蒼い✨️ さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 2.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
僕のための物語。
【概要】
アニメーション制作:スタジオヴォルン
2018年9月1日に公開された劇場アニメ。
原作は、「小説家になろう」に連載していたweb小説が双葉社に紹介されて書籍化された、
小説家・住野よるによる青春小説。
監督は、牛嶋新一郎。
【あらすじ】
物語は雨の日から始まる。クラスメイトである山内桜良 (やまうち さくら)の死。
「僕」は彼女の葬式にも通夜にも出なかった。
「僕」はひとりだけで、彼女との想い出を振り返っていた。
桜が咲いていた四月の日。他人に興味がなく関わらない生き方をしてきた「僕」が、
盲腸の手術の抜歯に訪れた病院に待合席で拾った、「共病文庫」という文庫本。
中身は、膵臓の病気で余命わずかなことを綴られた日記帳だった。
すぐに現れた持ち主が桜良で、彼女の見た目は健康そのものだったが、
冗談ではなくて膵臓が使えなくなって、あとちょっと死ぬという。
「僕」は病院関係者と彼女の身内以外で病気を知る唯一の人間になってしまった。
このことがきっかけで、彼女が「僕」に接してくるようになり、
彼女の秘密を知る「僕」は、彼女が余生でやりたいことに付き合うようになった。
桜良に振り回される日々で、「僕」は少しずつ何かが変わっていくのだった。
【感想】
「僕」と「彼女」の会話主体で朗読劇みたいなアニメ。
過剰なまでの台詞の多さと作者の理屈で物語が進んでいきます。
コミュ障唐変木男子に勝手気ままな美少女が何故かまとわりついて青春していくという、
妄想みたいな御都合主義観あふれる展開。多分、エモい物語として作られたのでしょうが、
「僕」の無表情ぶりと「彼女」の、わざとらしい元気さが気になってしまい、
見ていてカップルとしても特に心惹かれることの無いビミョー感。
ふたりの態度に意味があって、上辺の言葉や行動の裏に込められている、
別の意図が存在しているのかな?と思えば、種も仕掛けもなく実に見たまんまなお話。
見た目は新海誠を意識したような綺麗な作画なのですが、
視聴者に情報を伝えるのは台詞のみで、キャラの表情に動きが少なく、
視線や手の動き、足運びなど無意識から出る仕草にといったサインも特に無く、動く紙芝居状態。
TVシリーズなら及第点でも劇場版アニメとしては面白みのないアニメーション。
そこまで考えて作画芝居をさせている会社は京都アニメーションなどに限られている事実があるので、
そこは責めるところじゃないでしょうけどね。
平坦な日常話だけにならないように、ふたりのイチャつきに青春ポイントを散りばめているのですが、
『海がきこえる』に影響されたような話とか定番の花火シーンとか、既視感がある展開がちらほら。
ふたりの距離を縮めるためだけにストーカーキャラにされたクラスメイトがいて、
ドキドキイベント後には一度も登場しなかったり、他にも主要キャラの身内の扱いとか、
物語の都合でパーツで動いてるに過ぎない人間描写が散見して雑だなと思いました。
やかましいほどに「彼女」が饒舌で台詞が多すぎ、不治の病設定なのに、
好き勝手に飲み食い暴力なんでも出来る全く病人に見えない元気さに情緒や共感が薄く、
病気に対する不安が言葉と薬と注射器だけで、ほとんど可視化されていない。
そもそも悲劇感を出すためにとってつけたような病気で残り時間がない設定。
闘病生活の現実は重要でないかのように、もうすぐ死ぬとだけ。
それこそ、“呪いで死ぬ”“回避不可能な殺害予告”でも代用可能な設定で、
『そこ、泣けるでしょ?』みたいな、感動させるための無理矢理感が気になりました。
ただ単に『君の膵臓をたべたい』と決め台詞を効果的に使いたいためだけに、
キャラの生命を物語の小道具にする。
無感動でコミュ障な「僕」に人並みの感情を芽生えさせるために、
「彼女」の生命を養分にしなければなかった。
結末から逆算した物語の作り物っぽさが凄く不自然に見えたり、
芝居の間とか作画の感情表現よりも、感動させようと台詞を詰め込みすぎる、
小説家としての欲が映像から垣間見えてきたり、
感動ジャンルのアニメとしては、あまり出来が良くないなと思いました。
まあ、劇場でカップルに観られることに特化したアニメらしいですので、
満ちたることのない男女の別離の物語にカップルが自分らを重ね合わせたり、
感想を言い合ったりするのが正解なのかもしれませんけどね。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。