雀犬 さんの感想・評価
3.5
物語 : 2.5
作画 : 2.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
並列世界で迷子になりました
原作は1996年に発売された伝説のエロゲー。全26話の作品。
僕は原作をプレイしていないのだけど、YU-NOという作品自体は知っていました。あずまん(東浩紀)が本作を実例として「動物化するポストモダン」でデータベースがどうたらこうたら、シュミラークルがうんたらかんたら、という小難しい話をしていたことを覚えている。苦手のエロゲ原作アニメ、しかも2クール作品を視聴しようと思ったのはあずまんがYU-NOを絶賛していたような記憶があったからですね。
YU-NOはループ系物語の先駆的な作品とされています。主人公の有馬たくやはある日、父親の遺品である謎のデバイス(リフレクター・デバイス)を受け取ります。このデバイスはゲームのセーブポイントのような機能が備わっており、デバイスに装着されている宝玉の数だけセーブし、時間を元に戻すことができます。このリフレクター・デバイスを使い、ヒロインたちを攻略すること、そして、失踪した父親の行方を追うことがおおまかなストーリーの目的です。
結論から言ってしまうと、アニメ版YU-NOはゲーム原作組にも初めて本作に触れる人にも不評だったのですが、僕は途中までけっこう楽しんで観ていたんですよね。
主人公のたくやの父、有馬広大は「日本で400年ごとに大規模な改革が起こる」という「400年周期説」を提唱し異端児として論壇を沸かせた名の知れた歴史学者でしたが、妻は自殺。その後、教え子の亜由美と結婚するのだけど、その後に彼女を残して失踪してしまいます。
たくやは学者として父親を尊敬しているのですが、学校での成績の悪い彼は劣等感を抱いています。また、再婚後に若い妻と息子を残して出て行った父親に対して、女性を守れない甲斐性なしの人間だ、と軽蔑しているように見受けられます。
ははぁん、要するにこれはオイディプス・ストーリーではないかと。本作には亜由美のほかに同級生のヒロインが2人いて、それぞれに弱みを抱えています。たくやが彼女たちを窮地から救い、結果として男女の関係になる(原作ではそうなるんでしょ?)こと、そして父親からの挑戦に立ち向かい、最後には研究を引き継ぐ形になって、彼の学説の正しさを証明し世に知らしめることで「父殺し」を果たす話なんだろうと考えていたわけです。
と・こ・ろ・が そうではなかったんですね‥‥
第2部になってから、いろいろと予想外のことが起こりすぎて、完全に迷子になってしまいました。禁忌に触れるけっこう衝撃的な展開もあったんだけど、全体として何を伝えたい作品なのか僕にはよく分からなかったです。{netabare}結局、父親とも再会しなかったし、YU-NOは唄わなかったし。{/netabare}
こういうときこそ原作信者の出番で、「雀犬、オマエはまっっったく分かってない!!!」と熱く解説して欲しいのだけど、もう「アニメ版YU-NOなんてなかったんだ」と解散してしまった感じなんだなぁ。
アニメとして残念だったのは演出かな。第4話、第13話あたりはかなり滑っていたんじゃないでしょうか。なので作画の点数は辛め。演出が弱いと、意表を突いた展開になった時に観ている方のテンションが付いていけなくなるものです。
第2部に入るまでは面白かったけど、終わってみればあまりオススメできない作品になってしまいました。まぁそんな感じです。