聞き出すために、またセラノ氏に協力してもらうためにである。早期解決には誘拐以外に軟禁から助け出す方法が9課にはなかったと考えられる。実際の笑い男のようにリアルタイムの視覚情報書き換えではなく、インターセプターを経由しての書き換えであるため仕掛けられた捜査員以外には有効でない。その結果写真を撮られてしまう。
Stand Alone Complex.
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荒巻課長の作戦
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公安9課がセラノ氏を拘束、保護するも工作を薬島に悟られる。薬島はそれを誘拐行為、犯罪行為であると公表、マスコミにリークされ、特殊部隊法案まで可決される。薬島はさらに海自の特殊部隊まで投入。このことで公には存在しないはずの9課が白日の下に晒されてしまう。
荒巻は首相に早期逮捕、更迭の意思がないと知り長期戦になると考え、薬島更迭の鍵となるデータを検察に譲渡する。
その上で荒巻は9課メンバーの生存を願い、一度は敵の思うままに9課を表向き壊滅させることにした。後に再結集する日を待つ。
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村井ワクチンは何故黙殺されたのか
{netabare}今来栖の村井博士に対する嫉妬や、マイクロマシン療法の否定につながる等の理由でなんとも陳腐な話である。今来栖や薬事審議会、厚生省などによる犯行。これには薬島はあまり関与していないと思われる。{/netabare}
笑い男事件の真相
{netabare}笑い男のセラノ氏誘拐事件を利用した薬島による金融犯罪。殺人ウィルスの混入の脅迫なども薬島らによるもの。株価や公的資金、身代金、献金等の裏金などで多額の金銭をせしめた。その隠蔽工作のために警察でインターセプターを導入し捜査員を見張り、ニセの笑い男をでっち上げ事件の終息を狙った。セラノ氏の軟禁も真実を隠すため。
そこに公安9課が待ったをかけたのである。
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整理してみると複雑にみえるストーリーもわかりやすくなりますね
★ここまでを簡潔にまとめると★
{netabare}
❶今来栖含む薬事審議会は村井ワクチンを自らの利益と嫉妬から黙殺する。それを笑い男(アオイ)が摘発しようとした。
❷薬島は笑い男を利用し、企業テロを行った。それを隠すために、ありとあらゆる工作をした。公安9課がそれを嗅ぎ付ける。
{/netabare}
という二本立てのストーリーになっています。
本筋は割とシンプルですね。
解説はここまでです、どうでしょうか。
○では、感想に移ります。
前述しましたが、1話完結でバラバラのストーリーが実は繋がっていた、という伏線が多くとても楽しめました。関係のなさそうなストーリーでもゴーストや電脳硬化症、ネット、Ai、擬体といった説明としてのパートであり、その時代背景を知る必要な話であって、ストーリーに奥行きをもたせる良い脚本、構成でした。1話完結のショートストーリーで展開していくアニメの中でも最も優れた構成の作品の一つであると私は思います。
また所々攻殻シリーズの映画や漫画のシーンのオマージュがあったりしてとても楽しめました。もともと本作は少佐が人形使いと会わずに9課として活動していたら・・・というIFストーリーで、人間味溢れる少佐、メンバーの知られざる姿が多く描写され、面白かったです。
タチコマもすごくチャーミングでいい。
少佐の「サイトーそいつをよこせえええええ!」がカッコよすぎます。{netabare}このシーン、珍しくクールじゃない少佐、トグサがやられてそうとうキてたんでしょう、好きなシーンです。トグサがCIAに殴りかかるシーンも好きだなぁ。{/netabare}
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
何かありましたらコメントお待ちしています。