「パプリカ(アニメ映画)」

総合得点
72.1
感想・評価
836
棚に入れた
3966
ランキング
1207
★★★★☆ 4.0 (836)
物語
3.8
作画
4.3
声優
3.9
音楽
4.0
キャラ
3.8

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ネタバレ

USB_DAC さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

パプリカはいつだって味を調え引き立てる

物語:
キャッチコピーは「私の夢が、犯されていく」。原作は筒井康隆氏で
今敏監督の遺作となった長編サイコスリラー作品です。R指定ながら、
第25回ポルト国際映画祭受賞を始め、数多くの受賞実績があります。

どれが現実でどれが夢・虚構なのかと迷ってしまうほどのカオスで狂
気じみた世界。現実と虚構は同等であり、虚構での体験は現実に大き
な影響を及ぼすという強いテーマ性を感じる作品です。

作画:
非常に細かいところまで描かれた小道具や背景。そして時折見せる見
事な立体感と遠近感。これはアートだと評するコアなファンがいるの
も納得する作画です。ゴミゴミしたパレードの色使いや動きは一切の
破綻を見せない。そしてパプリカの皮を剥ぐ描写はとても衝撃的で強
烈に脳裏に焼き付いています。

声優:
総じて不満は無く納得のキャスティングだと思います。中でも千葉敦
子兼パプリカを演じた林原めぐみさん。対極の演技は実に見事でした。
それにしても時田浩作を演じた古谷徹さん。肥満体の声に悩みアムロ
の声を自ら嘆願したとは意外でした。それと粉川刑事の夢に出て来る
バーテンの二人。まさかまさかの人物です。

音楽:
1997年、『ベルセルク-forces-』にて一世を風靡し、その後も容姿は
多少変わるも恐ろしく独立独歩な曲を輩出し続ける鬼才平沢進。数音
奏でただけで頭の中をその色に染める『白虎野』。難解と評されるこ
の作品のイメージを更に不思議感でいっぱいにします。

キャラ:
何と言っても千葉敦子とパプリカ。この二人の圧倒的な存在感が今作
品の魅力を支えているのは間違いありません。


[簡単なあらすじ]

精神医療総合研究所に勤める千葉敦子。親友である時田浩作が開発を
した他人の夢を共有可能な『DCミニ』というデバイスを使い、患者
の治療を行うサイコ・セラピスト。夢の世界では別人格のパプリカを
名乗り、精神を患う者の夢に入り込み治療を行っている。

その後、研究所からデバイスが盗まれたこと切っ掛けに、現実世界で
次々と奇妙(精神崩壊)な事象が発生する。千葉敦子ことパプリカは
島所長の友人である粉川警部の強力を得て、現実と虚構が入り乱れる
混沌の世界で、デバイスを盗んだ犯人を追いかける。


[感想]

記憶と経験による欲望が引き起こす『個人的無意識』。創造と普遍的
イメージを源泉とする『集合的無意識』。J・フロイトとC・G・ユ
ングという二人の心理学者によって提唱された異なる夢の理論を独自
に解釈したD・フォンタナ。これは『夢の世界』という彼の著書を引
用し繰り広げられる様々な夢の形。

そして技術が進み、簡単に他人の夢の中に入り込み、本当にそれを共
有することが出来る様な世界になったら。

一緒に鳥の様に自由に空を飛び、人魚の様に自在に海を泳ぐ。映画の
主役になって活躍したり、愛する人となら夢の中で恋を続ける事さえ
出来る。もし悪意によってこの作品の様に夢を乗っ取られ支配されて
しまったら。その虚構から逃げずに真に向き合い戦うことで、それは
簡単に抜け出すことが出来るはず。そう言われている様な気がします。

そしてトラウマを消す弛まぬ努力。現実と虚構が曖昧な今の世の中に
於いて、それはとても大切な事なのかも知れません。

夢を意図的にコントロール出来、五感も起きて活動しているときと変
わらないると言われる『明晰夢』。それは睡眠中の前頭葉の半覚醒状
態によって引き起こされ、今や数々の研究(電気的な脳の実験)によ
り、その方法もある程度確立されつつあると言います。

いつの日かその夢で晴れ渡る大空を果てしなく飛んでみたいものです。




以上、長文拝読頂きありがとうございました。


2019.11.25 初回投稿
2019.11.25 誤字修正
2019.11.26 誤字再修正 

投稿 : 2019/11/26
閲覧 : 341
サンキュー:

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