「ロング・ウェイ・ノース(アニメ映画)」

総合得点
71.2
感想・評価
19
棚に入れた
78
ランキング
1401
★★★★★ 4.2 (19)
物語
4.2
作画
4.5
声優
3.8
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ネタバレ

USB_DAC さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ヨーロッパテイストが画面いっぱいに漂う魁作

物語:
舞台は19世紀。ロシア帝国の首都(当時)サンクトペテルブルクに
住む14歳の少女サーシャ。探検家として北極点を目指し、船諸共行
方不明となった大好きだった祖父の消息をひとり追う。やがて出会う
北方商船の乗組員等と共に彼の地を目指し、祖父の名誉を取り戻す物
語。普段は貴族的な生活を嗜み、家庭的なことはしたことが無かった
彼女。旅を通して逞しい女性へと変わっていく姿はとても感動的です。

作画:
一切輪郭を描かない独特のタッチはまるで絵画の様。このシンプルで
芸術的な作画が、北極圏の環境の厳しさをより一層感じさせる。そし
て精密な画作りなど無くても、見る者に驚きは与えられると言わんば
かりの表情力の豊かさ。自然な目の動きや瞬きの頻度。その巧みで奥
深い映像には終始圧倒されっぱなしでした。

声優:
日本語吹き替え版では無く、字幕版(原作)の方が個人的に好みです。
クリスタ・テレ(仏)のハスキーボイスは、強いサーシャのイメージ
にピッタリだと思います。

音楽:
挿入曲は『Hi Life』/『To All of You』の2曲。
Syd Matters(シド・マターズ 仏・5人組)が奏でる静かで薄暗い
ハイセンスなこの曲が、作品の後味にクールさをプラスする様。

キャラ:
日本のアニメに見慣れてしまうと、確かに物足りなさが残るかも知れ
ません。しかしシンプルにも関わらず特徴の曖昧さが無く、人物はと
ても個性的にデザインされている。そして取り繕い誇張されたキャラ
はいない。出会う人すべてが人間らしく正や負の感情をしっかりと持
ち合わせている。裏切りと感動の人間模様。このリアルさは本物です。



[感想]

2015年公開(仏)のフランス・デンマークの共同作品。

アヌシー国際アニメーション映画祭観客賞や第33回シカゴ国際児童
映画祭など、数多くの賞を受賞しながらも3年半の時を経て、漸く実
現した日本公開。この時を待ち望んだ方はとても多かったのではない
かと思います。かく言う自分もその一人。

トム・ムーア監督の下『ブレンダンとケルズの秘密』で助監督を務め
たレミ・シャイエさんが初めて指揮を行った作品。作風はまるで違い
ますが、絵画チックで芸術的なその作画は、成ほどなと思わせるもの
があります。それと現在YouTubeで公開されている監督から送られた
メッセージ。本当に優しく真面目そうで、人柄の良さを感じさせます。

シンプルな作画が生み出す色使いの素晴らしさ。そしてさり気なく耳
から入って来るリアルな効果音への驚き。流氷がきしみ出す音や崩落
する氷河の音、ブリザードの風の音などが更に緊張感をもたらす。派
手さは無く一見シンプルなストーリーは、彼女の旅への絶望と希望を
幾度となく映し出し、序盤から最後まで本当に手に汗握る状態でした。

極限まで無駄を省き、豊かな感情表現で見せる新たなアニメーション
の方向性。より多くの方にご覧頂き、日本の作品とはまた一味違う素
晴らしさを是非肌で感じてもらいたい。心からそう願っています。



以上、長文拝読頂きありがとうございました。

投稿 : 2019/11/19
閲覧 : 320
サンキュー:

22

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