Progress さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:今観てる
放課後さいころ倶楽部 レビュー
今期の作品で最初のレビュー。
なんでこの作品を一番目にチョイスしたかというと、見ていてストレスが凄い作品だからです。ストレスといっても、つまらないわけではないんです。
と、いうのも主人公の武笠 美姫が非常にか弱く、彼女の弱さに向き合わなければならないからです。
分かりますかね・・・?1話冒頭で高屋敷 綾に連れられて、迷子になった時の彼女の不安、ボードゲームで本気を出す店長に怯える姿など、人間が抱えたくない感情を視聴者に見せてくるんです。胃がキリキリします。
だけど、そこで、何故彼女の弱さを見せるか、という視点で見て、彼女がその弱さを乗り越える事で成長していく様を見せる作品なんだなと思っています。
この作品は何というか、登場人物が作られた感じの動きが多いんですよね。動きというのは動作ではなく、行動の意味で。
例えば、ボードゲーム屋の店長。初めてボードゲームをプレイする美姫に対しても、手を抜かず勝ちに行こうとする。
ここで何故店長が本気でプレイしたのか、という事については、作品の本質ではないような気がするんですよね。本気でプレイしてきた店長に対して、美姫が怯える様子を見せたかった、そういう風に見えました。
つまり、物語や描写したいことの為に、登場人物の性格や信条を変化させているような印象を受けました。
1話の迷子の時に、綾が美姫を諭すように不安を取り除くあの様子は、
美姫が知らないところに行くのが怖いという事を描写したかったのかもしれないですが、何故綾がそのような精神的に高い位置にあることに対しての疑問が生まれてしまいます。
6話のひよっこデザイナー誕生!についても、大野 翠(メガネ)が二人に大声で思わず怒ってしまう。
これは6話のテーマのゲームを作るデザイナーの姿勢についてやりたかったから翠を怒らせた、ように見えました。
そのため、物語を起こす、または進める際に、登場人物達に強い感情の面や思想、精神面を見る事があり、物語で見せたいものよりもその違和感が全体の印象としては残るような気がします。
一方で、ゲーム中や物語中を通して描かれる登場人物達の性格、というのは、この作品の魅力であると思います。
それは、ボードゲームの要素の中に含まれる、相手の思考の読みあいという駆け引きにおいて、人物の性格が表れているからです。
私もボードゲームをやったことがありますが、盤面を見て計算をする人、盤面を見ているのかわからないプレイをする人、ゲームの情報をもって強い行動を実行する人、そういったプレイヤーの性質がなんとなくわかってくるものです。
対戦者目線では相手の性質としての認識ですが、本作のようにプレイヤー自身の内面の思考を描写することによって、作品としてはゲームによって性格を描写したいんだろうなと感じました。
また、ゲームの進行によって作品のテーマを解決していく構成にしているため、ゲームはおまけ、というわけではなく、作品中のテーマを解決する仕組みとして組み込まれているなと感じました。
さて、まとめですが、最初の印象は美姫しかり店長しかり、少し濃い人物によって構成されている作品だと感じました。今はちょうど終盤に差し掛かろうという所ですが、美姫の成長を感じ取ってほしいというメッセージを中盤くらいから感じ始め、作品全体のテーマがはっきりしてきたように感じます。
ボードゲームの面白さを伝えるために作られたというよりも、ボードゲームを通して人間を見る面白さを感じる作品ではないでしょうか。