ウェスタンガール さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
プレゼント・デイ■ プレゼント・タイム■ hahahahaha!
灰羽連盟の安倍吉俊氏がキャラデザを手掛けたという以外、全く知らない作品であった。
オープニングから只ならぬ雰囲気が漂い、一気に引き込まれた。
曲がまた素晴らしい。
UKロックバンド“bôa”の“duvet”、来歴はウィキに譲るが、YouTubeで170万回の再生を誇るとは凄い。
エンディングは仲井戸“CHABO”麗市の“遠い叫び”、RCサクセション時代の曲をセルフカバーしたものだそうだ。それは、今は亡き忌野清志郎の魂を、黄泉の国から呼び戻そうとするが如くに響く・・・。失礼、この時はまだ現役でしたね。
(本編の感想)
東京ほど美しく、グロテスクな都市はない。江戸の記憶に、破壊と移植を繰り返してきた重層都市である。戦後の急速な復興の中で、電力、通信、情報のインフラは、むき出しの血管や神経の如く張り巡らされ、それはインスピレーションの源となる。
これは、まごうことなきSF、それもスペキュレイティブ・フィクションである。
{netabare}非常に哲学的で宗教的な問答まで飛び出し、見るものを煙に巻く。
それでもエンターテイメントとしてもすくれた作品だ。当時の流行から言えばエヴァンゲリオンは意識せざるを得ないし、それでなくとも、死海文書やグノーシス主義は、神秘主義的な作品にはマストアイテムだ。
フリーメイソンをモデルにしたナイツも良い味を出している。{/netabare}
サイバーパンク大好き世代の人間にはゾクゾクする演出がてんこ盛りだ。
もちろん、大友克洋のAKIRAへの意識も大きいだろうが、{netabare}レインと彼女の部屋の表現は秀逸である。{/netabare}
攻殻機動隊もこの範疇に入るが、類似するこれらの作品やその作家に少なからぬ影響を与えたであろう先駆者、{netabare}ジェームズ・ティプトリー・ジュニアのSF中編である“接続された女”のラストシーン{/netabare}を彷彿とさせる。
最後に、{netabare}シューマン共鳴、ロズウェル事件等説明過多な所はご愛嬌として、神の存在を問うという人類の究極の命題を、ワイヤードを通してドラマに盛り込んだことが、{/netabare}このアニメをして、量子コンピュータまで視界に入った現代に於いても色褪せずに観ることのできる理由の一つだ。
《以下、物語の核心と思われるため》
{netabare}地球の生命を一つの情報システムとして捉えるという考え方は比較的想像しやすいものではあるが、それと共鳴する特定の存在が預言者であり救世主であるとされ、ドラッグ・カルチャーと結びつく時、カルトが生まれ狂気が信仰を支配することになる。{/netabare}
この意味で、{netabare}“lain”が、フィリップ・K・ディックの“ヴァリス”{/netabare}の影響を受けていることは確実だろう。
(若干の考察を)
{netabare}キリストには二面性がある。神の子、すなわち天使が救世主として地上に降りてきた姿と、ゴルゴダの丘で磔にされた人間としての姿だ。“レイン”の二面性と比較するのも面白い。私は、“ブラック”レインとタロウくんや彼のガールフレンドとの掛け合いが好きだ。VRメガネを掛けた彼が「俺は天使とキスをしたんだ」と自慢するシーンに、祝福を受けた歓びを感じている信者を見るのである。
因みに、マインドコントロールを受け、身体を乗っ取られた英利政美が最後に差し出す手が“左”であることは示唆に富んでいて面白かった。{/netabare}
(おまけ)
YouTubeに誰かがアップした、放送当時、後に続く天気予報番組「ウェザーブレイク」のつなぎとして安倍吉俊氏が書いた落書きが、あまりにも良い味をだしている。一見の価値ありです。
lain ウェザーブレイク YouTubeで是非!